軍がヒムス県サダド市に侵入していたサラフィー主義武装集団の掃討を完了するなか、ブラーヒーミー共同特別代表は化学兵器廃棄に合意したアサド大統領が現在「パートナー」となったと主張(2013年10月28日)

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反体制勢力の動き

ダマスカス郊外県で活動する武装集団29組織が「ハルマゲドン(マルハマ・クブラー)軍」を結成したと発表した。

「ハルマゲドン軍」の司令官はムアーウィヤ・ブン・アビースフヤーン旅団のアブー・ファーティフ司令官が務める。

「ハルマゲドン軍」に参加した主な武装集団は、ムアーウィヤ・ブン・アビー・スフヤーン旅団、ダマスカスの険旅団、ファイハー旅団、第1治安旅団、グータの獅子旅団、暁旅団、リジャールッラー旅団、治安法務旅団、シリア・グータ革命家コマンドなど。

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クッルナー・シュラカー(10月28日付)によると、ダマスカス郊外県で活動する複数の武装集団が、「ダマスカスの兵」を結成した。

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クッルナー・シュラカー(10月28日付)によると、ダマスカス郊外県東グータ地方で活動する複数の地元評議会が会合を開き、東グータ地方を統括する執行機関の設置について協議し、各評議会代表からなる事務局と執行会議を発足することで合意した。

また会合では、ニザール・サマーディー氏を執行会議議長に、ムハンマド・ビカーイー氏を副議長に、アブドゥッラー・ダルウィーシュ氏を書記に、ムハンマド・ムダッリル氏を総合関係局長に、アリー・ジュムーア氏を財務局長に選出した。

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ジャズィーラ(10月28日付)は、イドリブ県の対トルコ国境に位置するアティマ村で、シリア女性連盟のシリア支部会合が開催され、シリア国内での活動について協議したと報じた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のヤースィル・ファルハーン氏は、民主統一党(人民防衛隊)によるハサカ県ヤアルビーヤ国境通行所の制圧に関して「アラブ人数千人が避難するなか、クルド人はすべてのシリア人のものであるべき同地の石油を取引する明確なルートを確保した」と非難した。

『ハヤート』(10月29日付)が伝えた。

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民主統一党人民防衛隊は声明を出し、ハサカ県ヤアルビーヤ町でのサラフィー主義者との戦闘で、部隊員3人が戦死したと発表した。

国内の暴力

ヒムス県では、SANA(10月28日付)によると、軍がサダド市に侵入していたサラフィー主義武装集団の掃討を完了し、同地の治安を回復した。

シャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)、殉教者大隊、バーバー・アムル・コマンド大隊などからなるサラフィー主義武装集団は、サダド市を経由し、マヒーン町に進軍、同市内の武器庫の制圧をめざしていたが、この試みは失敗に終わった。

しかし、シリア人権監視団によると、マヒーン町での軍とサラフィー主義武装集団の戦闘は続いているという。

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ダマスカス郊外県では、SANA(10月28日付)によると、バイルード市郊外、ナバク市北部、アルバイン市、ザマルカー回廊、ムライハ市郊外、TAMICO周辺、アーリヤ農場、ドゥーマー市、フタイタト・トゥルクマーン市郊外、バハーリーヤ市郊外で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアドラー市では、反体制武装集団が撃った迫撃砲弾複数発が着弾し、子供2人が死亡、市民15人が負傷した。

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ダマスカス県では、SANA(10月28日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(10月28日付)によると、クワイリス村、アルバイド村、ラスム・アッブード村、アレッポ中央刑務所周辺、カースティールー街道で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市スライマーン・ハラビー地区、ジュダイダ地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団を撃退し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

一方、ザマーン・ワスル(10月29日付)は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がアレッポ市サーフール地区の包囲を開始、その制圧を狙っていると報じた。

同ネットによると、これに先立ち、サーフール地区を拠点としている「シリア青年戦線連合」司令官で、シャーム外国人大隊の指導者の一人でもあるハサン・ジャズラ氏が、「ダーイシュによる包囲と同じ理由で」、シャリーア委員会によって逮捕された。

シャーム外国人大隊の下部組織と目される「シリア青年戦線連合」は、サーフール地区、スライマーン・ハラビー地区、マイダーン地区などで軍と対峙してきた武装集団。

ダーイシュは27日から、サーフール地区周辺に検問所を設置し、住民の往来などを規制しているという。

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イドリブ県では、SANA(10月28日付)によると、アブー・ズフール航空基地周辺、マジャース村、ウンム・ジャリーン村、カルア・ガザール村、タッル・ダマーン村、タッル・サラムー村周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(10月28日付)によると、スカイラビーヤ市に潜入しようとした反体制武装集団を軍が撃退、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハサカ県では、SANA(10月28日付)によると、シャッダーディー市郊外で軍が反体制武装集団に対する特殊作戦を行い、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またカーミシュリー市では、反体制武装集団が爆弾を仕掛けた自動車を爆破、市民3人が負傷した。

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ダイル・ザウル県では、シャーム・プレス(10月28日付)によると、シュマイティーヤ町で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とシャーム自由人運動が、ムハンナー・ファイサル・ファイヤード・ナースィル人民議会議員(ブーサラーヤー部族長)とブーサラーヤー部族の14人を誘拐した。

これに関して、シリア人権監視団は29日、シュマイティーヤ町での拉致者数は72人に達したと発表した。

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『ハヤート』(10月29日付)は、トルコの医療筋の話として、トルコ南東部でシリア領からの迫撃により負傷した男性1人とその娘1人がディアルバクル市で死亡した、と報じた。

死亡した2人はシリアのハサカ県ラアス・アイン市に面する国境の町チェイランプナル市で負傷、ディアルバクル市の病院に搬送されていた。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は、大預言者病院設立25周年を記念してテレビ演説を行った。

演説のなかで、ナスルッラー書記長はアレッポ県アアザーズ市で拉致され、10月半ばに開放されたレバノン人巡礼者の問題についても言及、「(レバノン内戦時にシリアやイスラエルで失踪した)行方不明者の問題解決を支援する意思があるとの言葉をシリアから受けている。我々はこうした努力が幸福な結末を迎えると望んでいる」と述べた。

そのうえで「シリアでの最近の情勢は、軍事的解決ではなく、政治的解決のみがあり得るということを我々に理解させている…。すべての関係当事者は、前提条件なしで対話を行うべきだ…。シリアにおいて政治的解決が妨げられれば、さらなる死者と破壊が生じ、レバノンなどすべての近隣諸国に悪影響がもたらされるだろう」と強調した。

諸外国の動き

アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表は、フランスの週刊誌『ジュン・アフリーク』(10月28日付)のインタビューで、「彼(アサド大統領)の周囲にいる多くの人々が、(2014年の大統領選挙への)彼の出馬が必然的だと考えている。彼もこれが既得権だと考えており…、現在の任期を全うしたいと考えていることは確実だ」と述べた。

al-Hayat, October 29, 2013

al-Hayat, October 29, 2013

また「歴史は我々に、こうした危機が発生すれば、後戻りはできないということを教えてくれている。アサド大統領はそれゆえ、過去のシリア、すなわち父親が作ったシリアから、彼自身のシリア、すなわち新たなシリア共和国への移行期において有益なかたちで貢献し得る」と強調した。

ブラーヒーミー共同特別代表はさらに、化学兵器廃棄に合意する以前のアサド大統領が「パーリア」だったが、現在は「パートナー」だと主張、「バッシャール氏は決して退任しなかった…。人々が何を言おうと」と付言した。

ジュネーブ2会議については「プロセスの始まりに過ぎない。我々は反体制勢力が信頼できる代表使節団を結成することで何とか合意してほしいと思っている」と述べた。

そのうえで「シリアにおける真の脅威は国の分断ではない。真の脅威はソマリア化だ」と述べた。

AFP(10月28日付)が伝えた。

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アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表がイランからレバノンのベイルート国際空港を経て、陸路でシリアのダマスカスに到着、滞在先となるシェラトン・ホテルでファイサル・ミクダード外務在外居住副大臣と会談した。

シリア高官がAFP(10月28日付)に明らかにしたところによると、ブラーヒーミー共同特別代表は2日間ダマスカスに滞在する予定。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、イスラーム軍など19の武装集団がジュネーブ2会議を拒否する声明を出したことに関して「一部の過激なテロ集団が…不名誉にも脅迫を行ったが、こうしたことはこれが初めてではない…。こうした脅迫は米露の提案がしたジュネーブでの高いに向かおうとする人々に向けられている」と非難した。

またラブロフ外務大臣は「彼らは我が国の外交官らが標的になるだろうとさえ脅迫している…。こうしたことは不名誉なことであり、受け入れられず、その責任は反体制集団に資金と武器を供与する者たちにある」と付言した。

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化学兵器禁止機関はインターネットを通じて声明を出し「2013年10月27日、調査団は、シリア政府が申告した化学兵器関連施設23カ所のうち21カ所の査察を終えた」と発表した。

また「残る2カ所は安全上の懸念があったため、訪問はなされなかった」と付言した。

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『ハヤート』(10月29日付)によると、イラクの治安筋は、ハサカ県ヤアルビーヤ国境通行所をイラク軍が越境攻撃したとのシリア革命反体制勢力国民連立の主張に反論、「我々が目下必要としているのは戦闘をシリア国内にとどめることであり、いかなる場合にも介入はしない」と否定した。

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国連の潘基文事務総長は、シリアの化学兵器廃棄に向けた化学兵器禁止機関(OPCW)と国連の合同派遣団の活動報告書を安保理に提出した。

同報告書のなかで、アフメト・ウズムジュOPCW事務局長は、シリアが申告した関連施設は23カ所、41施設で、化学兵器が計1,300トンだと報告した。

41施設の内訳は、化学兵器製造施設が18、貯蔵施設が12、移動式注入施設が8、それ以外の関連施設が3だった。

化学兵器は、サリンなど毒性が強い第1分類が約1,000トンで、そのほとんどが生成前の前駆物質だった。また産業用にも用いられる第2分類の有毒物質が約290トンだった。

化学物質が未注入の兵器1,230点も申告された。

なお23カ所41施設のうち、2カ所4施設で査察が終了していないと報告された。

潘事務総長は安保理で、23カ所のうち2カ所が「安全上の理由で近づけない」と指摘、査察や施設破壊検証の「例外になる可能性」があると説明した。

AFP, October 28, 2013、Aljazeera.net, October 28, 2013、Champress, October 28, 2013、al-Hayat, October 29, 2013, October 30, 2013、Kull-na Shuraka’, October 28, 2013、Naharnet,
October 28, 2013、Reuters, October 28, 2013、Rihab News, October 28, 2013、SANA,
October 28, 2013、UPI, October 28, 2013、Zaman al-Wasl, October 29, 2013などをもとに作成。

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