軍がダルアー県ヒルバト・ガザーラ町を2カ月ぶりに「完全制圧」するなか、シリア革命反体制勢力国民連立のサブラー暫定議長は「ジュネーブ2」への参加の是非をトルコ、サウジアラビア、トルコなどと協議のうえで決定すると発表(2013年5月13日)

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国内の暴力

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、軍がヒルバト・ガザーラ町での反体制武装集団との戦闘の末、同町を約2ヶ月ぶりに奪還、「完全制圧」した。反体制武装集団は同町を撤退した。

SANA, May 13, 2013

SANA, May 13, 2013

また軍はタスィール町、キヒール村を砲撃した。

一方、SANA(5月13日付)によると、スィースーン村、シャブラク村、ジャムラ村、ナーフィア村、サフム・ジャウラーン村、シャジャラ町、クワイヤ村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、『ハヤート』(5月14日付)、SANA(5月14日付)によると、軍はダミーヤ・ガルビーヤ村、ハイダリーヤ村、アッシュ・ウルード村に対して早朝から攻撃を行い、3時間の戦闘の末、これらの村を制圧し、ヒムス市からクサイル市にいたる兵站路が確保された。

『ワタン』(5月13日付)は、軍がクサイル市を完全包囲したのを受け、同市に対する砲撃をいったん中断し、民間人の避難を促していると報じた。

しかし、同紙によると、反体制武装集団は市内に立てこもり、民間人を人間の盾としている、という。

一方、シリア人権監視団によると、ハウラ地方、タドムル市郊外の農場などが、軍の砲撃を受けた。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市周辺、ダルアー市、ムウダミーヤト・シャーム市などが軍の砲撃・空爆を受けた。

一方、SANA(5月13日付)によると、ダーライヤー市、ドゥーマー市、フジャイラ村などで、軍が特殊作戦を行い、反体制武装集団の戦闘員複数を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またナバク市、アドラー市などで、軍はシャームの民のヌスラ戦線メンバー複数を殲滅した。

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ダマスカス県では、SANA(5月13日付)によると、ジャウバル区で、軍が特殊作戦を行い、反体制武装集団の戦闘員複数を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ラターミナ町、ザカート市、ズラーキーヤート市などが軍の砲撃を受けた。

また軍はハマー市シャルキーヤ地区に突入し、逮捕摘発活動を行った。

これに対して、反体制武装集団は、サッブーラ、ハルサーン検問所を砲撃、またサラミーヤ市周辺で軍と交戦した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ムーハサン市などが軍の空爆を受けた。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(5月12日付)によると、自由シリア軍を名のる武装集団がハサカ市近くのトゥワイナ分岐点で旅客バスを捕らえ、乗客らを誘拐した。

武装集団は数週間前から同分岐点を封鎖していた。

事件は、民主統一党人民防衛隊とシャッラービーン部族民兵の対立のなかで、一部の武装集団が後者に付いたことが遠因だという。

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イドリブ県では、SANA(5月13日付)によると、ジダール・ブカフルーン市で、軍が反体制武装集団を攻撃、タウヒード師団の「精神的指導者」と目されるズィヤード・サイイド・イーサー(アブー・タキー)を殺害した。

またウンム・ジャリーン村、トゥルア市、シャビーバ軍事基地周辺、カルミード軍事基地周辺、ナフリヤー市、カフルズィーター市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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アレッポ県では、SANA(5月13日付)によると、マンナグ村、ムスリミーヤ村、ハーン・アサル村、ハーン・トゥーマーン村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、ブスターン・カスル地区、シャイフ・マクスード地区、ライラムーン地区などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラタキア県では、SANA(5月13日付)によると、サルマー町、バイト・ハリービーヤ村、トゥッファーヒーヤ村などで、軍がシャームの民のヌスラ戦線の拠点・アジトを攻撃・破壊、サウジ人など外国人戦闘員を殺傷した。

反体制勢力の動き

民主的変革諸勢力国民調整委員会のハサン・アブドゥルアズィーム代表は、クウェート日刊紙『ラアユ』(5月13日付)に対して、委員会とそれを支持する組織・活動家が、米露が準備を進める「ジュネーブ2」大会に参加するだろうと述べた。

また、アサド大統領の進退をめぐる米国の姿勢について、「退任を条件とすることをあきらめたのだろう」としたうえで、「米国は、決定がシリア人自身の交渉によってなされるということで納得したものと思われ、またそのようにロシア人と合意したようだ」と答えた。

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シリア革命反体制勢力国民連立のジョルジュ・サブラー暫定議長はイスタンブールで記者会見を開き、米露による「ジュネーブ2」構想に関して、トルコ、サウジアラビア、トルコなどと協議して参加の是非を決めると述べた。

サブラー暫定議長は「出欠に関して決定を下すのは依然として時期尚早だ。なぜなら、現在のところ、大会の位置づけが不明であり、議題、日程、参加国・代表者のリストも発表されていないからだ」と述べた。

そのうえで「我々は現在、国内の革命諸勢力、トルコ、サウジアラビア、カタールなどのアラブ諸国の友人や同盟者と、ふさわしい決定を下すための協議段階にある」ことを明らかにした。

さらに「殺戮停止、シリア人への暴力行為停止のための…政治的解決をめざすすべてのイニシアチブを歓迎する」としつつ、「バッシャール・アサドとその政権が退任する必要があり、これによって政治プロセスのイニシアチブの余地が生じる」と強調した。

サブラー暫定議長は一方、レイハンル市での爆弾テロに関して、「(シリア)政府はレイハンル市で自らが犯したことを、自由シリア軍によって受けることになるだろう」と述べ、反体制武装集団による将来のテロを黙認するような姿勢を示した。

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クッルナー・シュラカー(5月13日付)によると、自由シリア軍国内合同司令部のファフド・ミスリー報道官はパリで声明を出し、「民主主義のためのシリア人潮流」を脱会したと発表した。

理由は「潮流が民主的、集団的行動のイメージを体現しておらず、反体制組織の新たな寄り合い所帯」に成り下がったからだという。

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シリア国民団体ブロックは声明を出し、カイロで5月10~12日にかけて開かれていた「民主的局」会合からの脱会を宣言した。

出席者が他の反体制組織や国民に貢献するような政治組織を結成しようとしていないのが理由だという。

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シリア民主フォーラムのミシェル・キールー代表は、スーリーヤ・ガド・チャンネル(5月13日付)のインタビューで、4月下旬に発生したアレッポ県でのキリスト教司教2人の誘拐に関して、空軍情報部が拉致したと断じた。

諸外国の動き

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は記者団に対して、ハタイ県レイハンル市での爆弾テロに関して「(シリア人)避難民の問題をめぐってさまざまな憶測や挑発がある。しかしこの爆破事件はシリアの反体制勢力とは無関係だ。シリアの反体制勢力と避難民を貶めようとしている悪党がいる」と述べた。

また「将来必要な措置を講じる。我々は偽らない。しかし、必要になったときに報復する。そうすることを恐れてはいない。みなはこのことを理解しなければならない」と付言した。

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バラク・オバマ米大統領とデヴィッド・キャメロン英首相がワシントンDCで会談し、シリア情勢などについて協議した。

オバマ米大統領は「アサドの退任…にいたる移行期プロセスで我々が合意できれば、それはみなの利益になるが…、その成功を約束はできない…。怒りが燃え上がったなかで、それを沈めるのは困難だ」と悲観的な姿勢を示した。

またシリア情勢に関して「イラン、ヒズブッラー、アル=カーイダとつながりのあるシャームの民のヌスラ戦線」が混在していると指摘、「彼らのアジェンダはアサド退任を越えている」と付言した。

そのうえで米英が「アサド大統領を退任させるための圧力を増加するとともに、穏健な反体制勢力を強化するために協力する」と述べ、「アサドの攻撃に抵抗する力を反体制勢力が持つまで政治的進展はないだろう」との見方を示した。

一方、英首相付報道官は、キャメロン首相が会談で「信頼できるより協力な反体制勢力をいかに作るかを議論するよう求めた」ことを明らかにし、アサド政権に対抗し得る反体制組織が不在であることを期せずして認めた。

キャメロン首相は同様の姿勢をジョン・ケリー米国務長官との電話会談でも示したという。

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米国務省報道官は米露が準備を進める「ジュネーブ2」大会に関して、「5月末に開催されるだろうが、延期されるかもしれない。おそらくは6月初めに。今のところ正確な期日はない」と述べた。

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ロシア複数のメディアが報じたところによると、ロシア大統領報道官は、米露による「ジュネーブ2」構想に関して、「クレムリンは国際会議に関する詳細な情報を有していない…。ウラジーミル・プーチン大統領の出席について話すことは時期尚早だ」と述べた。

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赤十字国際委員会は、「深刻な人道上の大惨事」に苛まれているシリア国民を支援するため、6,230万スイス・フランの追加で拠出するよう支援団体などに呼びかけた。

これにより赤十字交際委員会による2013年の支援額は1億130万スイス・フランと約倍増する見込み。

AFP, May 13, 2013、al-Hayat, May 14, 2013、Kull-na Shuraka’, May 13, 2013、Kurdonline, May 13, 2013、Naharnet, May 13, 2013、al-Ra’y, May 13, 2013、Reuters, May 13, 2013、SANA, May 13, 2013、UPI, May 13, 2013、al-Watan, May 13, 2013などをもとに作成。

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