2013年1月27日のシリア情勢

国内の動き(シリア政府の動き)

SANA(1月27日付)は、シリアの最高司法評議会が、国民対話に参加する反体制政治組織・活動家に対する法的追及の停止を決定したと報じた。

同報道によると、法的追及停止の対象となる組織は、内閣ないしは内閣の危機解決政治プログラム実施閣僚委員会が決定する、という。

**

SANA(1月27日付)は、シリア外務在外居住者省高官の話として、シリア政府がメッカでの爆破テロを計画していたとする元駐ジェッダ領事館付徴兵担当官(イマード・マイーン・ヒラーク)の発言(1月25日)を否定したと報じた。

国内の暴力

ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、カダム区で軍と反体制武装勢力が激しく交戦し、戦闘は鉄道駅にまで及ぶ一方、ダマスカス・ダルアー間の国際幹線道路が一時閉鎖となった。

**

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、軍が完全制圧をめざすダーライター市などで砲撃、戦闘があった。

またジャルマーナー市では、爆弾が仕掛けられた車が爆発し、市民9人が負傷した。

一方、『ワタン』(1月27日付)は、ダーライヤー市周辺からムウダミーヤト・シャーム市に至る一帯を軍が完全制圧し、シャームの民のヌスラ戦線の複数の指導者が降伏、軍に投降した、と報じた。

またSANA(1月27日付)によると、軍がダーライヤー市ハリージュ地区の浄化を完了し、治安と安定を回復し、ヤブルード市などでも反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、装備・拠点を破壊した。

**

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市内の南東部が砲撃を受けた。

複数の活動家によると、ヒムス市内の反体制武装勢力は、軍が数週間前に市の西部を制圧し、兵站能力が低下したことで、弱体化している、という。

一方、SANA(1月27日付)によると、ヒムス市ジャウバル区で軍が反体制武装勢力を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷した。

反体制勢力の動き

ロンドンを拠点としている反体制組織のシリア人権監視団は、AFP(1月27日付)に対して、2011年3月以降の死者数が50,009人に達したと発表した。

うち民間人の死者数は34,942人で、このなかには反体制武装闘争への参加者約8,000人、身元不明者1,619人が含まれ、また子供の死者数は679人、女性の死者数は2,120人だという。

このほか離反兵の死者数は1,619人、軍士官・兵士の死者数は12,283人だという。

なお同監視団によると、「数千人の行方不明者とシャッビーハ、そして数百人の外国人戦闘員」はこの数値には含まれていない。

しかし、上記の統計を総合すると、軍および親体制派民兵の死者数は約13,000人、反体制武装勢力の死者数は約10,000人、両者の戦闘に巻き込まれた死亡した非武装の犠牲者数は約28,000人となる。

**

トルコから侵入し、ラアス・アイン市の制圧をめざすサラフィー主義者のシャーム外国人大隊は声明を出し、民主連合党人民防衛部隊と「シャッビーハ」が流血停止を拒否していると批判する一方で、自らがアラブ人とクルド人の対立を助長する意思はないと明言、クルド人に対して、国土解放に参加するよう呼びかけた。

**

シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー前事務局長は、『ハヤート』(1月28日付)に対して、シリアの友連絡グループ諸国の対応に関して、「危機解決ではなく、危機運営という考え方で対応している…。こうした方法は危機を長引かせ、多くの死者、破壊、そして過激化をもたらす」と批判した。

**

野党の国民成長党のザーヒル・サアドッディーン党首はウィーンで声明を出し、1月25日から連絡がとれなかったハリール・ムスタファー・サイイド書記長がダマスカス県の自宅で逮捕されていたと発表した。

サイイド書記長(1976年生まれ)は国内での活動を統括し、野党と国内の反体制組織からなるシリア国民救済大会のフォローアップ委員会副委員長を務めている。

**

シャームの民のヌスラ戦線は声明を出し、サラミーヤ市での1月21日の自爆テロを実行したと発表した。

シリア革命反体制勢力国民連立やシリア・ムスリム同胞団など反体制組織は、アサド政権の自作自演だと主張していた。

諸外国の動き

ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ首相は、CNN(1月27日付)のインタビューに応じ、そのなかでアサド政権存続の機会は減少しつつあるとしつつ、「それを決めるのはシリア国民だ」と強調した。

メドヴェージェフ首相は、アサド大統領の政策について「もっと早く行動し、穏健な反体制勢力に対話を呼びかけるべきだった…。これは致命的な失策だった」と述べた。

また「私は、シリアの高官がその(交渉の)用意がいなかったのだと思う。しかし、いかなる状況下でも政治エリートを退任させるための武力紛争が許されてはならない」と続けた。

さらに「彼(アサド大統領)が権力の座にとどまる機会はますます失われていると考えているが…、それを決めるはシリア国民であって、ロシアでも米国でもないと繰り返したい」と付言した。

そのうえで「欧米諸国、中東諸国がすべきは…、アサド大統領の退任、処刑、起訴を要求するだけでなく、当事者に交渉の席につくよう説得することだ」と強調した。

**

イスラエルのスィルヴァン・シャローム副首相は、イスラエル軍ラジオ局(1月27日付)のインタビューに応じ、そのなかで、ヒズブッラーをはじめとする親アサドの武装組織が化学兵器を入手したら「これらの組織の能力が劇的に変わるだろう」としたうえで、それが「予防的作戦さえ含んだ異なったアプローチを必要とするレッドラインを越えた」動きとなると警鐘を鳴らした。

AFP, January 27, 2013、Akhbār al-Sharq, January 27, 2013、al-Ḥayāt, January 28, 2013, January 29, 2013、Kull-nā Shurakā’, January 27, 2013、al-Kurdīya
News, January 27, 2013、Naharnet, January 27, 2013、Reuters, January 27,
2013、SANA, January 27, 2013、al-Waṭan, January 27, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

カテゴリー: シリア政府の動き, 反体制勢力の動き, 国内の暴力, 諸外国の動き パーマリンク