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反体制勢力の動き
米国などが主導するシリアの反体制勢力の大会(「ともにシリアのために」会合)に参加したシリア国民評議会とそれ以外の反体制活動家は、「シリア反体制勢力革命諸勢力国民連立」(日本のメディアは「シリア国民連合」と呼称)を結成することで合意した。
『ハヤート』(11月12日付)などによると、合意文書には、シリア国民イニシアチブ構想を提案し、米国の支援のもとに同会議を主導してきたリヤード・サイフ元議員、シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長、シリア・ムスリム同胞団アリー・サドルッディーン・バヤーヌーニー前最高監督者、シリア革命評議会のハイサム・マーリフ代表(暫定政府首班)、リヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相らが署名した。
またクッルナー・シュラカー(11月12日付)によると、シリア反体制勢力革命国民連立には63人が参加(参加予定も含む)した。
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シリア反体制勢力革命国民連立設立合意の全文は以下の通り:
1. シリア国民評議会と本会議に出席したそれ以外の反体制勢力の当事者は、シリア革命反体制勢力国民連立の結成に合意する。同連立のメンバーはシリアのすべての反体制勢力に対して開かれている。同合意はカタールがアラブ連盟との調整のもとに行った呼びかけの成果である。各当事者の代表の比率は内規により連立に明示される。
2. 当事者は、体制の象徴および主柱を打倒し、シリア人に対する犯罪に関与した者への制裁として治安機関を解体することを合意する。
3. 連立は体制とのいかなる対話、交渉をも行わない旨遵守する。
4. 連立は、審議と採択を経て承認される内規を持つ。
5. 連立は、革命軍事書評議会を統合し、それらを最高軍事評議会の傘下に置くべく支援する。
6. 連立は、シリア国民司法委員会を設置し、個別の決定によりその活動組織リストを発する。
7. 連立は、その活動に必要な技術特別諸委員会を設置し、諸委員会の数、発足のしくみ、活動内容などを限定するため個別の決定を発する。
8. 連立は、暫定政府を発足することで、国際的な承認を得る。
9. 連立は、体制打倒後ただちに国民総会の開催を呼びかける。
10. 連立および暫定政府は、国民総会開催と移行政権発足後に連立が発する決定に基づき解体される。
11. 同合意は、各当事者による批准と、シリア問題閣僚委員会(カタールが議長国)によるアラブ連盟への同合意の付託をもってのみ発効する。
全文(アラビア語)はhttp://all4syria.info/Archive/58917を参照。
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クッルナー・シュラカー(11月12日付)によると、シリア革命反体制勢力国民連立の結成合意文書に署名したのは以下の62人(63人)
1. スハイル・アタースィー(シリア革命総合委員会)
2. ウマル・イドリビー(地元調整諸委員会)
3. アフマド・アースィー・ジャルバー(シリア部族革命評議会)
4. ムハンマド・サーブーニー(シリア・ウラマー連盟)
5. サーディク・ジャラール・アズム(シリア作家連盟)
6. ムスタファー・サッバーグ(シリア・ビジネスマン・フォーラム)
7. ハーリス・ナッバハーン(市民権潮流)
8. ハイサム・マーリフ(シリア革命評議会)
9. バッサーム・ユースフ(自由民主シリアのための「ともに」潮流)
10. ヤフヤー・ウカーブ(シリア国民民主ブロック)
11. ハーリド・ハウジャ(トルクメン組織)
12. ズィヤード・ハサン(トルクメン組織)
13. フサイン・アブドゥッラー(トルクメン組織)
14. アブドゥルハキーム・バッシャール(シリア・クルド国民評議会、シリア・クルド民主党、個人として参加)
15. ムスタファー・ウースー(シリア・クルド国民評議会、シリア・クルド・アーザーディー党、個人として参加)
16. ムハンマド・アブドゥー・カッドゥー(シリア・クルド国民評議会)
17. アブドゥルイラーフ・アブドゥルマイーン・ファフド(ヒムス地元評議会)
18. ムスタファー・ナウワーフ・アリー(ラッカ地元評議会)
19. リーマー・フライハーン(スワイダー地元評議会)
20. ジャワード・アブー・ハトブ(ダマスカス郊外地元評議会)
21. リヤード・ハサン(ダイル・ザウル地元評議会)
22. ムーサー・ムハンマド・ハリール(クナイトラ地元評議会)
23. アフマド・ムアーッズ・ハティーブ(ダマスカス地元評議会)
24. ズィヤード・ガッサーン(ラタキア地元評議会)
25. ムハンマド・アブドゥッサラーム・サイイド(タルトゥース地元評議会)
26. ムハンマド・カッダーフ(ダルアー地元評議会)
27. アドナーン・ラフムーン(イドリブ地元評議会)
28. ジャラール・ハーンジー(アレッポ地元評議会)
29. サラーフッディーン・ハマウィー(ハマー地元評議会)
30. ムハンマド・ムスタファー・ムハンマド(ハサカ地元評議会)
31. ハーリード・アブー・サラーフ
32. ヤフチャー・クルディー
33. アリー・サドルッディーン・バヤーヌーニー(シリア・ムスリム同胞団)
34. アブドゥルカリーム・バッカール
35. ナジーブ・ガドバーン
36. タウフィーク・ドゥンヤー
37. ズィヤード・アブー・ハムダーン(ムンタハー・アトラシュの代理人)
38. カマール・ルブワーニー(シリア国民行動グループ)
39. リヤード・サイフ
40. ジョルジュ・サブラー(シリア国民評議会)
41. アブドゥルバースィト・スィーダー(シリア国民評議会)
42. ムハンマド・ファールーク・タイフール(シリア国民評議会/シリア・ムスリム同胞団)
43. ブルハーン・ガルユーン(シリア国民評議会)
44. ナズィール・ハキーム(シリア国民評議会)
45. サミール・ナッシャール(シリア国民評議会)
46. アフマド・ラマダーン(シリア国民評議会)
47. ジャマール・ワルド(シリア国民評議会)
48. フサイン・サイイド(シリア国民評議会)
49. ハーリド・サーリフ(シリア国民評議会)
50. ヒシャーム・ムルーワ(シリア国民評議会)
51. アブドゥルアハド・アスティーフー(シリア国民評議会)
52. サーリム・ムスラト(シリア国民評議会)
53. ナジャーティー・タイヤーラ(シリア国民評議会)
54. バッサーム・イスハーク(シリア国民評議会)
55. ムティーウ・バティーン(シリア国民評議会)
56. ハーリド・ナースィル(シリア国民評議会)
57. ムハンマド・サルミーニー(シリア国民評議会)
58. ルワイユ・サーフィー(シリア国民評議会)
59. ムハンマド・ハドル・ワリー(シリア国民評議会)
60. ハナーン・バルヒー(シリア国民評議会)
61. ワースィル・シャムリー(シリア国民評議会)
62. ミシェル・キールー(シリア民主フォーラム:支持を表明、近く声明を発表)
63. 離反者代表(参加予定)
以上の参加者はほぼ全員が在外活動家。国内で活動する著名な組織・活動家は含まれていない。
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合意文書署名後、シリア革命反体制勢力国民連立のメンバーは、議長、副議長、書記長の選挙を行った。
議長選挙には、ウマイヤ・モスクの元イマームのアフマド・ムアーッズ・ハティーブ(1960年、ダマスカス県生まれ)1人が立候補し、クッルナー・シュラカー(11月11日付)によると、ハティーブが54票を獲得して議長への就任を承認された。
また副議長選挙には、リヤード・サイフとスハイル・アタースィーが立候補し、それぞれ37、32票を獲得、また書記長選挙にはムスタファー・サッバーグが立候補し、28票を獲得した。
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『ハヤート』(11月12日付)によると、シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー前事務局長は、シリア国内で活動するシリア・クルド国民評議会のバッシャール・アミーン事務局長と電話で会談、アミーン事務局長が連立結成の合意文書への署名を48時間猶予したいと申し出ていることを明らかにした。
バースィト前事務局長によると、シリア・クルド国民評議会のメンバーは2人が大会に参加しているが、組織としての参加はしていない、という。
スィーダー前事務局長は、同連立のもとに暫定政府が樹立されれば、国際社会の承認を得るだろう」と述べた。
また暫定政府の閣僚の人数に関しては、「多くはならないだろう」と述べる一方、暫定政府の本部については、「解放区に設置すべく議論が集中的に行われている」と述べた。
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リヤード・サイフ元議員は、シリア国民イニシアチブ構想に関して、「早急に体制を打倒するというすべての戦闘員、革命運動体の努力の統合を支援し、政府の重火器に対する自衛を支援する武器の入手することが目的だ」と述べた。
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シリア国民評議会メンバーでダマスカス宣言シリア国内事務局のサミール・ナッシャール事務局長は、『ハヤート』(11月12日付)に対して、シリア反体制勢力革命国民連立の結成合意文書への署名が「シリアの友連絡グループ諸国…とりわけ米国の圧力のもとに行われた」と批判した。
そのうえで、「我々は署名を留保する…。なぜなら先行きが不明瞭で、バッシャール・アサドの運命を明示していない政治的解決に向けたプログラムへの署名を拒否するからだ…。それは自由シリア軍の支援も明記していない。バッシャール、そして治安機関に代表される彼の組織を打倒すること以外のいかなる政治的解決も受け入れない」と述べた。
また「私は反体制勢力の会合の会場に行くことを拒否した…。ダマスカス宣言は合意への署名を拒否する。また連立の組織形態を拒否する。会場に行くことを拒否した運動体のメンバーは(私以外にも)複数いる」と述べた。
さらに「私はバッシャールがいようといまいと、アサド体制が今と同じような構成で再生産されることを拒否する」と付言した。
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『ハヤート』(11月12日付)は、シリア国民評議会筋が「シリア危機の政治的解決のありようをめぐって、ロシアと米国が相互理解に達しているとの情報をロシアに近い筋から得たと語った」と報じた。
同報道によると、この相互理解とは、①アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表の提案に基づき平和維持軍をシリアに派遣する、②ロシアの意向を反映し、シリア国民評議会に代わる新たな政治的組織を設立する、③アサド大統領の進退についての条件をもうけずにアサド政権と反体制勢力の対話を推し進める、という3点からなる、という。
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クッルナー・シュラカー(11月12日付)は、ナウワーフ・ラーギブ・バシール(ダマスカス宣言事務局メンバー)がトルコからハサカ県ラアス・アイン市に入国し、アドワーン部族のシャイフらと会談した、と報じた。
なおこの会談後、ムハンマド・フルウ・フルウ人民議会議員(ハサカ県選挙区B部門)が離反し、トルコに避難したと報じられたが、事実確認は取れていない。
国内の暴力
イドリブ県では、SANA(11月11日付)によると、軍・治安部隊が反体制武装勢力「残党」に対する掃討作戦を強化した。
同報道によると、サッラ・ズフール村周辺、イドリブ市入り口(サルキーン市に向かう街道)、ハーリム市、サルミーン市南部、タフタナーズ市周辺などで掃討作戦を行い、多数の戦闘員を殺害した、という。
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アレッポ県では、SANA(11月11日付)によると、アレッポ市シャイフ・サイード地区、アグユール地区、ハイダリーヤ地区、ブスターン・カスル地区、ブスターン・バーシャー地区、ライラムーン地区、カフルハムラ村、アターリブ市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力の掃討を行った。
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ダマスカス県では、SANA(11月11日付)によると、タダームン区で、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、複数の戦闘員を殺傷した。
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ダルアー県では、SANA(11月11日付)によると、シャイフ・マスキーン市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、多数の戦闘員を殺傷、逮捕した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(11月11日付)によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦市、外国人戦闘員を含む多数の戦闘員を殺傷した。
国内の動き
アサド大統領は、アドナーン・マフムードを駐イラン・シリア大使に任命した。
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DamasPost(11月11日付)は、ワフダ新聞印刷出版公社のハルフ・ミフターフ社長が情報省情報担当次官に就任した、と報じた。
ミフターフの後任には、イフバーリーヤ・チャンネルのフアード・シュルバジー社長が就任する見込み。
AFP, November 11, 2012、Akhbar al-Sharq, November 11, 2012、DamasPost, November 11, 2012、al-Hayat, November 12, 2012、Kull-na Shuraka’, November 11, 2012, November 12, 2012, November 12, 2012、al-Kurdiya News, November 11, 2012、Naharnet, November 11, 2012、Reuters, November 11, 2012、SANA, November 11, 2012などをもとに作成。
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