大統領選挙をめぐる動き(2014年5月19日)

ハサカ県のムハンマド・ザアール・アリー県知事はシャームFM(5月19日付)で、ハサカ県における大統領選挙投票(6月3日予定)が西クルディスタン移行期民政局のもとで実施されるだろう、と述べるとともに、クルド人および移行期民政局に対して、選挙への参加を通じて愛国心を表明することに謝意を示した。

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SANA, May 19, 2014

SANA, May 19, 2014

大統領選挙に立候補しているハッサーン・アブドゥッラー・ヌーリー元国務大臣は、SANA(5月19日付)のインタビューに応じ、自身の政策綱領などについて語った。

ヌーリー元国防大臣は、自身の支持基盤に関して、「私は無の状態から出馬したのではないが、私には政党もなければ、伝統的な党基盤も持ち合わせていない。私が持っているものは、シリア国民とその慈愛であり、それは私がダマスカス工業会議所書記長や国務大臣、人民議会議員、大学教授として公務を行うのに資した」と述べたうえで、自身の立候補が「シリア、民主主義にとっての勝利」と評した。

またヌーリー元国務大臣は「私は、政治ではなく、雇用機会、生活必需品の確保といった

ニーズに関心のあるサイレント・マジョリティを代表している…。体制の色には染まっていないが、反体制派にも与していない」と強調した。

ヌーリー元国務大臣はさらに「人民議会での投票は第2回投票(国民による直接投票)よりも重要ではないが、40人以上の議員の支持(推薦)を得られたことは、自分のビジョンが支持を得ていることを示している」と述べた。

一方、現下の紛争に関して、ヌーリー元国務大臣は、西側諸国や一部地域諸国・アラブ諸国の介入により、シリアはその存在にかかわるような陰謀にさらされたとしたうえで、「シリア人の抵抗力とシリア・アラブ軍の勇敢さにより、シリアへの陰謀を企てた国は挫折した」と述べ、国内情勢が好転しているとの見方を示した。

また、反体制武装集団への対応については、一定の限度のもとに寛容を示し、恩赦を行うことで、包括的公民和解を推し進めるべきだとの立場を表明するとともに、タクフィール主義者については「イスラーム教徒は無縁だ」と非難、シリア革命反体制勢力国民連立に代表される「五つ星ホテル反体制派」についても「外国の諜報機関とつながりがある」と糾弾し、対話を拒否すると述べた。

他方、内政に関して、ヌーリー元国務大臣は、政府の危機管理の不備が立候補するに至る理由の一つになったとしたうで、「問題は危機管理だけではなく、過去数年にわたり、行政には明らかな弛みと腐敗が見られたが、その解決の兆しや解決に向けた計画はなかった…。透明性や説明責任にかかる政府の計画は脆弱で、行政幹部の人選は明確な基準を欠いた個人主義に依存している」と批判、抜本的な行政改革が必要だと主張した。

経済政策について、ヌーリー元国務大臣は、シリアの経済体制を「色も味もなく、社会主義なのか自由主義なのか分からない」と批判したうえで、「自由主義経済」体制を導入し、「国民の社会的ニーズ」に対応する必要があると強調、主権や独立を維持したうえで「世界(経済)システム」のもとでの復興を推し進めるべきだと述べた。

ヌーリー元国防大臣によると、復興には60~80億ドルの資金、さらには雇用機会の創出、生活水準や医療教育分野の改善が必要だとしたうえで、在外居住者の投資を呼びかけ、国際機関などからの資金援助(債務)への依存には消極的な姿勢を示した。

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SANA, May 19, 2014

SANA, May 19, 2014

SANA(5月19日付)によると、ダマスカス県(ラウダ広場、ダマスカス大学医学部前)、アレッポ市(ハッサーン・カイヤーリー学校)、ハマー県サフサーフィーヤ村、ヒムス市郊外工業団地地区、ヒムス県タドムル市、タルトゥース市、スワイダー市、スワイダー県ニムラ村、イドリブ市で、大統領選挙実施や軍による「テロとの戦い」支持を訴える集会が開かれ、市民、人民諸組織、職業諸組合、バアス党地方幹部らが出席し、アサド大統領への支持を訴えた。

AFP, May 19, 2014、AP, May 19, 2014、ARA News, May 19, 2014、Champress, May 19, 2014、al-Hayat, May 20, 2014、Kull-na Shuraka’, May 19, 2014、al-Mada Press, May 19, 2014、Naharnet, May 19, 2014、NNA, May 19, 2014、Reuters, May 19, 2014、SANA, May 19, 2014、Sham FM, May 19, 2014、UPI, May 19, 2014などをもとに作成。

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