国連安保理でシリア情勢への対応を協議するための会合が開かれ、ロシアとシリアは越境(クロスボーダー)での人道支援の廃止を訴える(2022年5月20日)

国連安保理で、シリア情勢への対応を協議するための会合が開かれた。

会合では、国連人道問題調整事務所(OCHA)の代表を務めるマーティン・グイフィス人道問題担当国連事務次長が、5月上旬に開催された「シリア及び地域の将来の支援に関する第6回ブリュッセル会合」で67億米ドルの支援が約束されたことに関して、2022年にシリアへの人道支援において必要とされる資金の半分にも満たないことを報告し、世界食糧計画(WFP)が支援の削減を強いられかねないと警鐘を鳴らした。

続いて、シャーム解放機構が軍事・治安権限を握るイドリブ県中部一帯で活動を続ける米国のNGOシリア米医療協会(SAMS)のファリーダ・ムスリム氏が報告を行い、越境(クロス・ボーダー)での人道支援の継続の必要を訴えた。

これに対して、ロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連第1常駐副代表は、昨年半ば以降4度にわたって行われた政府支配地から反体制派支配地への境界経由(クロス・ライン)が「成功などとはほとんど言えない」と指摘、早期復旧や復興にかかるプロジェクトが支援国の政治的思惑によって左右されていると問題点を指摘した。

また、あらゆる代償も顧みずに越境人道支援を維持しようとする試みについて、「停学処分を受けている怠惰な生徒の親に似ている…。こうした甘やかされた子供に何も良いことはない」と欧米諸国を批判した。

そのうえで、国連がシリアに対する欧米諸国の一方的な制裁を無視し続けていると指摘した。

シリアのバースィム・サッバーグ国連代表は、越境人道支援がシリアの主権を侵害しているとしたうえで、境界経由での人道支援を強化したいと表明するとともに、4月30日の恩赦などを通じて人権状況の改善、難民・国内避難民(IDPs)の帰還、国民和解を推し進めていると強調した。

その一方で、「一部の国」がこうした取り組みを反故にしようとしていると批判した。

米国のリンダ・トマス=グリーンフィールド国連代表大使は、越境人道支援の成果を強調、安保理がその仕組みを継続するだけでなく、反体制派支配地における人道上のニーズを踏まえて、越境人道支援を行うことができる通行所を増やすべきだと主張した。

このほか、ブラジルの代表は、越境人道支援と境界経由での人道支援の双方を継続する必要があると述べた。

また、中国の代表は、シリアの主権と領土保全を尊重し、人道支援を政治利用すべきでないと発言した。

イランの代表は、越境人道支援に代えて境界経由での人道支援を行うことを支持し、そのためにシリア政府や国連に全面協力すると表明した。

一方、トルコは、越境人道支援の維持を訴えた。

AFP, May 20, 2022、ANHA, May 20, 2022、al-Durar al-Shamiya, May 20, 2022、Reuters, May 20, 2022、SANA, May 20, 2022、SOHR, May 20, 2022などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

ロシアのボクダノフ外務副大臣はイスラエル軍戦闘機に対してS-300が発射されたとの報道を否定(2022年5月20日)

ロシアのミハイル・ボクダノフ外務副大臣は、5月13日のイスラエル軍戦闘機によるハマー県ミスヤーフ市一帯への爆撃に際して、S-300防空システムが使用されたとのイスラエル・メディアの報道に関して「正しくない」と述べ否定した。

ボグダノフはまた、「ロシアとイスラエルの軍関係者はシリア情勢に関して連絡を続けている」と付言した。

マヤーディーン(5月20日付)などが伝えた。

AFP, May 20, 2022、ANHA, May 20, 2022、al-Durar al-Shamiya, May 20, 2022、Qanat al-Mayadin, May 20, 2022、Reuters, May 20, 2022、SANA, May 20, 2022、SOHR, May 20, 2022などをもとに作成。

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フール・キャンプでアサーイシュIDPsの女性の遺体を発見(2022年5月20日)

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、北・東シリア自治局の管理下にあるフール・キャンプで、内務治安部隊(アサーイシュ)が何者かによって銃で撃たれて死亡した国内避難民(IDPs)の女性の遺体を発見した。

AFP, May 20, 2022、ANHA, May 20, 2022、al-Durar al-Shamiya, May 20, 2022、Reuters, May 20, 2022、SANA, May 20, 2022、SOHR, May 20, 2022などをもとに作成。

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イドリブ県カファルヤー町でウズベキスタン人からなるジハード・ワ・タウヒード大隊の不動産管理担当者を含む2人が正体不明の武装集団の襲撃を受けて死亡(2022年5月20日)

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構が軍事治安権限を握るカファルヤー町でウズベキスタン人からなるジハード・ワ・タウヒード大隊の不動産管理担当者を含む2人が正体不明の武装集団の襲撃を受けて死亡した。

不動産管理担当者とともに殺害されたのは、食料品店の店主。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、クルド山地方のカッバーナ村近郊で「決戦」作戦司令室に所属する武装集団の特攻戦闘員(インギマースィー)がシリア軍を攻撃、シリア軍兵士2人と特攻戦闘員1人が死亡した。

「決戦」作戦司令室は、シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構とトルコの庇護を受ける国民解放戦線(シリア国民軍)などからなる武装連合体。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カナーキル村で住民が逮捕者の釈放を求めて抗議デモを行った。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、タファス市で正体不明の武装集団が数年前にシリア軍を離反したとされる男性1人を銃で撃ち殺害した。

AFP, May 20, 2022、ANHA, May 20, 2022、al-Durar al-Shamiya, May 20, 2022、Reuters, May 20, 2022、SANA, May 20, 2022、SOHR, May 20, 2022などをもとに作成。

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トルコ軍とシリア国民軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるアレッポ県北部、ハサカ県北部を砲撃(2022年5月20日)

アレッポ県では、ANHA(5月20日付)によると、トルコ軍とシリア国民軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるタッル・リフアト市、同市近郊のスムーカ村、タッル・マディーク村、シャフバー・ダム、マドユーナ村を砲撃し、民家複数棟に被害が出た。

トルコ軍とシリア国民軍はまた、マンビジュ市北のフーシャリーヤ村を砲撃し、シリア国民軍に所属するスィルヤーニー軍事評議会の兵士1人が負傷した。

これに対して、シリア軍はアイン・アラブ(コバネ)市近郊のシュユーフ・ファウカーニー町、シュユーフ・タフターニー町上空でトルコ軍の小型無人航空機(ドローン)を撃墜した。

一方、シリア人権監視団によると、シリア政府の支配下にあるターディフ市から、同市北部のトルコ占領地に避難した住民が、シリア政府支配地とトルコ占領地の間に堀と土塁を建設しようとしているトルコの計画に反対して、抗議デモを行った。

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ハサカ県では、ANHA(5月20日付)によると、トルコ軍がシリア政府と北・東シリア自治局の共同統治下にあるダルバースィーヤ市近郊のジャトラ村で農作業に従事していた住民らに向けて発砲した。

トルコ軍はまた、シリア国民軍とともにタッル・タムル町近郊のダルダーラ村を砲撃した。

AFP, May 20, 2022、ANHA, May 20, 2022、al-Durar al-Shamiya, May 20, 2022、Reuters, May 20, 2022、SANA, May 20, 2022、SOHR, May 20, 2022などをもとに作成。

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外務在外居住者省はシリア難民100万人の「自発的」帰還をめざすトルコのプロジェクトを「悪魔の幻想」と批判(2022年5月20日)

外務在外居住者省は声明を出し、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がシリア北部の占領地(トルコが言うところの「安全地帯」)にシリア難民100万人を「自発的」に帰還させるプロジェクトの開始を宣言を受けたことに関して、シリアの領土と国民に反するものだと拒否、諸外国に対して「悪魔の幻想を実現しようとしているこの体制への支援をただちに止め、その犯罪プロジェクトへの資金供与を行わない」よう求めた。

SANA(5月20日付)が伝えた。

https://www.facebook.com/Mofaexsy/posts/3269905376629900

AFP, May 20, 2022、ANHA, May 20, 2022、al-Durar al-Shamiya, May 20, 2022、Reuters, May 20, 2022、SANA, May 20, 2022、SOHR, May 20, 2022などをもとに作成。

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イスラエル軍が占領下のゴラン高原からダマスカス県の南方に向けて地対地ミサイル多数を発射、シリア軍防空部隊の兵士3人死亡(2022年5月20日)

シリア軍は、イスラエル軍が午後11時頃、占領下のゴラン高原からダマスカス県の南方に向けて地対地ミサイル多数を発射、シリア軍防空部隊が迎撃し、そのほとんどを撃破したが、3名が死亡、若干の物的被害が出たと発表した。

SANA(5月20日付)が伝えた。

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シリア人権監視団によると、ミサイル攻撃はダマスカス郊外県のキスワ市市近郊のマーニア山山一帯、ジュムラーヤー村一帯、ダマスカス国際空港一帯、サイイダ・ザイナブ町一帯の「イランの民兵」の拠点や倉庫に対するもので、シリア軍防空部隊の士官3人が死亡、4人が負傷した。

また、このミサイル攻撃と前後して、シリア軍防空部隊が地中海沖上空でミサイルを迎撃、地中海沿岸地域、ハマー県ミスヤーフ市一帯で複数の爆発音が聞こえた。

なお、シリア人権監視団はその後、死亡した3人のなかには、ダマスカス国際空港の貨物局労働者部門の責任者も含まれていたと発表した(シリア人権監視団によると、死者はその後4人となった)。

AFP, May 20, 2022、ANHA, May 20, 2022、al-Durar al-Shamiya, May 20, 2022、Reuters, May 20, 2022、SANA, May 20, 2022、SOHR, May 20, 2022、May 21, 2022、May 23, 2022などをもとに作成。

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新型コロナウイルスの新規感染者はシリア政府支配地域で2人(2022年5月20日)

保健省は政府支配地域で新たに2人の新型コロナウイルス感染者が確認される一方、感染者11人が完治したと発表した。

これにより、5月20日現在のシリア国内での感染者数は計55,877人、うち死亡したのは3,150人、回復したのは52,581人となった。

https://www.facebook.com/MinistryOfHealthSYR/posts/310879644553352

AFP, May 20, 2022、ACU, May 20, 2022、ANHA, May 20, 2022、al-Durar al-Shamiya, May 20, 2022、Reuters, May 20, 2022、SANA, May 20, 2022、SOHR, May 20, 2022などをもとに作成。

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