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国内の暴力
『ワシントン・ポスト』(5月12日付)は、アサド政権が、イラン、ロシア、ヒズブッラーの支援を通じた「新戦略」を通じて、反体制武装集団との闘争における優勢を回復した、と報じた。
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ダマスカス県では、クッルナー・シュラカー(5月12日付)およびSANA(5月12日付)などによると、マッザ区(ヴィーラート・マッザ区)に迫撃砲弾4発が着弾し、女児1人を含む4人が負傷した。
一方、SANA(5月13日付)によると、ジャウバル区、バルザ区、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダルーシャー村、ハーン・シャイフ・キャンプ、バイト・サフム市などに対して、軍が砲撃を加え、反体制武装集団と交戦した。
一方、SANA(5月13日付)によると、ジャルバー市、バハーリーヤ市、ハラスター市、シャイフーニーヤ村、アドラー市、ナブク市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線、カマル・ブン・ハーシム連隊メンバーら多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ナーフタ町、アルマー町などに軍が砲撃を加えた。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、アリーハー市、カルミード軍事基地周辺、シャビーバ軍事基地周辺などに軍が砲撃・空爆を加えた。
一方、SANA(5月13日付)によると、サルミーン市、アルバイーン山、ナイラブ村南部などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市ハーリディーヤ地区などで、軍と反体制武装集団の交戦が続いた。
一方、SANA(5月13日付)によると、ムスリミーヤ村、アレッポ市スライマーン・ハラビー地区、カルム・ジャバル地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市周辺が軍の砲撃を受けた。
一方、SANA(5月13日付)によると、ラッフーム村、ヒムス市バーブ・フード地区などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(5月12日付)によると、ハサカ県内水利局近くで複数回の爆発があり、市民や民主統一党人民防衛隊隊員複数が死傷した。
またハヴァル通信(5月12日付)は、ハサカ市ムフティー地区の民主統一党人民防衛隊の検問所を「シャッビーハ」が襲撃したが、人民防衛隊の反撃を受けて、5人が死亡、軍の戦車が展開するアズィーズィーヤ地区に撤退した、と報じた。
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ハマー県では、SANA(5月13日付)によると、ムハルダ市に反体制武装集団(シャームの民のヌスラ戦線)が撃った迫撃砲弾2発が着弾し、複数の市民が負傷した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(5月13日付)によると、ダイル・ザウル市工業地区、ハウィーカ地区などで、軍が反体制武装集団と交戦し、外国人戦闘員ら複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ヤルムーク殉教者旅団は、先週シリア領内で身柄拘束したUNDOF隊員4人(フィリピン軍兵士)を釈放した。
シリア政府の動き
ウムラーン・ズウビー情報大臣は、レイハンル市での爆弾テロに関して、「シリアは、トルコと100年にわたって問題を抱えてきたが、政府、軍、諸機関がこうした行為を行ったことなどない。我々はそうしたことができないからではなく、我々の教育、道徳、振る舞い、価値観がそれを許さないからだ」と関与を否定したうえで、「誰にもでたらめな嫌疑をかける資格などない」と述べ、シリア政府に嫌疑をかけるレジェップ・タイイップ・エルドアン内閣の閣僚を非難した。
そのうえで「エルドアン首相がオバマ米大統領と会談する数日前」に事件が発生した点に着目、「彼(エルドアン首相)は、NATO加盟国である自分の国、さらには自分の存在がシリアからの攻撃に曝されていると米国に主張したいのだろうか?」と述べた。
反体制勢力の動き
ロンドンを拠点とする反体制組織のシリア人権監視団は、2011年3月以降のシリア国内での犠牲者数を発表した。
それによると、死者数は70,257人。うち民間人の死者数は34,000人以上、18歳以下の死者数は4,788人、女性の死者数は3,048人、反体制戦闘員の死者数は16,687人、身元不明者は2,368人だという。
なおこの死者数には、「シャッビーハ」、親政権の諜報員の死者数約12,000人は含まれていないという。
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国内で反体制活動を行う民主的変革諸勢力国民調整委員会はダマスカス県で執行部会合を開き、米露による「ジュネーブ2」構想への対応について協議した。
会合後、執行部は声明を出し、「ジュネーブ2会議に関する露米のコンセンサスを歓迎し、ほかの反体制組織とともに、同会議への参加要請に応える」との意思を示した。
しかし「複数の国、政権内の過激派、一部の反体制勢力が、それ(会議)を頓挫させようとしているので、その成功を楽観視することには慎重」な姿勢をとると付言した。
これに関連して、民主的変革諸勢力国民調整委員会のハイサム・マンナーア在外局長は『ハヤート』(5月13日付)に対して、委員会が現在、会議で提示するための移行期政府樹立に向けた「行程表」を作成中だと述べた。
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『ハヤート』(5月13日付)は、シリア革命反体制勢力国民連立の複数の消息筋の話として、連立が5月23日にイスタンブールで米露が準備を進める「ジュネーブ2」大会への参加の是非を決するための会合を開くと報じた。
これに関連して、シリア革命反体制勢力国民連立のリヤード・サイフ副議長らが共同声明を出し、2011年7月のカイロでのアラブ連盟主催によるシリア反体制勢力大会で採択された「国民誓約文書」と「暫定期間概要に関する共同政治ビジョン」の「内容に沿ったかたちで、政治的解決の機会に対して最大限の真剣さをもって対応」するよう呼びかけ、アサド政権の退陣が前提だとしていた米露の「ジュネーブ2」構想に対する消極姿勢を軟化させる意思を示した。
また「自由シリア軍および武装レジスタンス」に向けて、「政治指導部に従属する合法的な軍事指導部のもとでの統合」を呼びかけるとともに、「シリア革命の目的に矛盾した…外来の過激思想を拒否する」ことを明言した。
共同声明には、サイフ副議長のほか、タウフィーク・ドゥンヤー、ワリード・ブンニー、リーマー・フライハーン、ハーリス…ナッバハーン、ムワッファク・ニールビーヤ(市民権潮流代表)らが署名している。
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シリア革命反体制勢力国民連立議長を辞任したアフマド・ムアーッズ・ハティーブは、ジャズィーラ(5月12日付)のインタビューで、ジョルジュ・サブラー暫定議長、リヤード・サイフ副議長、スハイル・アタ-スィー副議長に対して「辞表を提出し、(反体制勢力の指導者の)選出に参加すべきでない」と非難した。
ハティーブは議長在任中に「シリア人に資さない決定を行う人間に成り下がったと感じ、連立を去ることを決心した…。シリアに資さない決定をさせようとする者がいた」と述べた。
http://www.youtube.com/watch?v=zJ2ysFsC9Zg&feature=player_embedded
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カイロで反体制活動家が行っていた「民主的局」会合(ミシェル・キールーが主導)が閉会した。
『ハヤート』(5月16日付)によると、11、12日のカイロでの「民主的局」会合(シリア民主主義者連合結成大会)に参加していたシリア・クルド進歩民主党のアブドゥルハミード・ダルウィーシュ書記長が、会合で「クルド人民をシリアの主要な民族として憲法で承認する」ことを求める声明を回付した。
ダルウィーシュ書記長はまた、国連に対して平和維持軍を派遣するための決議の採択を求めるとともに、すべての社会勢力が参加した「連邦」内閣を樹立し、外国の監視団のもとに国会選挙を実施することを提言した。
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シリア・クルド国民評議会は5月10日から2日にわたって開催された大会(開催場所不明)を、正副議長、渉外委員会メンバーなどを選出して閉幕した。
ユースフ・ファイサル議長(シリア・クルド進歩民主党)の後任には、ターヒル・サフーク(国民民主党書記長)が選出された。
また報道官にはナスルッディーン・イブラーヒーム(シリア・クルド民主党アル・パールティーイブラーヒーム派書記長)が、副議長にはニウマト・ダーウド(シリア・クルド平等党書記長)が、書記にはアースィム・ハサンが選出された。
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クッルナー・シュラカー(5月12日付)は、ダマスカス郊外県東グータ地方で武装闘争を続ける武装集団が二つの師団に統合されたと報じた。
二つの師団に統合された武装集団は以下の通り:
イスラーム旅団
バッラー旅団
シャーム自由人運動旅団
コマンド部隊
ファールーク・ウマル旅団
アッラーの獅子
グータ革命家
ドゥーマー殉教者旅団
アブー・ムーサ-・アシュアリー・ワ・ラドワーン旅団
スユーフ・ハック旅団
首都の縦シャーム征服旅団
グータの獅子旅団
フィルカーン旅団
イマーム・フサイン旅団
タウヒード・イスラーム旅団
第1歩兵師団
スィッディーク大隊
特殊任務中隊
特殊部隊大隊
サイフ・ウマウィー大隊
レバノンの動き
NNA(5月12日付)によると、ベカーア県ヘルメル郡のカスル村郊外に、シリアから発射されたロケット弾2発が着弾し、2人が負傷した。
しかし、ナハルネット(5月12日付)によると、このロケット弾は、ベカーア県バアルベック郡マシャーリーウ・カーア村から発射されたものと思われるという。
なおカスル村には11日にもロケット弾が5発着弾している。
諸外国の動き
トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、レイハンル市での爆弾テロに関して、「シリア危機に対するトルコの政策を転換させることではなく、トルコの安定を揺るがし、トルコ国民の間に宗派対立を作り出そうとすることを狙っていた」と断じた。
そのうえで、「彼らは我々が悲劇的なシナリオに至ることを望んでいる」としたうえで、「シリアの泥沼にトルコを貶めようとする挑発に対抗し…、(宗派対立の)罠」に落ちない」ようトルコ国民に「自制」を求めた。
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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、レイハンル市での爆弾テロに関して、「バーニヤースで民族浄化の罪を犯した者がレイハンル市での爆破を行った」と断じた。
ダウトオール外務大臣はまた、爆弾テロが「トルコのシリア人とは無関係で、シリア政府と関係がある。バーニヤースでの虐殺後、トルコとレバノンで宗派主義的な挑発が行われることに我々は警戒しなければならない」と述べ、事件へのアサド政権の関与を疑った。
そのうえで、トルコおよびシリア周辺諸国が安全保障上の危機にますます曝されるなかで、国際社会がシリア大統領に対する行動をとる時が来た、と付言した。
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トルコのバシル・アタライ副首相は、レイハンル市での爆弾テロに関して「シリアの諜報機関とつながりのあるテロ組織」に属すトルコ人9人を容疑者として逮捕し、その一部は事件への関与を「自供した」と発表した。
アタライ副首相はまた、実行犯に関して「我々の情報によると、彼らは国内からやって来た」としつつ、「我々は彼らの名前、活動、そしてシリア政府と親密なつながりがあることを知っている」と述べた。
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『ハヤート』(5月13日付)によると、アレキサンドレッタ地方解放人民戦線を名のる組織が、ハタイ県(シリア領アレキサンドレッタ地方)のレイハンル市での爆弾テロがトルコ政府によるものだと非難した。
声明は、爆弾テロが「アレッポ、ダマスカスなどでの爆破によってその手を血で染めた者が行った」としたうえで、エルドアン首相が「最後の苦しみを味わった末に、無実の諸国民の死に基づく自らの政策による血のなかに沈むだろう」と述べ、エルドアン首相の関与を疑った。
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在ヨルダンEU代表部(アンマン)は声明を出し、シリア国内で避難生活を余儀なくされている約400万人の避難民を対象に、EUが6,500万ユーロ(8,400万米ドル)相当の追加の人道援助を行うことを決定したと発表した。
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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は『シュピーゲル』(5月12日付)に対して、米露による「ジュネーブ2」構想に関して、「まだ招待は受けていないが、必ず出席するだろう」と述べた。
また化学兵器使用疑惑について、サーレヒー外務大臣は「あらゆる種類の大量破壊兵器の使用に断固として反対する」と強調した。
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ロバート・ゲイツ前米国防長官は、CBS(5月12日付)のインタビューで、シリアへの米国の軍事介入に関して「リビアへの介入は過ちになると思っていた。シリアの場合も過ちになると思う。昨年ないしは半年前により大規模な介入をしていたとしてもだ。我々は自分たちの結果予測力を課題評価している」と述べた。
AFP, May 12, 2013、Aljazeera.net, May 11, 2013、al-Hayat, May 13, 2013, May 16, 2013、Kull-na Shuraka’, May 12, 2013、Kurdonline,
May 12, 2013、Naharnet, May 12, 2013、NNA, May 12, 2013、Reuters, May 12,
2013、SANA, May 12, 2013、 Der Spiegel, May 12, 2013、UPI, May 12, 2013、The Washington Post, May 12, 2013などをもとに作成。
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