アサド大統領はシリアを訪問しているロシアのメディア8社との合同インタビューに応じた。
合同インタビューを行ったのは、『ロシースカヤ・ガゼタ』紙、タス通信、ロシア・セヴォードニャ、スプートニク・ラジオ、ズヴェズダ・チャンネル、ロシア24チャンネル、RTチャンネル(アラビア語放送)、スプートニクの8社。
インタビューはアラビア語で行われ、その全文はSANA(3月27日付)で映像(https://youtu.be/tbTmcuyLdx4)とともに公開された。
合同記者会見でのアサド大統領の主な発言は以下の通り:
「(政府と反体制派の和解交渉に向けた)イニシアチブは必要だと言える…。欧米諸国の多くは、シリアと我々の地域で、「テロとの戦い」の名のもとにで戦争を始める方向に進もうとしてきた…。(和解交渉に向けた)ロシアのイニシアチブは必要だ。なぜならそれは政治的解決を確かなものとし、米国、フランス、英国といった欧米諸国における主戦論者の道を閉ざしてきたからだ…。主題はシリア人どうしの対話である。成功させるにはこの対話がシリアだけのものでなければならず、対話を行う当事者に外国の影響が及んではならない。ここで問題になっているのは、対話に参加しようとする多くの当事者が欧米諸国は地域諸国の支援を受けているということで、それが彼らの決定に影響を及ぼしてしまっている…。このイニシアチブを成功させるには、外国は干渉しないことが求められている…。シリア人の対話でなければならず、現在ロシアが果たしている役割は、シリア人どうしの対話プロセスを促すものであって、シリア人に考え方を押しつけるものではない」。
「スタファン・デミストゥラ・シリア問題担当国連アラブ連盟共同特別代表のイニシアチブ(アレッポ市での戦闘中止イニシアチブ)は、多くの当事者によって左右されている…。このイニシアチブは…アレッポの各所にいるテロリストや武装集団の要求によっても左右される。こうした問題はまた、シリア人どうしの対話にもある。武装集団の一部は、外国に従属している。アレッポ市の問題に限定すると、同地のテロ集団はトルコから直接支援を受けている。だからこれらの勢力は当初からデミストゥラ氏のイニシアチブを拒否した…。デミストゥラ氏のイニシアチブはその内容において重要であり、我々はそれがきわめて現実的な内容だと考えている。武装集団に資金援助を行うトルコなどの外国が干渉を止めれば、その成功の機械は大きなものになる」。
「いかなる問題も政治的解決をもって終わるものだと私は言ってきた。だが、政治的解決はつねに時間がかかり、ゆっくり行われれるものだ…。シリアにおける国民和解は、大きな成功を収めている。これにより、さまざまな地域においてシリア国民の治安状況は改善されてきた」。
「これらの発言(アサド政権の退陣を求める欧米諸国の発言)は、危機の当初から耳にしてきたもので、欧米のメンタリティを表している。植民地主義的メンタリティをだ…。ある国のことが気に入らない場合、欧米諸国はその国、さらには大統領を交替させようとする…。この論理のもとで彼らが話すとき、彼らはこうした国の国民を見てはいない…。しかし各国国民は今日、自らの未来、運命、統治者を外国によって決められることを受け入れない…。欧米諸国や地域における同盟国が行ってきたすべての発言に、我々は感心などなかった。大統領は退任するとかとどまるなどと彼らが言おうが関係ない。彼らが、大統領は正統だと言おうが言うまいが我々には関係ない。正統性は国民から生じるのであり、シリアにおいて国家が持ちこたえている理由があるとすれば、それは国民の支持があるからだ。我々は西欧の発言に時間を割く必要などない。彼らは毎日矛盾した発言をする用意をしているだけだ」。
「もちろん、宗派をめぐる問題が社会に亀裂を生み出すかたちで存在すれば、外国がこの問題(宗派対立)をもてあそび、混乱を作り出すことは簡単だろう…。しかし、さまざまなメディア、とりわけ宗教機関を通じて、我々はこうした問題を克服してきた。そして、問題が宗派や宗教とは関係がなく、外国の支援を受けたテロが問題なだけだということを明らかにしてきた。かくして我々は成功を収め、きわめて危険な問題を克服できたのだ」。
「欧米諸国はパートナーを受け入れない。従属する国が欲しいだけだ。米国は欧米諸国のパートナーを受け入れようとさえしていない」。
(ジョン・ケリー米国務長官が「我々は最後には(シリア政府と)交渉しなければならない」と述べたことに関して、「(世界は米国高官が日によって矛盾したことを言うのに慣れてしまっていると思う…。このことは米政権内に対立があるということを表している…。シリアやウクライナをめぐって起きている最も重要な対立とは、二つの陣営による対立だ。第1の陣営は、シリアやイラクに戦争や軍事的介入をしたいと考え、ウクライナに派兵したいと考える陣営…。第2の陣営はこれまでの戦争を教訓として介入に反対する陣営だ…。今日もなお、我々は米政権内に真の政策転換が生じたとは考えていない。我々は過激な陣営が依然として世界のほとんどの地域における政策を決定していると見ている」。
「有志連合の空爆は1日平均で10回前後しか行われていない…。我々は、先進国や豊かな国など60カ国かなる有志連合について話している。一方、シリア空軍はこの有志連合に比べると小さなものだが、1日だけで60カ国が行う倍以上の空爆を行っている…。このことは、有志連合が真剣さを欠いていることを示している。ダーイシュ(イスラーム国)がシリアやイラクで…これ以上拡大することを望んでいない国もおそらくあるのだが、同時に、ダーイシュを根絶することも望んでいないようだ。これらの国々はテロのインフラが維持され、それを利用して他の国を脅迫し、揺さぶろうとしている。率直に言うと、今のところ、テロとの戦いにおいて真剣さを見出すことができないのだ…。しかし別の側面もある。すなわち、政治的観点から見ると、テロを支援している国から構成されている有志連合がテロに対抗することなどできない」。
(中東地域に平和維持軍の展開を求めるかとの問いに関して)「平和維持軍は交戦国で兵力を引き離すために展開する。ダーイシュのために平和維持郡を展開するということは、ダーイシュを国家として承認することを意味する。これは受け入れられるものではなく、危険でもある…。ダーイシュだけでなく、シャームの民のヌスラ戦線についても言及したい。これらの組織はアル=カーイダとつながりがある組織で、こうした組織が社会に入り込んでいるのだ」。
「ムスリム同胞団はイスラーム世界におけるアル=カーイダの実質的、そして真の序曲をなしていた…。当時(1980年代)、我々はムスリム同胞団に対するイデオロギー闘争を…正しいイスラームを普及することを通じて行った。しかし現在は事情が異なっている。当時はインターネットもSNSもなかったし、衛星メディアもなかった。当時は文化の問題を掌握することは容易だった。今日我々が立ち向かっている問題は、あなた方の国であなた方が立ち向かっている問題でもあり、多くのイスラーム諸国が立ち向かっている問題でもある」。
「東地中海、そしてシリアのタルトゥース港を含む世界各所におけるロシアのプレゼンスは、ソ連崩壊によって失われたある種のバランスを作り出すうえできわめて重要だ…。我々にとって、我々の地域においてロシアのプレゼンスが強まることは、この地域が安定するうえでよりよいことだと考えている。なぜなら、ロシアは世界の安定に重要な役割を担っているからだ…。それゆえ、私は、東地中海、とりわけシリアの海岸そして港湾にロシアのプレゼンスが広がることを歓迎すると明言したい」。
「テロリストを支えるプロパガンダは、分離主義、宗派主義、人種主義といった言葉が利用されている。その目的はシリア社会を構成するさまざまな集団を国外に逃げ出させようとすることになった…。しかし実際のところ、テロリストはマイノリティを攻撃しているのではない。彼らはシリア全体を攻撃しているのだ。マイノリティだけが標的なのではない。だが、こうしたプロパガンダは彼らがシリア国内に亀裂を作り出そうとする際に必要だったのだ」。
「我々は、シリアとエジプトが近く接近することを願っている。なぜなら、シリア・エジプト関係はアラブ情勢全体にとって重要だからだ」。
(2月にフランス国会議員使節団がシリアを訪問したことに関して)「シリアを最近したこうした使節団のなかには、この地域で起きていることを伝える欧米諸国のメディアが信用を欠いていると述べるものもあった」。
SANA, March 27, 2015をもとに作成。
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