2012年11月12日のシリア情勢

反体制勢力をめぐる動き

カタールのドーハで11日晩から未明にかけてシリア革命反体制勢力国民連立発足記念祝賀会が開かれた。

al-Hayat, November 13, 2012

al-Hayat, November 13, 2012

祝賀会には、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣、チュニジアのラフィーク・アブドゥッサラーム外務大臣、アラブ連盟のタラール・アミーン代表、GCCのアブドゥッラティーフ・ブン・ラーシド・ズィヤーニー事務局長、UAEのファーリス・ムハンマド安全保障軍事担当副大臣、米仏英などの代表が出席していた。

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祝賀会で、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、出席した各国代表に対して「アラブ連盟、GCC、欧州の友人、そして米国は、この政体(連立)がすべてのシリア人を代表する唯一の正統な組織であることを切望している。これは我々に対するあなた方の権利である。我々に対するあなた方の権利は、救援だけでない」と述べ、連立の国際承認を求めた。

また、出席したシリアの反体制活動家らに対して、「ハマド・ブン・ハリーファ首長とタミーム・ブン・ハマド皇太子は、シリア国民が望むことを我々が実行するうえで、あなた方の合意が手助けになる、ということを知っている」と述べた。

そのうえで、「出席したすべてのシリアの反対勢力」に「合意は力であるがゆえ、合意し、分裂しない」よう呼びかけ、自身がシリアの反体制勢力の指導者であるかのような傲慢な姿勢を示した。

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GCCのズィヤーニー事務局長は、「GCCはシリア革命反体制勢力国民連立を…シリア国民の正統な代表とみなし承認すると発表する」と述べた。

またシリア国民の要求と希望を実現するため、この組織を支援すると述べ、アラブ諸国、諸外国、国際社会が連立を国際承認することをGCCとして注視していると強調した。

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祝賀会で、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長は、「シリア公民の最大の望みは、安全に暮らし、恐れることなく眠ることだった。しかし、今は体制を根絶することを望んでいる」と断じた。

またシリア革命反体制勢力国民連立の活動に関しては、緊急支援、流血停止、そして体制打倒が最優先事項だと述べた。

さらに「カタール、サウジアラビア、UAE、そしてそのほかのGCC諸国、トルコ、エジプト、リビア、ヨルダン、友好諸国に感謝する」と締めくくった。

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祝賀会で、シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長は「我々は真の救援を必要としている…。我々は我々の子供たちを守るため、パンではなく武器が必要だ。なぜなら体制は武器を増強しているからだ」と述べた。

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『ハヤート』(11月13日付)によると、シリア国民評議会のサミール・ナッジャール財務局長は、「去年3月以降、4000万ドルの支援しか受け取っていない。月1億5000万ドルの支援を約束されたのに」と述べ、西側諸国、湾岸アラブ諸国の支援の少なさを批判した。

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シリア国民評議会は、フェイスブック(11月12日付)で、リビア在住のシリア人のパスポートの更新を開始した、と発表し、新パスポートの写真を公開した。

Akhbār al-Sharq, November 12, 2012

Akhbār al-Sharq, November 12, 2012

諸外国の動き

アラブ連盟はカイロで緊急閣僚級会合を開催し、シリアおよびパレスチナ情勢について協議した。

会合では、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表が、ドーハでのシリアの反体制勢力の大会での成果を踏まえ、シリア危機解決に向けた見通しを示した。

会合には、ナビール・アラビー事務総長、アフマド・ビン・ヒッリー事務副長、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣(シリア問題閣僚委員会)、チュニジアのラフィーク・アブドゥッサラーム外務大臣、レバノンのアドナーン・マンスール外務大臣、そしてブラーヒーミー共同特別が出席した。

またカタールのハマド首相に連れられ、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長とシリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長が連盟本部に入り、会合に参加した。

複数の消息筋によると、会合において、ブラーヒーミー共同特別は、国連安保理常任理事国がシリア危機に関する決議を遵守する必要があると強調した、という。

また複数の消息筋によると、会合に先立って、ハマド首相は、シリア革命反体制勢力国民連立のハティーブ議長をシリアの代表として主席させることを求めたが、カタール以外の国が難色を示した、という。

また会合でも、シリア革命反体制勢力国民連立をシリア政府に代わる代表とすることを事務局に認めさせようとする動きがあったという。

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シリア革命反体制勢力国民連立の発足を受け、米国のマーク・トナー国務省副報道官は声明を出し、「血塗られたアサド体制終焉への道を開く国民連立への支援を早急に命じる」と述べた。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は、シリア革命反体制勢力国民連立の発足を「反体制勢力統合のための不可欠なプロセスにおける重要なステップ」と高く評価し、「全面支援」を行うと述べるとともに、連立の「国際承認のために活動する」との意思を表明した。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣は、シリア革命反体制勢力国民連立の発足を「多様なシリア国民を広範に代表する」ための「重要なステップ」と高く評価するとともに、「暫定移行期間に備え、シリア社会のすべての集団とともにあることを求める」と述べた。

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ドイツ外務省報道官もシリア革命反体制勢力国民連立の発足に関して「アサド体制に代わる満足の行くオルターナティブ」と高く評価した。

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トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長、シリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長と会談した。

会談で両氏の就任を祝福したダウトオール外務大臣は、「シリアの反体制勢力は分裂しており、統合されていない。我々は彼らを支援できない。そう私は話した。しかし、反体制武装勢力は国連、そしてすべての当事者から支援を受けるに値する」と述べた。

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ロシア外務省は声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立の発足に関して「(ロシアにとって)もっとも主要な基準は…こうした連立が、外国の介入を排除し、対話を通じたシリア人による平和的紛争解決を原則として行動する用意があるかという点である…。(ロシアは)、シリア政府と”すべての”反体制勢力との連絡を継続し、建設的な方法に従うよう求める」と発表した。

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『ハヤート』(11月13日付)は、信頼できる複数の消息筋の話として、イランがイスラーム諸国会議機構の第39回外相会合(ジプチ)でのシリアの加盟資格停止撤回を目指している、と報じた。

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アナス・フォー・ラスムセンNATO事務局長はプラハでの会合で「NATOは同盟国であるトルコの防衛のために必要なことを組織として行うだろう…。トルコ防衛を可能とするあらゆる計画が準備されている。我々はそれが抑止力となり、トルコが攻撃に曝されないことを希望している」と述べた。

またドーハでの反体制武装勢力の大会に関して、「分裂した反体制勢力はもちろん問題である。それゆえ、我々は反体制勢力にもっと統合して欲しい」と述べた。

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イスラエル国防軍は声明を出し、占領下のゴラン高原の基地近くの空き地にシリア領内からの迫撃砲が着弾、これを受けイスラエル国防軍が迫撃砲の発射地点に向けて戦車で反撃を行った、と発表した。

そのうえで、「シリアからの発砲にこれ以上寛容であるわけにはいかない。激しく報復するだろう」と付言した。

同声明によると、シリア領からの迫撃砲は、軍・治安部隊と反体制武装勢力の戦闘の流れ弾で、イスラエル国防軍を狙ったものではない、という。

国連のマーティン・ネスィルキー報道官は、「国連は(紛争の)エスカレートの可能性に大いに懸念する」と述べ、シリアとイスラエルの交戦の可能性への懸念を表明した。

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EU災害危機管理課は、赤十字国際委員会と国際赤十字赤新月社連盟に対して、トルコで避難生活を送るシリア人17万人に対する3230万スイス・フラン掃討の緊急支援を行うよう呼びかけた。

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アラブ連盟緊急外相会議がカイロで開かれ、ドーハで結成されたシリア革命反体制勢力国民連立を「シリア国民の意思を代表する正統な代表」とする声明を承認した。

声明の採決には、アルジェリアとイラクが態度を留保し、国連憲章第7章に基づく介入を国連に呼びかけた。またレバノンは、シリア危機と「距離を置く」政策に基づき、声明採決を棄権した。

声明は、シリア革命反体制勢力国民連立に参加しなかった反体制勢力に対して、連立への参加を呼びかけ、シリア国民の諸相のための組織とすることを呼びかけた。また国際機関に対して、シリア革命反体制勢力国民連立の承認を求めた。

さらに、シリア革命反体制勢力国民連立をはじめとする反体制勢力に対して、権力移譲のための平和的解決策案出のため集中的な対話に入るよう呼びかけた。

緊急外相会議には、シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ムアーッズ・ハティーブ議長とシリア国民評議会のジョルジュ・サブラー事務局長が出席した。

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緊急外相会議後、カタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は記者会見を開き、「シリア革命反体制勢力国民連立は、シリアの反体制勢力の正統な代表であり、アラブ連盟の基本的交渉相手だ」と述べた。

ハマド首相によると、シリア革命反体制勢力国民連立の「承認」の形式は、リビア暫定国民評議会の承認と形式に準じている、という。

しかし、GCCが「シリア国民の正統な代表」と承認したのに対して、アラブ連盟外相会議は、「シリア国民の”意思”の正統な代表」とし、シリアにおける体制転換に慎重な周辺諸国に一定の配慮を行った。

国内の暴力

ハサカ県では、シリア人権監視団は声明を出し、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員7人を含む12人がラアス・アイン市に対する軍の空爆で死亡した、と発表した。

空爆は、反体制武装勢力が占拠した政治治安部の施設に対して行われ、空爆では子供1人、女性1人を含む民間人5人も死亡した、という。

対トルコ国境に位置するラアス・アイン市へのシリア軍の空爆・攻撃に対して、トルコ軍は迎撃しなかった。

アナトリア通信(11月12日付)はまた、軍がラアス・アイン市の食品工場を空爆し、シリア人が少なくとも4人死亡、多数が重傷を負ったと報じた。

この工場も、反体制武装勢力が占拠していた。

シリア人権監視団によると、空爆後、戦闘ヘリコプターがラアス・アイン市に対して機銃攻撃を加え、反体制武装勢力が反撃した、という。またその後、空爆が再開されたという。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍がマアッラト・ヌウマーン市への空爆を行う一方、ハーリム市などマアッラト・ヌウマーン市周辺の地域で、軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した。

一方、SANA(11月12日付)によると、ジスル・シュグール市郊外のタッル・ウワイル村、タッル・ハムカ村、ミンタール村、サッラ・ズフール村などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトなどを攻撃し、戦闘員を殲滅した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ブーカマール市が軍の空爆を受けた。

一方、『ハヤート』(11月13日付)によると、反体制武装勢力は、同市のハムダーン空港上空で軍のヘリコプターを撃墜したと証言した(未確認情報)。

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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、軍がディブスィー・アフナーン村を空爆した。

同村は2日前から反体制武装勢力によって包囲されている、という。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、ヤルムーク区での砲撃で7人が死亡した。

一方、SANA(11月12日付)によると、タダームン区で、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、多数の戦闘員を殲滅、米国製の武器弾薬などを押収した。

なお、『バアス』(11月13日付)は、軍・治安部隊がハラスター市の全地区を制圧した、と報じた。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ハスヤー町で反体制武装勢力が軍・治安部隊を要撃し、13人を殺害した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(11月12日付)によると、ハラスター市および同市周辺、ザマルカー町で、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、多数の戦闘員を殺傷した。

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アレッポ県では、SANA(11月12日付)によると、反体制武装勢力がハンダラート空軍基地を襲撃しようとしたが、軍・治安部隊が撃退した。

またアレッポ市、ブスターン・カスル地区、スッカリー地区、カラム・ジャズマーティー地区、ハーラト・シハーディーン地区、ライラムーン地区、カフルハムラ村、カフルナーハー村、バーブ市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力を追撃し、シャームの民のナスラ戦線のメンバーら多数の戦闘員を殺傷した。

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『アフバール』(11月13日付)は、シリア人ジャーナリストのシャリーフ・シハーダが乗った車が「ウマイヤ末裔旅団」によって襲撃され、シハーダが負傷、ドライバーが死亡したと報じた。

クルド民族主義勢力の動き

シリア人権監視団によると、民主連合党の人民防衛隊(YPG)がマーリキーヤ市からの軍・治安部隊の撤退を受け、同市を掌握した。

al-Kurdīya News, November 12, 2012

al-Kurdīya News, November 12, 2012

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クルディーヤ・ニュース(11月12日付)によると、民主連合党の人民防衛隊(YPG)はハサカ県ダイリーク市内の治安施設・拠点を掌握した。

複数の住民によると、同市の治安施設・拠点には長らく、軍・治安要員は部分的にしか駐留しておらず、人民防衛隊は軍・治安部隊から引き継ぐかたちでこれらの施設・拠点に入ったという。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長は、殉教者記念日に合わせてテレビ演説を行った。

演説ではシリア情勢についても触れられ、ウィサーム・ハサン内務治安軍総局情報課長暗殺(10月)をアサド政権やヒズブッラーの犯行と断じる3月14日勢力の姿勢を「それで彼らは何を成し遂げたいのか?」と批判した。

また「我々のシリアに対する姿勢は変化しない。政治的解決がシリア国民の利益になる…。しかし危険なのは、新たな反体制勢力の同盟(シリア革命反体制勢力国民連立)が対話を拒む点でコンセンサスに達した点である。彼らはさらなる破壊を望んでいる。これは米国、イスラエル、一部の性根の悪いアラブ諸国の利益になるだけだ」と述べた。

AFP, November 12, 2012、al-Akhbār, November 13, 2012、Akhbār al-Sharq, November 12, 2012, November 13, 2012、al-Ba’th, November 13, 2012、al-Ḥayāt, November 13, 2012、Kull-nā Shurakā’, November 12, 2012、al-Kurdīya News,
November 12, 2012、Naharnet, November 12, 2012、Reuters, November 12, 2012、SANA,
November 12, 2012などをもとに作成。

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