イドリブ県では、シリア人権監視団、イスタンブールを拠点とする反体制系サイトのシリア・テレビ(11月23日)、バラディー・ニュース(11月23日付)によると、シャーム解放機構が軍事・治安権限を握るバーブ・ハワー国境通行所で「シューラー総会」を開催し、同機構に自治を委託されているシリア救国内閣閣僚(アリー・カッダ首班ら)、経済関係の専門家、メディア関係者らとともに、アブー・ムハンマド・ジャウラーニー指導者が洋服姿で出席した。
会合では、シャーム解放機構が軍事・治安権限を握る地域の経済状況、とりわけトルコ・リラの下落に伴う物価高騰、とりわけパンと燃料の価格上昇への対応が協議された。
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シリア・テレビによると、ジャウラーニー指導者は会合で、2.5トルコ・リラで販売されているパン1袋の目方を増量すること、パンの価格を固定するため3億米ドルの補助金を緊急措置として供出することなどを約束した。
ジャウラーニー指導者の発言は以下の通り:
人々のニーズを満たす解放区における食糧安全保障が欠如していた…。だが、資源開発は加速しており、まもなく成果をあげるだろう。
経済成長は生産を必要とする。だから、我々は、国外からの輸入に代えて、国内市場をカバーするための国内生産を実現する段階に向かわねばならない。
経済成長は3年前に始められた戦略的計画の一環をなしている。第1ステップは大学教育機関、医師、エンジニアに関心を向けていた。
我々は原価の危機に対処するために段階的に資源を再分配した。これは、我々が解放区において行っているそのほかの優先課題に先んじて行われた。
解放区には豊かな農業資源があり、我々は何年にもわたって多くの農業プロジェクトに取り組み、現在のパン不足に代表されるような諸々の危機を克服しようとしてきた。
農業に適した土地を拡大するための研究や議論は終わり、そのための計画も策定された。農地が拡大されるたびに、十分な基本食糧物資を得てきた。
工業における経済開発は、農業を犠牲することなく、これを維持、開発しつつ行われている。なぜなら、農業は解放区の経済の背骨だからだ。だから、工業と農業のプロジェクトは補完的に並行して行われてきた。
我々はこの地域における根本的な問題を特定し、優先順位に沿って、教育、学校・大学不足、下水道や道路の問題などを解決するべく取り組みを始めた。我々は解放区のすべての問題を解決しようとしている。
道路の舗装は重要懸案だ。なぜなら、人口が急増し、交通事故が多発しているからだ。解放区では、短期間のうちに交通事故で40人がなくなっている。
住宅の確保や道路の舗装など、この地域での開発は進んでいる。我々の地域において、我々の計画やプロジェクトの成果が我々の祝福された革命にふさわしいかたちで目に見えるようになるには、弱化の時間が必要です。
我々は、この地域で開始された開発プロジェクトを通じて、採石場や道路などで2,500近くの雇用機会を提供した。それによって、人々は危機に対処するうえで助けとなる収入を確保している。
解放区内のパン製造所40カ所以上に対してパンの材料を支援することで、パン1袋の価格を2.5(トルコ・リラ)に設定したまま、目方を増すことになるだろう。我々はパンの材料の支援を続ける。たとえ、トルコ・リラが暴落しようと、300万米ドル以上が支援されるだろう。
解放区を襲うあらゆる危機に便乗しようとする者もいるだろう。だが、解放区の高官は賢明に自らの責任に向き合わねばならない。責任を逃れたり、背いたりしてはならない。一般大衆のように危機の前に立ちつくすのなら、我々は過ちを犯すことになる。
解放区にいる我々にアッラーが与えてくださった祝福に感謝しなければならない。解放区にいる我々には、真摯に、そして正しく建てられた建造物がある。アッラーのお許しのもと、この犯罪者体制を打倒し、シリア全土に善を広めることで、我々が希求する段階へと到達するだろう。
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なお、シャーム解放機構が軍事・治安権限を握るイドリブ県中北部、ラタキア県北東部、アレッポ県西部、ハマー県北西部のいわゆる「解放区」では、トルコ・リラの下落を受けて、シリア救国内閣は2.5トルコ・リラで販売されているパン1袋の目方を650グラムから段階的に450グラムにまで引き下げる一方、シャーム解放機構が軍事・治安権限を掌握する地域で燃料の販売を統括するワタド石油社も家庭用プロパンガス・ボンベの価格を1本137トルコ・リラに、ガソリンを1リットル9.83トルコ・リラに、灯油を1リットル9.14トルコ・リラに値上げするなどの措置をとっていた。
これを受け、10月15日には、イドリブ市で燃料、パン、野菜、水、電気などの価格引き下げを求める抗議デモが発生していた。
AFP, November 23, 2021、ANHA, November 23, 2021、Baladi-News, November 23, 2021、al-Durar al-Shamiya, November 23, 2021、Reuters, November 23, 2021、SANA, November 23, 2021、SOHR, November 23, 2021、Syria TV, November 23, 2021などをもとに作成。
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