ジャミール経済問題担当副首相がロシアからシリアに様々な武器が供与されていることを明らかにするなか、シャーム自由人大隊などがイドリブ中央刑務所に突入し「100人以上の囚人を解放」(2013年1月26日)

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国内の動き(シリア政府の動き)

カドリー・ジャミール経済問題担当副首相兼国内通商消費者保護大臣は、ロシアの声ラジオ(1月26日付)に対して、これまでに締結された契約に従い、ロシアからシリアに様々な武器が供与されている、と述べた。

またRT(1月26日付)が伝えたところによると、ジャミール副首相は、シリア政府による化学兵器使用疑惑に関して、「カタールが資金援助する勢力、とりわけ過激派は、化学兵器を生産する実験を行い、そのための工場を持っていることは広く知られている…。このような挑発を行う者たちは、政治的解決を…阻止しようとしている」と述べた。

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『ハヤート』(1月27日付)は、複数のシリア人専門家による試算として、紛争により国内総生産がこれまでに35%減少、また今後も混乱が続けばさらに18%減少するだろう、と報じた。

また2012年に35%に達した失業率も、2015年まで紛争が続けば60%に達し、復興には450億ドルの資金が必要になるだろう、と予測した。

国内の暴力

ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(1月26日付)によると、民主統一党人民防衛隊がトルコから潜入した自由シリア軍とラアス・アイン市各所で戦闘を続け、市東部では、自由シリア軍の砲撃や狙撃によって、多数の市民が死亡、民家が破壊された。

対する人民防衛隊は、ラアス・アイン市西部のマハッタ地区、イブラ地区の自由シリア軍の拠点に対して砲撃を加えたという。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、25日に反体制武装勢力が突入したイドリブ中央刑務所内およびその周辺で軍と反体制武装勢力が交戦した。

突入したのはシャーム自由人大隊などで、「100人以上の囚人を解放」する一方、戦闘で囚人10人が死亡したという。

一方、SANA(1月26日付)は、軍が住民の協力のもと、イドリブ・サルキーン街道沿いの中央刑務所襲撃を試みた武装勢力の残党の追撃が行われた、と報じた。

また、SANAによると、ビンニシュ市、マアッラトミスリーン市、サルミーン市、アブー・ズフール市、ジスル・シュグール市郊外などで軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殲滅した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ザマルカー町、ムウダミーヤト・シャーム市が空爆・砲撃を受け、ダーライヤー市では軍と反体制武装勢力が交戦した。

また、クッルナー・シュラカー(1月26日付)は、ダマスカス郊外県のジュダイダト・アルトゥーズ町、ムウダミーヤト・シャーム市、クドスィーヤー市のガソリン・スタンドを人民諸委員会が選挙し、政府支持者のみに燃料を配給・販売している、と報じた。

一方、SANA(1月26日付)によると、ダーライヤー市、フサイニーヤ町、バフダリーヤ村などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ジャウバル区が空爆を、バルザ区が砲撃を受けた。

またザーヒラ地区で、爆弾が仕掛けられた車が爆発し、男性1人が負傷した。

さらにティシュリーン地区で、軍と反体制武装勢力が交戦し、反体制武装勢力の戦闘員1人が殺害された。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ジャウバル区、スルターニーヤ地区が砲撃を受けた。

またヒムス市カラービース地区の軍の拠点が反体制武装勢力に襲撃され、軍兵士15人が死亡した。

一方、SANA(1月26日付)によると、カフル・アーヤー村、東ブワイダ市、クサイル市郊外などで軍が反体制武装勢力の拠点を破壊、多数の戦闘員を殺傷した。

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アレッポ県では、SANA(1月26日付)によると、アターリブ市、マンナグ村、カフルアントゥーン市、タッル・アッジャール村、クワイリス市、サフィーラ市、アアザーズ市、マンビジュ市、カフルハムラ村、マーリア市、バーブ市、ズィルバ村、ICARDA地区、ドゥワイリーナ地方などで軍が反体制武装勢力の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線メンバーを含む多数の戦闘員を殺傷、拠点を破壊した。

またアレッポ市では、シャイフ・サイード地区、マアスラーニーヤ地区、ブスターン・カスル地区、カッラーサ地区などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷した。

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ハマー県では、SANA(1月26日付)によると、ブライディージュ村などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殲滅した。

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ダルアー県では、SANA(1月26日付)によると、ラジャート市などで軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷した。

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ラッカ県では、SANA(1月26日付)によると、サウラ市郊外で、軍が反体制武装勢力と交戦し、ジャズィーラの盾大隊のメンバーを含む多数の戦闘員を殲滅した。

諸外国の動き

イランのメフル通信(1月26日付)は、アリー・アクバル・ヴェラヤティー最高指導者国際問題担当顧問が、「レジスタンス政策の強化に関して、シリアは地域においてきわめて重要な役割を果たしている。それゆえ、シリアへの攻撃はイランとその同盟国への攻撃とみなされるだろう」と述べたと報じた。

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ロバート・フォード駐シリア米大使は、トルコのシリア人避難民との面談後、記者団に対して、米国が「軍事的解決ではなく、政治的解決のみがシリアの危機を終わらせると確信している」としつつ、アサド政権が「移行期政府において役割を果たすことはあり得ない」と述べ、政治的解決を事実上否定した。

また「イランは、シリア国民が求める政治的転換にシリアを促すのに役立つような役割を演じていない…。彼らは武器を送り、専門家を派遣している。事実、彼らは革命防衛隊を派遣している」と付言した。

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NATO本部は、トルコ国境地帯に、パトリオット・ミサイル発射台1基の配備が完了したと発表した。

AFP, January 26, 2013、Akhbar al-Sharq, January 26, 2013、al-Hayat, January 27, 2013、Kull-na Shuraka’, January 26, 2013、al-Kurdiya News,
January 26, 2013、Naharnet, January 26, 2013、Reuters, January 26, 2013、SANA,
January 26, 2013などをもとに作成。

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