アレッポ県で反体制武装勢力が「シリアの紛争開始以降初めて」政府軍の航空機を撃墜、日本政府は「シリアの友連絡グループ」会合に先だってシリアへの追加制裁を行うと発表(2012年11月27日)

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国内の動き

日刊紙『ワタン』(11月27日付)は、国連シリア代表部が10月に国連安保理に提出した「各国テロリスト」のリストを「信頼できる筋」から入手したと報じ、その氏名を公表した。

同紙が公表した「外国人テロリスト」は142人で、シリア国内で暴力行為を犯し、殺害された、という。

142人の国籍は18カ国におよび、その内訳はサウジ人47人、リビア人24人、チュニジア人10人、エジプト人9人、カタール人6人、レバノン人5人、アフガニスタン人11人、トルコ人3人、チェチェン人3人、アゼルバイジャン人1人、チャド人1人。

http://www.alwatan.sy/dindex.php?idn=130346

国内の暴力

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルトゥーズ地方の軍の検問所で爆弾が仕掛けられた車が爆発し、軍警察2人が死亡し、また爆発後に軍・治安部隊と反体制武装勢力の間で激しい交戦が行われた。

また、ダハーディール市で処刑された遺体6体が発見された。

このほか、ハジャル・アスワド市で軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した。

一方、SANA(11月27日付)によると、フジャイラ村、ズィヤービーヤ町、フサイニーヤ町、ザマルカー町、ダーライヤー市、ブワイダ市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、外国人戦闘員ら多数の戦闘員を殺傷した。

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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、タダームン区で軍の車輌を狙った爆発があり、女性1人が死亡、またヤルムーク区でも砲撃によって子供1人が死亡した。

さらに工業地区でも即席爆弾が爆発したが、死傷者はなかった。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、ミンタール村の防空大隊基地に反体制武装勢力が突入し、複数の兵士を殺害、捕捉し、23ミリ対空砲6基を含む武器・装備品を奪取した。

この戦闘で、同監視団によると、反体制武装勢力の戦闘員6人が、反体制活動家によると9人が死亡した、という。

その後、シリア人権監視団は、反体制武装勢力がシャイフ・スライマーン防空大隊基地周辺の空爆に参加していた軍ヘリコプターを地対空ミサイルで撃墜したと発表した(未確認情報)。

同監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン書記長によると、反体制武装勢力が地対空ミサイルで航空機を撃墜するのは「シリアの紛争開始以降初めて」で、「同様のロケット数十発を革命家が入手した」という。しかし入手元については不明だという。

ユーチューブ(11月27日付)では、ヘリコプターが現状・墜落する映像がアップされた。映像はヌールッディーン・ザンキー大隊の広報局によって撮影・配信されている。

同大隊はイスラーム主義者から構成され、シャイフ・スライマーン防空大隊基地の攻略を主導している、という。

一方、シリア人権監視団によると、アレッポ市ライラムーン地区などで軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦した。

またアフリーン市では、同監視団によると、西クルディスタン人民議会アフリーン地方のアトゥーフ・アブドゥー議長が「何者か」に襲撃された。

これに対して、SANA(11月27日付)は、アレッポ市サーリヒーン地区、ライラムーン地区、ズィルバ村、ファーフィーン村、ダーラ・イッザ市、カフルナーヤー市、ムスリミーヤ村、バルナタ村、ダイル・ハーフィル市、フライターン市、アンジャーラ村などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した、と報じた。

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ダイル・ザウル県では、SANA(11月27日付)によると、ダイル・ザウル市内各所で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殺傷した。

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ラッカ県では、SANA(11月27日付)によると、サウラ市で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殺傷した。

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ハサカ県では、SANA(11月27日付)によると、ハサカ市郊外で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、外国人戦闘員ら複数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、イドリブ市郊外の軍による砲撃・空爆で5人が死亡、30人が負傷した。

一方、SANA(11月27日付)によると、ムハムバル村、対トルコ国境のアティマ市、ドゥライキーシュ市、ザルズール市などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、外国人戦闘員ら複数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ハマー県では、SANA(11月27日付)によると、アスィーラ村、フワイスィース地方などで軍・治安部隊が反体制武装勢力を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ファーイズィーヤ村で爆発があり、子供3人が死亡、5人が負傷した。またヒムス市ムハージリーン区での砲撃で、1人が死亡した。

一方、SANA(11月27日付)によると、シューマリーヤ村、ファーイズィーヤ村などで軍・治安部隊が反体制武装勢力を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(11月27日付)によるとサフワ村で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、複数の戦闘員を殲滅した。

反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立は、シリア人権委員会のワリード・サフールを駐英国大使に任命したと発表した。

シリア人権委員会はロンドンを拠点とする人権団体・反体制組織。

諸外国の動き

日本政府は、東京での「シリアの友連絡グループ」会合(30日)に先だって、ワーイル・ナーディル・ハルキー首相やアディーブ・マイヤーラ・シリア中央銀行総裁ら36人、シリア石油社など19機関への追加制裁を行うことを発表した。

日本政府は、欧米諸国に追随するかたちで2011年9月にアサド大統領など政権首脳の資産凍結、シリア籍の航空機の領空通過禁止を骨子とする制裁をシリアに対して課してきた。

今回の追加制裁により、日本政府による制裁対象は、シリア政府高官ら59人、35機関となった。

日本政府による制裁は(米国による制裁同様)形式的なもので、シリア経済、さらに国民の生活を圧迫することないが、紛争の一当事者のみを対象としている点で、サラフィー主義武装集団と共闘する反体制武装勢力の暴力を正当化しかねない。

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フランスのローラン・ファビウス外務大臣は声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立に対して120万ユーロの緊急人道支援を行うとことをフランスが決定したと発表した。

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ヒューマン・ライツ・ウォッチは、地元住民の証言やビデオ映像をもとに、ダマスカス郊外県ダイル・アサーフィール市で25日に軍が子供たちが遊んでいる広場にクラスター爆弾を投下し、少なくとも子供11人が死亡、多数が負傷したと発表、非難した。

AFP, November 27, 2012、Akhbar al-Sharq, November 27, 2012、al-Hayat, November 28, 2012、Kull-na Shuraka’, November 27, 2012、al-Kurdiya News, November 27, 2012、Naharnet, November 27, 2012、Reuters, November 27, 2012、SANA, November 27, 2012、al-Watan, November 27, 2012などをもとに作成。

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