トルコ軍とダーイシュ(イスラーム国)はシリア人避難民のトルコへの流入を阻止、YPGはトルコ国境にあるダーイシュの主要拠点タッル・アブヤド市に迫る(2015年6月13日)

ラッカ県では、シリア人権監視団によると、トルコ国境に位置するダーイシュ(イスラーム国)の主要拠点の一つタッル・アブヤド市に近いスルーク町を西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のユーフラテスの火山合同作戦司令室が包囲した。

有志連合による空爆援護を受けて行われている人民防衛隊の進軍は、ダーイシュの「首都」であるラッカ市とトルコ国境地帯の「ライフライン」を遮断すべく行われているという。

また人民防衛隊のライドゥール・ハリール報道官によると、スルーク町の包囲を完了したユーフラテスの火山合同作戦司令室の部隊はタッル・アブヤド市に向かって進軍を開始したという。

さらに西クルディスタン移行期民政局人民防衛隊の広報局は、スルーク町一帯でのダーイシュ(イスラーム国)との戦闘で、過去24時間で12カ村、8農場を制圧したと発表した。

マサール・プレス(6月13日付)は、タッル・アブヤド市近郊でのダーイシュと人民防衛隊の戦闘激化を受け、多数のシリア人がトルコ側への避難を試み、タッル・アブヤド市に面するトルコ領内のアクチャカレ国境通行所の有刺鉄線前に押し寄せたが、トルコの治安部隊が、避難民数千人に対して放水や警告射撃を行い、入国を阻止したと伝えた。

al-monitor.com, June 13, 2015

al-monitor.com, June 13, 2015

また、AP(6月13日付)、AFP(6月14日付)などは、タッル・アブヤド市郊外での人民防衛隊とダーイシュの戦闘激化を受けて、トルコ領のアクチャカレ市方面に避難しようとした住民数千人が、トルコ国境警備隊、ダーイシュ(イスラーム国)によってトルコ領内への避難を阻止され、国境に張りめぐらされた有刺鉄線の前で足止めを食らったと伝え、ダーイシュ戦闘員が、トルコ領を背にして、避難民の越境を阻止しようとしている写真を公開した。

ARA News, June 14, 2015

ARA News, June 14, 2015

AP, June 13, 2015

AP, June 13, 2015

なおトルコの複数の高官によると、過去数日間で、タッル・アブヤド市一帯からの避難民1万3,500人をトルコ領内に受け入れているという。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、ダーイシュ(イスラーム国)の支配下にあるフール町一帯をシリア軍が空爆した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ダーイシュ(イスラーム国)の支配下にあるダイル・ハーフィル市をシリア軍が空爆した。

一方、ダーイシュが包囲を続けるクワイリス航空基地近くに、シリア軍のヘリコプターが墜落し、中佐、中尉を含む搭乗員3人が死亡した。

これに関して、ダーイシュ・アレッポ州はシリア軍ヘリコプターを撃墜したと発表した。

Kull-na Shuraka', June 13, 2015

Kull-na Shuraka’, June 13, 2015

他方、複数の活動家によると、マーリア市一帯では、ダーイシュとジハード主義武装集団(シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などアレッポ・ファトフ軍)が交戦し、反体制武装集団はダーイシュによって制圧されていたバッル村を奪還した。

戦闘では、ダーイシュ戦闘員15人、ジハード主義武装集団戦闘員14人が死亡した。

バッル村は、トルコ国境のバーブ・サラーマ国境通行所とアレッポ北部を結ぶ兵站路上に位置しており、シリア人権監視団によると、ダーイシュはこの兵站路を遮断するために攻撃を続けていたという。

このほか、クッルナー・シュラカー(6月13日付)によると、ダーイシュ戦闘員がジャラーブルス市でバイクに乗っていた15歳の青年を射殺した。

また、SANA(6月13日付)によると、アレッポ市東部の航空士官学校一帯で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、ダーイシュ(イスラーム国)の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、クッルナー・シュラカー(6月13日付)によると、タウヒード軍がタルビーサ市でダーイシュ(イスラーム国)の司令官ラーフィド・ターハー氏を逮捕した、と発表した。

一方、SANA(6月13日付)によると、ラッフーム村、ジャズル・ガス採掘所一帯などで、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、ダーイシュ(イスラーム国)の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(6月13日付)によると、マリーイーヤ村一帯、ダイル・ザウル市ウルフィー地区、工業地区、ジュバイラ地区で、シリア軍が反体制武装集団と交戦し、ダーイシュ(イスラーム国)の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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米中央軍(CENTCOM)は、6月13日にシリア、イラク領内のダーイシュ(イスラーム国)拠点などに対して13回の空爆を行ったと発表した。

このうちシリア領内での空爆は1回で、アレッポ市近郊のダーイシュに対して攻撃が行われたという。
AFP, June 13, 2015、AP, June 13, 2015、ARA News, June 13, 2015、Champress, June 13, 2015、al-Hayat, June 14, 2015、Iraqi News, June 13, 2015、Kull-na Shuraka’, June 13, 2015、al-Mada Press, June 13, 2015、Naharnet, June 13, 2015、NNA, June 13, 2015、Reuters, June 13, 2015、SANA, June 13, 2015、UPI, June 13, 2015などをもとに作成。

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