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ハタイ県(アレキサンドレッタ地方)での爆破テロ
トルコのハタイ県レイハンル市(シリア領アレキサンドレッタ地方リーハーニーヤ市)で、爆発物を積んだ車2台が相次いで爆発し、40人(その後51人)が死亡、数十人が負傷した。
『ハヤート』(5月12日付)などによると、レイハンル市は、シリア人避難民の流入に対する住民の不満が高まっており、シリア人避難民などへの暴行事件などが発生していた。
これに関して、BBC(5月11日付、トルコ語放送)は、5月初めにバーニヤース市などで発生したとされる「虐殺」にトルコ出身のアレヴィ派(アラウィー派)が参加していたと報じた。
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レインヒル市での爆弾テロに関して、トルコのブレント・アリンジュ副首相は「シリア政府が当然容疑者だ」と述べ、アサド政権の関与を疑った。
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レインヒル市での爆弾テロに関して、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、シリアでの紛争、ないしはPKKとアンカラの和平プロセスに関係があると思われると述べた。
エルドアン首相は「我々はデリケートな時期におり、クルド問題解決に向けて、新たな時代に入ろうとしている。この新たな時代に入ることができない者たちが、大胆にもこうしたことを行うかもしれない」と述べた。
また「もう一つデリケートな問題がある。ハタイ県がシリア国境に位置しているということだ。こうした行為はおそらく、こうしたデリケートな状況を刺激するために行われた」と付言した。
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レインヒル市での爆弾テロに関して、トルコのムンメル・ギュレル内務大臣は、PKKとの間で数ヶ月前から行われている和平プロセスを妨害することを狙った「挑発」と断じ、クルド民族主義勢力の関与を疑った。
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一方、NTV-Turk(5月11日付)が伝えたところによると、トルコのバシル・アタライ副首相は、レインヒル市での爆弾テロに関して、「初動調査の結果…攻撃を行ったのはシリアのムハーバラートとつながりがある(ことが判明した)」と述べた。
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クルドオンライン(5月11日付)によると、レイハンル市での爆破テロの直後、ハタイ県アンタキア市にあるNPO「市民社会会議カーミシュローの家」本部に何者かが投石を行い、窓ガラスが割れるなどの被害が出た。
同報道によると、「シリア革命」に反対し、アサド政権を支持する複数のトルコ人の犯行だという。
国内の暴力
アレッポ県では、シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表によると、反体制武装集団がアレッポ・ハマー街道の検問所2カ所(ウンム・アームード、カブタイン村)を占拠し、街道を封鎖したのを受け、軍が封鎖解除のために反体制武装集団に激しい攻撃を加えた。
また、ウンム・アームード村で反体制武装集団の司令官と兵士の2人が地雷の爆発によって死亡した。
一方、SANA(5月11日付)によると、ハンダラート・キャンプ、アルカミーヤ村、ハーン・アサル村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
またアレッポ市シャイフ・サイード地区で、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市周辺で、軍・人民諸委員会・ヒズブッラーと反体制武装集団が交戦した。
また軍が奪還したアーバル市を反体制武装集団が攻撃した。
これに関して、自由シリア軍を名のる複数の武装集団が共同声明を出し、アーバル市一帯の地域を制圧したと発表した。
共同声明を出したのは、バーバー・アムル革命家大隊、ウマル・ファールーク独立大隊、ファールーク・バーバー・アムル大隊など。
一方、SANA(5月11日付)は、この声明を否定、アーバル市は「依然として安全だ」と報じた。
またSANA(5月11日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区で、略奪品の分配をめぐって反体制武装集団どうしが交戦、双方に複数の死傷者が出た。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ヤルムーク区が軍の空爆を受けた。
一方、SANA(5月11日付)によると、ジャウバル区で軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハラスター市・アルバイン市間の軍の車両管理施設周辺で軍と反体制武装集団が交戦した。
またザマルカー町、バイト・サフム市、ムウダミーヤト・シャーム市なども軍が反体制武装集団と交戦した。
一方、SANA(5月11日付)によると、イバーダ市周辺地域、ジャルバー市、フジャイラ村、フサイニーヤ町、ダーライヤー市、ドゥーマー市、ハラスター市などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、外国人戦闘員など複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、カルミード軍事基地周辺で軍が反体制武装集団と交戦した。
一方、SANA(5月11日付)によると、カフルラーター市、アリーハー市、アイン・カサブ町、ミシュミシャーン村、カトルーン市、ナージヤ村、アイン・バールーダ市、ブザイト市、ダルクーシュ町、ヒーシュ村、タッル・サラムー市、ウンム・ジャリーン村、トゥルア市、マスィービーン市、サラーキブ市、アブー・ズフール航空基地周辺などで、軍が反体制武装集団と交戦し、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、対イラク国境に位置するヤアルビーヤ町で激しい銃声が聞こえた。
これに関して、クッルナー・シュラカー(5月11日付)は、イラク軍(国境警備隊)がイラク領内から国境通行所を占拠する反体制武装集団(自由シリア軍)に向けて発砲したと報じた。
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ダルアー県では、SANA(5月11日付)が、軍消息筋の話として、ダマスカス・ダルアー国際幹線街道、とりわけヒルバト・ガザーラ町一帯での軍による反体制武装集団の掃討が完了し、同街道の安全が回復、通行が再開された。
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ハマー県では、SANA(5月11日付)によると、ハッターブ村、カサービーヤ村、タッル・ハサン村、ザウル・ジャディード村、ザウル・マサ-リク村、ザウル・ナースィリーヤ村などで、軍が反体制武装集団(シャームの民のヌスラ戦線)の掃討を完了し、治安を回復した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(5月11日付)によると、ダイル・ザウル市工業地区、カマーナート地区、マリーイーヤ村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
シリア国内の動き(シリア政府の動き)
連立与党の変革解放人民戦線(カドリー・ジャミール代表)は声明を出し、米露による「ジュネーブ2」構想への支持を表明した。
反体制勢力の動き
反体制組織のシリア民主人民党(旧シリア共産党政治局派、ジョルジュ・サブラーを輩出)は、米露による「ジュネーブ2」構想に関して、対話が「殺戮の停止」と「アサド大統領および政権幹部の退任」を条件とするとの姿勢を示し、事実上拒否した。
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シリア革命反体制勢力国民連立はイスタンブールで総合委員会会合を開催し、組織の拡大、政治委員会メンバー選出、ガッサーン・ヒートゥー暫定政府首班の進退などについて協議した。
シリア革命反体制勢力国民連立はまた、レインヒル市での爆弾テロを「体制が犯す罪を逃れてきたシリア人避難民を受け入れた…トルコ国民への復讐」と評し、アサド政権の関与を疑った。
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カイロで、シリア革命反体制勢力国民連立に参加していない活動家、組織が会し、「民主的局」大会が開催された。
大会はシリア民主フォーラムのミシェル・キールー代表によって主導され、市民民主国家樹立に向けて協議を行い、反体制勢力や国民の統合の必要を改めて確認した。
なお大会には、自由シリア軍の幹部だというアブドゥルハミード・ザカリヤー大佐も出席し、大会の方針に支持を表明した。
諸外国の動き
パレスチナ解放人民戦線総司令部派(PFLP-GC、アフマド・ジブリ-ル書記長)は声明を出し、ゴラン高原解放のための武装部隊を発足すると発表した。
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チュニジアのウスマーン・ジュランディー外務大臣は、シリアの刑務所に収監中のチュニジア人をめぐる問題で、シリア当局と「さまざまなかたちで折衝を続ける」意思を明らかにした。
ジュランディー外務大臣によると、チュニジア当局は、反体制武装闘争に参加するためにシリアに向かおうとしたチュニジア人約1,000人の出国を阻止したことを明らかにしたうえで、現在シリアに「数百人」のチュニジア人戦闘員が潜伏していることを認めた。
一方、チュニジアのNPOなどによると、シリアでのチュニジア人戦闘員の数は3,500人に達するという。
AFP, May 11, 2013、al-Hayat, May 12, 2013、Kull-na Shuraka’, May 11, 2013、Kurdonline, May 11, 2013、Naharnet,
May 11, 2013、Reuters, May 11, 2013、SANA, May 11, 2013、UPI, May 11, 2013などをもとに作成。
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