ハモンド英外務相が国連総会で演説「アサドが、移行期の開始時であれ、移行期中であれ、去ることで、傷ついた人々を癒やすことができる」(2015年9月30日)

英国のフィリップ・ハモンド外務大臣は30日、国連総会で一般討論演説を行った。

シリア情勢に関して、ハモンド外務大臣は以下の通り述べた。

「シリアの危機は、暴力的な過激主義…移民問題の双方において世界全体に反響をもたらしている。これらの脅威を恒久的に解決するには、シリアに恒久的な平和と安定をもたらす以外にはない。こうした安定を実現したいのなら、我々は紛争に人道的な影響を及ぼすべくこれまで以上に行動しなければならない。しかしシリアがこの危機から脱するための航路をたどれるようにするには、我々は何よりもまず、シリアがどのように安定へといたるのかをはっきりさせねばならない」。

「シリアを危機に陥れたのはアサド政権だ。平和的に抗議する人々への残虐な弾圧…、「樽爆弾」の無差別使用へといたる民間人に対する無差別攻撃が根本原因だ。アサド政権は、過激主義、とりわけISILが台頭する環境を創り出した。だから、我々はISILというガンを征するためにアサドという毒を飲むべきだとの忠告を拒否する」。

「紛争当初、ジハード主義者を解き放ったのはアサドだ。今でも彼らとの取引を続けているのはアサドだ。アサドの軍はそれ以外の当事者よりも多くの民間人を毎月殺している」。

「アサドは、ISILに戦闘員を勧誘するもっとも重要な戦闘員(sergeants)の一人だ。彼の軍は穏健な反体制派や民間人の拠点を破壊するために照準を合わせいる。ISILと戦うためにアサドと同盟を結ぶいかなる試みもISILを強化し、アサド政権に対するスンナ派抵抗運動の事実上の指導者にしたてあげてしまう」。

「我々はシリア国民に、ISILのテロとアサドの専制から自由な未来を保障しなければならない。なぜなら、シリアは、代議的な政府、すなわちISILと軍事的に戦うために国際社会と行動できる政府を持つことができれば、暴力的な過激主義を圧倒するもっとも有効なパートナーとなり得るからだ」。

「それゆえ、アサドとその取り巻きが今行うことができる最大の貢献とは…、政治的移行を可能とするように退くことであり、それにより内戦が終わり、シリア人がイスラーム過激主義との戦いにおいて一つになることを可能とする」。

「過去数週間、シリア国内の現実は変化した。ロシアの介入が政権の指揮を高め、その能力を高めた。ロシアは、このように公然とアサドを支えるという重責を担っているが…、この間もアサドは自国民に対してテロを続けている。国際社会はロシアに、樽爆弾…、化学兵器の使用を停止させるための影響力をこれまで以上に行使することを期待している」。

「我々は、ロシアがISILに対して武力を行使するとの意思を耳にしてきた。そして我々はこれを歓迎する。しかし…、これと同じ武力を行使して、アサド政権の弾圧に抵抗する穏健な反体制派を攻撃するのであれば、ISILとの戦いにおいて効果的な一員となることは不可能だ」。

「明確に言うのなら、政権を支援する行動は、シリアでISILに対する戦いを効果的に行うことと両立しない。これは道義的な判断ではなく、プラグマティックな判断による」。

「ロシアの空爆の標的は、慎重に選択されていたとは言えない…。シリアで今朝行われた軍事行動がISILとアル=カーイダ系組織に対するもので、アサド政権に抵抗する穏健な反体制派ではない。ロシアは、国際社会に対してそう明言できるかが重要だ」。

「シリア国民はアサドがとどまるか去るかを決めるべきだということも耳にする。しかし、こうしたことは幻想だと言わねばならない。そうした発言は現地の現実を無視している。25万人が死亡し、120万人が難民となった国で公正な選挙などどのようにしてできるのか? 彼らのほとんどは国外にいる」。

「アサドが、移行期の開始時であれ、移行期中であれ、去ることで、傷ついた人々への癒やしを始めることができる。アサド抜きの新たな政府が支配する新たなシリアへといたる政治プロセスに着手することができれば、そのとき反体制派の力をISILと戦うために向けることもできるだろう」。


英国政府ホームページ(2015年9月30日)をもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

カテゴリー: シリア政府の動き, 反体制勢力の動き, 国内の暴力, 諸外国の動き パーマリンク