ハサカ県では、シリア政府と北・東シリア自治局が共同統治するハサカ市内のグワイラーン地区(北・東シリア自治局支配下)にあるグワイラーン刑務所(工業高校)でのダーイシュ(イスラーム国)メンバーの襲撃・脱獄事件に伴う戦闘と混乱は25日も続いた。
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人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の広報センターは声明を出し、24日晩にグワイラーン刑務所で軍事治安作戦を実施し、ダーイシュのメンバーによって捕らえられていた刑務所職員9人の解放に成功するとともに、ズフール地区と東グワイラーン地区でダーイシュのメンバー17人を新たに殺害したと発表した。
また、別の声明では、25日に23人を新たに解放したと発表した。
シリア民主軍広報センターはさらに別の声明で、25日朝にグワイラーン刑務所に立て籠もっていたダーイシュ・メンバー250人が投降、これまでに投降したダーイシュ・メンバーの数が500人余りとなったと発表した。
また別の声明で、ダーイシュ・メンバーが占拠していたグワイラーン刑務所内の収容棟8棟を制圧したと発表した。
シリア人権監視団によると、有志連合所属の装甲車複数輌が、グワイラーン刑務所内での作戦に参加するために同地に派遣されていたという。
一方、ANHA(1月25日付)によると、グワイラーン地区の外塀一帯での戦闘は小康状態が続いた。
だが、SANA(1月25日付)によると、人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が抵抗を続けるイスラーム国のメンバーらをグワイラーン刑務所で包囲したと発表しているにもかかわらず、シリア民主軍、内務治安部隊(アサーイシュ)とダーイシュとの戦闘は刑務所一帯で行われ、有志連合を主導する米軍戦闘機も同地に対する爆撃を実施した。
米軍の爆撃に、ユーフラテス大学経済学部技術監督者工学技術研究所が21日に破壊されたが、25日までの爆撃で経済学部関連施設、土木学部講堂、ユーフラテス大学ハサカ分校本舎、ガレージなども破壊された。
また、シリア民主軍は、グワイラーン刑務所(東グワイラーン地区、西グワイラーン地区)、ズフール地区の住宅地で強制捜査を行い、住民多数を拘束、連行した。
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シリア人権監視団によると、1月20日以降の戦闘での死者は172人。
うちダーイシュ・メンバーは119人、シリア民主軍、アサーイシュ、刑務所守衛は46人、住民は7人。
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ANHA(1月25日付)は、負傷したダーイシュ・メンバーを収容しているシリア民主軍とアサーイシュの拠点の取材に成功したと伝え、治療を受けるメンバー13人の写真と映像を公開した。
AFP, January 25, 2022、ANHA, January 25, 2022、al-Durar al-Shamiya, January 25, 2022、Reuters, January 25, 2022、SANA, January 25, 2022、SOHR, January 25, 2022などをもとに作成。
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