アサド大統領がイランのテレビ局のインタビューに応じる「トルコ、ヨルダン、カタール、サウジアラビアといった国に圧力をかけ、シリアへのテロリスト、武器、資金の流れを止めることだ…。テロ支援が止まれば、ほとんどの難民はただちに帰国するだろう…。テロを支援する国がいては、政治的解決は実現し得ない」(2015年10月4日)

シリアのアサド大統領はイランのテレビ局ハバル・ネットの単独インタビュー(https://www.youtube.com/watch?v=SSqOCuPfpWk)に応じた。

インタビューにおけるアサド大統領の主な発言は以下の通り:

SANA, October 4, 2015

SANA, October 4, 2015

「私はイランの同胞そして首脳と同じ意見を共有していると考えている。その意見とは、西側の首脳は信頼できないというものだ。もちろん、移行期などに関する彼らの最近の発言について、私は次のようにはっきりと言っておきたい。いかなる外国の首脳もシリアの未来を決定する資格などない。彼らは、将来の政治体制、誰が統治し、誰が統治しないかということを決める資格を持っていない。こうしたことはシリア国民が決定することである。それゆえこうした発言は我々には関係ない」。

「西側の首脳らは喪失状態のなかにおり、暗中模索のなかで視界を失っている。同時に、自分たちが策定し、その目的を達成できなかった計画が失敗したと感じている。もちろん、彼らが実現した唯一の目標は…、シリアのインフラを破壊し、多くの人々に血を流させるというものだ。しかしその代価は高くついた…。シリアでの起きていることに関して、これらの国の政府は自国民に対して嘘をついていたことが明らかになり始めた。そして、彼らはテロに直面するというかたちであれ…、難民問題に直面するというかたちであれ、その代価を払うことになった。難民はシリアからだけでなく、中東のさまざまな地域から押し寄せている。こうした要素すべてが(西側の)姿勢を変化させたのだ」。

「我々が「西側諸国」という概念で呼ぶ国々について話す時、我々はある一つのシステムについて話している。それは、これらの国々には米国という一人の主人がいる、というものだ。これらのすべての国は、米国という指揮者が命じるがままに振る舞っている…。彼らはシリアを弱体化させ…、弱体化した国々が…自らの問題や国内対立に気を取られることを望んでいる…。その典型がパレスチナ問題だ」。

「今日、我々の地域にはさまざまな種類のテロが存在するが、テロ組織がイスラーム教に依拠しているということで、「イスラームのテロ」などと言われるテロが優勢だとされる。もちろん、これらの組織とイスラーム教は無関係だ。だが、この概念こそが今日、もっともよく使用されているのだ。これらの組織は、宗派主義的な反乱につけ込んでいる…。つまり、その最大の被害とは時間とともに社会が分断されていってしまうことにある」。

「サウジアラビアは、民主主義、人権、国民参加の手本と言えるだろうか? いや、この国は、世界レベルでもっとも遅れた最悪の国だ…。一方、エルドアンは、トルコの社会内に亀裂を創り出そうとしている…。この人物(エルドアン)にも、ダウトオールには、いかなる国、世界のどの国民にも忠告できるような立場にない」。

「シリアには改革が必要なことが多くある。また亀裂もある。我々はすべてのシリア人に対してこうした亀裂の責任を負っている…。しかし、シリアで起きていることの実態に目を向けると、我々は外国の要因が大きな意味を持っていることを否定できない。デモに参加するためにカネが支払われてきた…。我々は当初から、デモにおけるすべての要求に対応してきた。デモの多くが信用できず、実態を伴っていないということを知っていたにもかかわらずである…。また、我々は当初から、政治勢力どうしの政治的対話を呼びかけ…、その結果として憲法改正を行った。それによって、危機の原因だと一部の者が主張していた…条文を変更した」。

「西側諸国、そしてそのアジェンダに追随する地域諸国、とりわけトルコ、カタール、サウジアラビアは、大統領の問題に限定して主張を展開する。なぜか? 彼らは問題を個人レベルの問題で推し進めたいからだ。つまり、シリアの問題の原因は、一人の人間にあり、そうすることで、シリアにおいて事態を破壊しようとしているテロリスト、西側諸国、あるいは地域諸国ではなく、一人の人間に責任を押しつけようとしている。それゆえ、もう一度言おう。大統領なども問題はシリア国民と結びついた問題だ…。この人間が残るとシリア国民が決めれば、彼は残るのだ。また彼らが去るべきだと決定すれば、直ちに去らねばならない。外国世論がシリア国民の世論の逆であれば、外国の世論には何の価値もない。それゆえ、我々は、対話を再開し、対話を続けることが…シリア危機の解決策だと言っている」。

大統領は制度を通じて就任し、制度を通じて退任する。憲法を通じて就任し、憲法、法律、選挙を通じて退陣する。これこそが制度だ。大統領はテロで就任したり、退陣したりはしない。混乱のなかで就任したり、退陣したりはしない。外国の意見を通じて就任したりするのではない」。

「当初から、我々はテロと戦うと決めていた。今日、我々はこの原則により強く従っている。当初から、我々は独自に自らの問題を解決すると決めていた。友好国の支援を欲している。これはイラン、ロシア、それ以外の世界の多くの国がしてくれていることだ。しかし、誰も我々の代わりに問題を解決などできない」。

「国家がテロリストと対話するために席を共にすることはない、ということは世界中で自明のことだ…。しかし国家は、ある一つの状況のもとでテロリストと対話ができる。それは対話の目的が武装解除であり、テロ行為を行っていた者たちを国家と法の庇護のもとに復帰させる場合だ。これはシリアで実際に起きていることであり、いわゆる「和解」の名のもと、我々は多くの武装グループと対話を行ってきた」。

「我々は、テロ組織、その最たるものであるダーイシュ(イスラーム国)、シャームの民のヌスラ戦線、そしてアル=カーイダが、我々の地域、そして社会における長く深刻な逸脱によってもたらされた一現象だと見ている…。この逸脱の基礎をなしている現象は、ワッハーブ主義の布教であり、そこではイスラーム教が歪められて解釈されてしまっている…。テロ組織の脅威は非常に大きい。だが、我々が個々の組織と戦っているだけでは不十分だ。もっとも重要なのは、テロをもたらす思想、この思想を弄ぶ国と戦うことだ」。

「テロを支援する国がテロとの戦いを実行することなどできない。これが我々の目にしている有志連合の実態だ。我々が1年半経っても何の成果も目にしていないのはそのためだ。むしろ逆で、我々は逆の結果を目の当たりにしている。我々はテロの拡散を目にしている…。テロを支援してきた国は、テロを隠蔽しようとする。有志連合が真剣であるはずない…。その最たる証拠は…、米国とその同盟諸国がシリアとイラクでテロ、あるいはダーイシュと戦っている一方で、エルドアンとダウトオールの政府はテロリストを支援し、これらテロリストはトルコから越境し、武器、資金、戦闘員を獲得している…。この有志連合は、既存の勢力どうしの間のバランスを作り出すこと以外は何でもするだろう。なぜなら、そうしたバランスがなければ、炎は燃え続け、シリアとイラク、さらには地域の他の国が退廃していくからだ。そしてそれによって、我々みなを数十年、数世代にわたって弱体化させようとしているのだ」。

「もし私がシリアにおけるテロの媒介者だとしたら、イエメンにおけるテロの媒介者は誰だというのか? 私はイエメンにはいない。リビアのテロの媒介者は誰だというのか? イラクのテロの媒介者はどうなのか? 例を挙げるなら、ダーイシュはシリアで生じたのではない。米国が事態を掌握しようとしていた2006年にイラクで発生したのだ」。

「(シリア、イラン、イラク、ロシアによるテロとの戦いのための新たな同盟に関して)成功すると記されねばならない。そうでなければ、我々は地域全体の破壊に直面するだろう…。我々はこの点については信頼している…。テロを支援している諸外国が、テロとの戦いに真剣に参加するのであれば、あるいは少なくともテロリストへの支援を停止するのであれば、そのことは結果の実現を早めることになろう…。しかし、これらの国がテロ支援を続けたとしても…、我々同盟諸国には、ヴィジョンがあり、経験がある…。これらの国は、軍事、治安、情報などといった面で、テロに対して一致団結して戦う。それゆえ間違いなく、この同盟は結果を実現するだろう」。

「彼ら(テロ支援国家)に、テロがいずれあなた方のところに波及すると言いたかったが、すでにテロはこれらの国に波及している。こうした言葉は脅迫でも何でもない…。周知の通り、多数のテロリストが移民のなかに紛れ込んでおり、欧州諸国に潜伏している」。

「シリアとイラクのテロ組織におけるもっとも重要な幹部は欧州出身者だ…。つまりテロには国境はなく、テロをカードとして好きなときに利用することなどできないのだ。私はいつもテロをサソリにたとえている。機会を窺って指してくるサソリをポケットなかにしまっておくことなどできない」。

「我々は敵が何を考えているかを理解せねばならない。危機発生当初から、この戦争は何よりもまず情報戦だったからだ…。外国のメディア(の喧伝)の影響は我々の国にはもはや見られない…。彼ら(欧米諸国のメディア)は自分たちの国の国民を騙すことはできたが、我々を騙すことはできなかった…。国にとって重要な問題があり、自分の国の防衛にあたっている時、他人が何を言おうが関係ない。何よりもまず重要なのは、自分の国を守ることにあり、国民の利益、そして国益を実現することにある」。

「シリア人が難民となることは非常に痛ましいことだ。おそらくシリアの歴史における汚点となり、我々はそれを何十年、何世紀も語り継いでいくことだろう…。しかしより痛ましいのは、西側諸国そして西側メディアが難民問題を利用して、それを自分たちが痛むべき人道的な悲劇だなどとみなすことだ。実際には、欧米諸国こそが、テロ支援を通じてこの惨状を作り出すことにもっとも大きく貢献してきたのだ…。我々が国際機関や諸外国に求めることがあるとすれば、すべての難民がテロ支援を止めて欲しいと求めていること(を伝えること)だと思う。トルコ、ヨルダン、カタール、サウジアラビアといった国に圧力をかけ、シリアへのテロリスト、武器、資金の流れを止めることだ…。シリアの問題の解決は複雑でも何でもない…。テロ支援が止まれば、ほとんどの難民はただちに帰国するだろう」。

「私は国際社会において新たな雰囲気が現れ始めていると思う…。そこでは、シリアの危機への真の解決策を案出することへの圧力が強まっている。事実、この圧力は政治解決という名の下に提起されている。しかし、テロを支援する国がいては、政治的解決は実現し得ない。この二つはパッケージだ。それゆえ、我々はこの圧力が、テロを支援する国への圧力になることを望んでいる…。我々はテロとの戦いと並行して、政治的動きを支援する…我々にとって現在唯一の選択肢は、テロを撲滅することにある。なぜなら、いかなる解決策、あるいは政治的なアイデアを実施するにしても、安定が不可欠だからだ…。テロ撲滅がシリアにおけるあらゆる行動の基礎をなしており、政治的なアイデアはその次に実行される」。

「我々は、旧ソ連、そしてロシアと60年以上の関係がある。しかし、彼らは我々に何かを押しつけようとなど一度もしたことはない…。ロシアと米国の対話はそれゆえ、シリアへの介入のために行われているのではなく…、内政干渉を行おうとする国と…、干渉、覇権、国連決議や国連憲章への違反を阻止しようとする国の対話だ…。ロシアとはシリア情勢の詳細について話合っている…。この関係は完全に透明なものだ」。

「ジュネーブ2会議は、(ジュネーブ合意における)一つの条項のみに依拠していた。それは移行期統治機関に関する条項だ。我々はこの条項を完全に拒否しているが、彼ら(欧米諸国)は、この条項のみを審議し、それをシリア政府…、あるいはシリア国民に押しつけようとした。一方、モスクワ会議では、ジュネーブ合意のすべての条項…が審議されている。そこにはシリアの独立、領土統一、シリア人どうしの対話などが記されている…。それゆえ我々はモスクワ3がジュネーブ3を成功させるために不可欠だと言っている」。

「中国は、軍事的な側面においてテロとの戦いに参加してはいない…。しかし、中国はロシアの役割を支援し、テロとの戦いにおいてはプーチン大統領のイニシアチブを支援している」。

「戦略的と評されるこの関係(シリア、イラン、ヒズブッラーの関係)がなければ…、地域の状況は独立性という点において今日とはまったく異なったものとなっていただろう…。おそらく、独立国、独立した政府、独立した国民はもっと少なくなっていただろう。この枢軸は、自らの権利を守り、独立性を維持する点において秀でている」。

「イラン国民は原則を重んじる国民であり…、イランは忠誠に対しては忠誠をもって応え、信頼に対しては信頼をもって応え、透明性に対しては透明性をもって応えてくれる」。

「真の反体制派とは、国民に帰属しているものだ。反体制派だと自認する者がいるのであれば、我々は彼にこう言いたい。シリア国民の関心に目を向けよ、と。あなたが国民の関心、希望、願いに目を向け、国民の利益のために活動すれば、国民はあなたを自分たちの代表だとみなしてくれるだろう。そしてそれによって、あなたは自分の国において役割を得るだろう…。しかし、外国に追随しているのに自分自身を反体制派だと言う者に対してはこう言いたい。反体制派という言葉は愛国者という意味がある。愛国的でない反体制派などいない。愛国的でない人間は反体制派ではなく、単なる手先だ、と」。

なおインタビュー全文はSANA(http://www.sana.sy/?p=278324)が配信した。

SANA, October 4, 2015、UPI, October 4, 2015などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.

カテゴリー: シリア政府の動き, 反体制勢力の動き, 国内の暴力, 諸外国の動き パーマリンク