カーミシュリー市で人民防衛隊が軍・治安部隊の襲撃を受け3人のメンバーが死亡するなか、ヒムス県では軍がヒムス市ハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区に「前例のない」空爆を加える(2013年4月4日)

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国内の暴力

ハサカ県では、民主統一党人民防衛隊総司令部は声明を出し、カーミシュリー市で、人民防衛隊が軍・治安部隊の襲撃を受け、同部隊軍事評議会メンバー3人が死亡、1人が重傷を負ったと発表した。

これを受け、人民防衛隊は、市内をパトロール中の治安部隊と、市東側に位置する治安部隊検問所を襲撃し、治安部隊要員3人を殺害、7人を拘束、検問所を制圧した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ国際空港に近いアズィーザ市の奪還を試みる軍が同市を占拠する反体制武装集団と交戦し、前者の兵士10人、後者の戦闘員4人を含む22人が死亡した。

また『ハヤート』(4月5日付)によると、アレッポ市では、シャイフ・マクスード地区内の反体制武装集団制圧地域に「アレッポ・シャリーア委員会」が入った。

一方、SANA(4月4日付)によると、ラトヤーン村、アズィーザ村、ジスル・アッサーン村、ドゥワイリーナ市、クワイリス市、ナッカーリーン村などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、サーリヒーン地区、マルジャ地区、ハイダリーヤ地区、カースティールー地区、ジャンドゥール交差点、シュカイイフ地区、シャイフ・マクスード地区、アシュラフィーヤ地区などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区に軍が「前例のない大規模な」空爆を加え、また市内各所で反体制武装集団と交戦した。

一方、SANA(4月4日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、キースィーン村、タッルドゥー市、ダブア市、東ブワイダ市、アーバル市、タルビーサ市、ラスタン市、ダール・カビーラ村、サッルーミーヤ市、ハイダリーヤ村、タドムル市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またヒムス市アルメニア地区に反体制武装集団が撃った迫撃砲が着弾し、複数の市民が負傷した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カーブーン区、バルザ区が軍の砲撃を受けた。

一方、SANA(4月4日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、第17師団本部周辺で軍とシャーム自由人大隊などからなる反体制武装集団の交戦が続いた。

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ダマスカス郊外県では、SANA(4月4日付)によると、アッブ農場郊外、ジスリーン町、リーハーン農場、ウタイバ村、ザバダーニー市、ナバク市、ダーライヤー市、ズィヤービーヤ町、フサイニーヤ町などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム旅団、シャームの民のヌスラ戦線メンバーなど複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(4月4日付)によると、ジスル・シュグール市、バーラ村、マアッラトミスリーン市、ムーリーン市、イドリブ市・マアッラトミスリーン市間の街道、ハザーヌー町、ビンニシュ市、マアッラト・ヌウマーン市、サラーキブ市、マクバラ・ルーリーン市、マジュダリヤー村、ラーミー村、イフスィム村、アブー・ズフール航空基地周辺、サルキーン市などで、軍が反体制武装集団と交戦し、外国人戦闘員など複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

シリア政府の動き

アルジェリア紙『シュルーク』(4月4日付)は、バアス党幹部などからなるシリアの非公式使節団が、反体制勢力との交渉の仲介を求めて、アルジェリアを訪問したと報じた。

同報道によると、使節団は、総合情報部内務課の少将、アレッポ県選出の人民議会議員など5人からなり、ロシアの航空機で、モスクワ、パリを経由して、アルジェに到着したという。

使節団は、アルジェリアの内務省、外務省、軍高官らと会談した。

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ロイター通信(4月4日付)は、複数の戦闘員からの情報として、イランの秘密施設でゲリラ戦の教練を受けた「非正規の民兵」(シリア人戦闘員)が派遣されている、と報じた。

同報道によると、政府の治安筋は、イランでの教練を否定している。

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DamasPress(4月5日付)は、アサド大統領がシリア国営チャンネルのメディア関係者、アナウンサーと面談し、シリア情勢について意見を交換したと報じた。

会談は2時間半に及び、そのなかでアサド大統領は「シリアが直面しているのは、戦争であって、治安に関わる事件ではない。メディアは、真実を伝えるという役割を通じて、祖国を防衛するもっとも重要な手段だ」と述べたという。

反体制勢力の動き

イスラーム殉教者師団はビデオ声明を出し、ダマスカス県ダーライヤー市のサイイダ・サキーナ廟は依然として反体制武装集団が掌握していると発表した。

クルド民族主義勢力の動き

クッルナー・シュラカー(4月4日付)は、民主統一党人民防衛隊が、ハサカ県各地に武器携帯認可センターを設置し、登録期間(4月3日~5月3日)内に武器を保持する市民に登録するよう呼びかけた。

登録期間終了後、無許可で所有される武器は没収されるという。

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クッルナー・シュラカー(4月4日付)は、クルド最高委員会に参加するシリア・クルド国民評議会の各党から得た情報として、イラク・クルディスタン地域への移住を行わないよう呼びかけた4月1日の委員会の声明が、評議会の署名を経ておらず、民主統一党により一方的に発表されたものだと報じた。

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クルドオンライン(4月4日付)は、アレッポ市アシュラフィーヤ地区とシャイフ・マクスード地区での戦闘激化に伴い、アレッポ県のアフリーン市、コーバーニー市(アイン・アラブ市)に10万人以上が避難、これを受けクルド最高委員会はハサカ県カーミシュリー市から人道支援物資を積んだ貨物トラック10輌を派遣したと報じた。

レバノンの動き

ミシェル・スライマーン大統領は、UNRWAのフィリポ・グランディ事務局長と会談し、シリア領内の国境地域に避難民キャンプを設置し、国連軍がその防衛にあたることを提案した。

レバノン大統領府が声明で明らかにした。

諸外国の動き

イエメンのアブー・バクル・カルビー外務大臣は、シリアの「テロ集団」が治安の混乱に乗じて影響力を強めようとしていると述べ、「シリア革命反体制勢力国民連立にサナアーのシリア大使館を明け渡すことはイエメンでは議論の余地はない」と拒否の姿勢を示した。

UPI(4月4日付)が報じた。

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ヨルダンのペトラ通信(4月4日付)によると、シリア人避難民のための人道支援物資を積んだロシアの貨物機がアンマン国際空港に到着した。

なおロシアは3日にも、シリア人避難民のための人道支援物資を積んだ貨物機をレバノンのベイルート国際空港に派遣している。

AFP, April 4, 2013、Akhbar al-Sharq, April 4, 2013、DamasPress, April 5, 2013、al-Hayat, April 5, 2013、Kull-na Shuraka’, April 4, 2013、Kurdonline, April 4, 2013、Naharnet,
April 4, 2013、Reuters, April 4, 2013、SANA, April 4, 2013、al-Shuruq, April 4, 2013、UPI, April 4, 2013などをもとに作成。

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