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国内の暴力
ダマスカス郊外県では、SANA(1月31日付)によると、ダーライヤー市、ドゥーマー市、ハラスター市、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町、ナブク市などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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アレッポ県では、クルディーヤ・ニュース(1月31日付)によると、アレッポ市アシュラフィーヤ地区を軍が空爆し、14人が死亡、42人が負傷した。
複数の目撃者によると、空爆はアシュラフィーヤ公園近くの第1交差点に対して集中的に行われ、空爆と前後して自由シリア軍の戦闘員が軍の戦車を攻撃・破壊した、という。
一方、SANA(1月31日付)によると、アレッポ市カルム・マイサル地区、カースティールー地区、バニー・ザイド地区、ライラムーン地区などで、軍が反体制武装勢力の追撃を続け、アンダーン自由人旅団の指導者を含む多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
シリア・クルド民主統一党(イェキーティー)は声明(2月1日付)を出し、1月31日のアレッポ市アシュラフィーヤ地区での空爆・戦闘によって、党幹部の一人カマール・ムスタファー・ハナーンが死亡したと発表した。
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イドリブ県では、SANA(1月31日付)によると、アルバイーン山、ダフビーヤ地方、ブワイダ地方などで、軍が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。
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ヒムス県では、SANA(1月31日付)によると、ラスタン市東部の反体制武装勢力拠点、またヒムス市スルターニーヤ地区、クサイル市郊外などを軍が攻撃・破壊、多数の戦闘員を殺傷した。
反体制勢力の動き
シリア革命反体制勢力国民連立の政治委員会はカイロで会合を開いた。
『ハヤート』(2月1日付)などによると、会合では、アフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長がアサド政権との条件付きで対話に応じる意思を示したことに議論が集中した。
同報道によると、この会合で、ハティーブ議長は自身の発言が「個人的な意見に過ぎず、(和解)イニシアチブではない」と述べ、連立もこの見解を組織の方針として作用せず、現体制が崩壊するまで対話を行わないとの基本姿勢を確認しなかったという。
また会合に参加したシリア革命評議会のジブル・シューフィーによると、ハティーブ議長は、アサド政権との対話に関して「条件付きであっても対話を提案することが、体制にプレゼントを与えることに等しい」との見解を示したという。
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シリア革命反体制勢力国民連立のムンズィル・マーフース駐フランス代表(大使)は、EURO1(1月31日付)で、「我々はバッシャールの代表と対話の用意がある。可能であれば、政治的解決に至るため、体制内の誰かに権限を移譲してもよい」と述べた。
しかし、アサド大統領自身を含む現政権の首脳については、「戦争犯罪者」であるために対話への参加を認められない、と条件を示した。
また1月31日にアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長が条件つきでアサド政権との対話に応じるとの姿勢を示したことについては、「事態打開への特別な責任を感じているのだろう」と理解を示した。
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トルコのイスタンブールで活動する反体制活動家66人が共同声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長が条件付きでアサド政権と対話に応じる意思を示したことを「正しい方針」と評価し、支持を表明した。
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シリア国民変革潮流は声明を出し、クウェートでの国連主催のシリア支援国会議参加国への人道資金援助に謝意を示した。
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ロイター通信(1月31日付)は、ダイル・ザウル県マヤーディーン市(人口54,000人)を占拠する武装勢力のなかで、シャームの民のヌスラ戦線が影響力を増している、と報じた。
同報道によると、ヌスラ戦線は、女性のズボン着用禁止、酒類販売禁止、子供への宗教教育、シリアでのカリフ制樹立の主唱、民主化を求める人々への脅迫などを行っている、という。
なお同報道によると、シリア国内で反体制武装活動を行う戦闘員の数は約8,000人いるのだという。
諸外国の動き
サウジアラビア日刊紙『ワタン』(1月31日付)は、シリア反体制勢力の信頼できる複数の消息筋の話として、アサド政権がヒズブッラーに化学兵器を供与した、と報じた。
イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆へのシリア国内の対応
シリアの外務在外居住者省は、イスラエルによるシリアへの越境空爆に関して、イクバル・サンガUNDOF司令官を呼び出し、イスラエルとの停戦合意(1974年)への違反への抗議の意を正式に伝え、再発防止のために必要な措置を講じるよう求めた。SANA(1月31日付)が報じた。
また国連安保理議長、事務総長宛てに書簡を提出し、そのなかでイスラエルによるシリアへの越境空爆を「中東地域の安定と安定、国際の平和に深刻な危険となるイスラエルの攻撃を防ぐという責任を果たすことに安保理は失敗した」と非難したうえで、「自衛権、領土と主権を防衛する義務をシリアは有する」と表明した。
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ワーイル・ハルキー首相は緊急閣議を開き、イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆への対応を協議した。SANA(1月31日付)が報じた。
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シリア人民議会は声明を出し、イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆を強く非難した。SANA(1月31日付)が報じた。
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SANA(1月31日付)によると、シリア国内では、与党のバアス党シリア地域指導部、アラブ社会主義連合党、アラブ社会主義者運動、変革解放人民戦線、人民意思党、シリア民族社会党インティファーダ派、野党のシリア祖国党、シリア民主党が、イスラエル軍戦闘機によるシリア領空侵犯・空爆を非難する声明を発表した。
イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆への在外反体制勢力の対応
シリア革命反体制勢力国民連立は声明を出し、イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆を「今回が初めてでない」としつつ、シリア軍が各地で空爆を続けるなかで「アサドの戦闘機とシオニストの戦闘機を区別…できるのか」と述べ、アサド政権も同様に非難されるべきだとの姿勢を示した。
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シリア国民評議会は声明を出し、イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆を「自由な自己にとって主権侵害を見ることはもっとも困難」だとイスラエルを非難したうえで、イスラエルの攻撃を防げないアサド政権を「祖国防衛に関心がなく、自衛の責任を果たそうともしていない」と糾弾した。
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元軍憲兵隊長で2012年12月に政権を離反したアブドゥルアズィーズ・ジャースィム・シャッラールは、AP(1月31日付)に対して、イスラエル軍戦闘機が空爆したダマスカス郊外県ジャムラーヤー地方の軍科学研究センターに関して、「武器開発で知られているが、化学兵器や非伝統的兵器はない…。しかしイラン人やロシア人が常駐している」と述べた。
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クッルナー・シュラカー(1月31日付)は、住民の証言をもとに、ダマスカス郊外県ジャムラーヤー地方への空爆は、イスラエル軍戦闘機によるものでなく、シリア軍戦闘機による誤爆だと断じた。
同報道によると、シリア軍戦闘機は、軍科学センターを自由シリア軍の拠点と誤認し空爆、その直後、迫撃砲9発が突如としてセンターおよびその周辺に着弾、周辺の軍部隊は何もなかったかのように攻撃を見ていたという。
イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆へのレバノン国内の対応
ヒズブッラーは声明を出し、イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆を「シリアで過去2年起きているが何であるのか、そしてこの国を破壊し、軍を弱体化させることの犯罪的目的を完全に暴露」する行為と非難した。
また国際社会とアラブ諸国に対して、イスラエルの「醜悪な攻撃」を非難するよう呼びかけつつ、「我々は(国際社会やアラブ諸国が)非難と断固たる対応に失敗してきたことに慣れっこだ」と暗に批判した。
イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆への諸外国の対応
ロシア外務省は声明を出し、イスラエルによるシリア領内への越境空爆に関して「重大な懸念」を表明したうえで、情報が正しいということが分かれば非難する、との姿勢を示した。
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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、イスラエルによるシリアへの越境空爆に関して、「アラブ諸国へのイスラエルの攻撃を抑止することに国際社会は責任を負うべき」と主張し、「イスラエルはこの犯罪行為を断行するため、シリアの政治・治安状況の混乱を利用した」と非難した。
また「この攻撃がもたらす結果のすべてにイスラエルは責任を負うべきであり…、シリアには国土、主権を防衛する権利がある」と付言した。
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イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣は、イスラエルによるシリアへの越境空爆に関して、「西洋とシオニストの政策と合致し、安定と治安を回復しようとするシリア国民・政府の成功を妨げるべく行われた…。テロ組織のシオニストの目的は合致している」と非難した。
またホセイン・エミール・アブドゥッラフヤーン外務副大臣は「シリア郊外へのシオニスト政体の攻撃は、テルアビブに深刻な影響をもたらすだろう」と述べた。
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ベン・ロードス米国家安全保障担当補佐官は、イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆に関連して、「シリアはヒズブッラーに武器を供与することで地域をこれ以上不安定化させるべきでない」と述べた。
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国連の潘基文事務総長は声明を出し、イスラエル軍戦闘機によるシリアへの越境空爆に関して、「深い懸念」の意を示し、すべての当事者に自制を求めた。
AFP, January 31, 2013、Akhbar al-Sharq, January 31, 2013、AP, January 31, 2013、al-Hayat, February 1, 2013、Kull-na Shuraka’, January 31, 2013, February 1, 2013、al-Kurdiya
News, January 31, 2013、Naharnet, January 31, 2013、Reuters, January 31,
2013、SANA, January 31, 2013、al-Watan (Riyadh), January 31, 2013などをもとに作成。
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