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イード・アル=アドハーの休戦をめぐる動き
軍武装部隊総司令部は声明を出し、ブラーヒーミー共同特別代表の休戦案するかたちで、イード・アル=アドハーにあたる10月26日朝から29日まで軍事作戦を停止すると発表した。
同声明によると、イード期間中は以下の反体制活動・破壊活動への「反撃が留保される」。
1. 武装テロ集団による民間人、軍兵士への発砲、公共財産、私有財産への破壊、爆弾が搭載された車による爆破攻撃、しかけ爆弾による爆破攻撃。
2. 武装テロ集団による拠点強化。
3. テロ撲滅に関する国際的な決定を侵害するかたちでの、近隣諸国からシリアへのテロリストの潜入奨励。
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『ハヤート』(10月26日付)は、自由シリア軍の司令官の一人が、ブラーヒーミー共同特別代表の休戦案に従い、休戦を遵守するだろうと述べるとともに、逮捕者の釈放を要求した、と報じた。
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『ハヤート』(10月26日付)は、シリア国内でテロ活動を行うアンサール・シャリーアが、シリア軍が休戦を尊重しないと非難、自らが休戦を遵守することはないだろうとの意思を示した、と報じた。
国内の動き
ハルフ・アッサーウィー選挙最高委員会は、12月1日が投票日の第10期人民議会補欠選挙(アレッポ県、ハサカ県、ハマー県、イドリブ県)の立候補者が109人に達したと発表した。
各選挙区の内訳は、109人のうちA部門からの立候補者は84人、B部門は25人。
アレッポ県諸地域選挙区は44人(A部門が19人、B部門が25人)、イドリブ県が12人(A部門)、ハマー県が19人(A部門)、そしてハサカ県が34人(A部門)。
SANA(10月25日付)によると、立候補受付期間は10月24日に終了した。
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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表はシリア・アラブ・テレビ(10月25日付)に対して、イード・アル=アドハーの休戦を求める国連のプレス向け声明は、諸外国が武装テロ集団を支援しているとのシリアの主張を初めて受け入れた声明だと述べ、高く評価した。
国内の暴力
ダマスカス郊外県では、複数の活動家らによると、カタナー市でギリシャ正教のファーディー・ハッダード司祭が誘拐され、殺害された。AFP(10月25日付)が報じた。
遺体はカタナー市・ダルーシャー村間で発見された。
ハッダード司祭は43歳でカタナー市のマール・イリヤース教会の司祭。
ハッダード司祭の誘拐殺人に関して、反体制組織のアッシリア人権ネットワークは声明を出し、「政府に属する犯罪集団」によって暗殺されたと発表した。
しかしAFP(10月25日付)によると、ハッダード司祭は、10日前にカタナー市で誘拐された医師の釈放と身代金支払いの交渉を行っており、身代金を支払うために誘拐犯らのもとに訪れた際、拉致・殺害された。
誘拐犯は医師釈放に5000万ポンド(70万ドル)を要求、ハッダード司祭はこれを半額にまで減額させたが、ハッダード司祭を拉致した誘拐犯は、司祭釈放の条件として2500万ポンドを新たに要求した、という。
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同じくダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カタナー市の検問所で爆弾が爆発し、兵士4人が殺害された。またダーライヤー市、ハラスター市、ドゥーマー市が砲撃を受けた。
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アレッポ県では、AFP(10月25日付)によると、反体制武装勢力がアレッポ市のアシュラフィーヤ地区に進軍、「同地区の北部を制圧した」。
住民によると、武装勢力は黒い服をまとい、「アッラーの他に神なし」と書かれた黒い鉢巻きを巻いていたという。
彼らはまた狙撃兵を屋上に配置、また機関銃が積まれた車などが地区内に展開、戦闘員の一人は「おまえたちとともにイードを過ごすためにやって来た」と言っていた、という。
シリア人権監視団によると、アシュラフィーヤ地区への軍・治安部隊の砲撃で、7人が死亡した。
同地区はクルド人住民が多く住んでいたが、7月以降の争乱のなかで多くの避難民が押し寄せていた。
こうした状況を踏まえるかたちで、クッルナー・シュラカー(10月25日付)は、アレッポ市アシュラフィーヤ地区のクルド系住民が、自由シリア軍の存在を支持している、と報じた。
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同じくアレッポ県では、AFP(10月25日付)によると、アレッポ市のスィルヤーン地区で軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦した。
シリア人権監視団によると同地区での戦闘は刑事保安局近くでもっとも激しかったという。
一方、SANA(10月25日付)によると、軍・治安部隊がアレッポ市のズフール通りフランス病院、旧市街のスィルヤーン地区、ジュダイダ地区の浄化を完了した。
また軍・治安部隊はアレッポ市のアシュラフィーヤ地区、ハーン・アサル村などで浄化を継続し、多数の戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、タダームン区、カダム区で砲撃があった。
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ラッカ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装勢力がサルーク市近くのラニーン軍事検問所を襲撃し、兵士3人を殺害した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ワーディー・ダイフ軍事基地周辺で軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区が砲撃を受けた。
一方、SANA(10月25日付)によると、軍・治安部隊がレバノンからタッルカラフ市郊外に潜入しようとした反体制武装勢力戦闘員と対峙、撃退した。
またマヒーン町などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」を追撃した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(10月25日付)によると、ダイル・ザウル市ジュバイラ地区などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。また同地区では爆弾が仕掛けられた車が爆発、戦闘員複数が死亡した。
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ダルアー県では、SANA(10月25日付)によると、サムリーン村で、軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」の追撃を行った。
またダマスカス・ダルアー街道で軍・治安部隊が反体制武装勢力と衝突、多数の戦闘員を殺傷した。
クルド民族主義勢力の動き
クッルナー・シュラカー(10月24日付)は、ハサカ県ラアス・アイン市で民主統一党の民兵が軍事パレードを行った。
このパレードは同市の南西35キロに位置するマブルーカ地方の自由シリア軍が進軍したことを受けた動き。
自由シリア軍は約30台の車を連ね、武装して、マブルーカ地方に進軍した、という。
諸外国の動き
ロシア外務省報道官は、記者会見で、米国が「シリアの戦闘員に直接武器供与してはいないが…、こうした供与が行われていることを知っており、調整を行っている」と批判した。
AFP, October 25, 2012、Akhbar al-Sharq, October 25, 2012、al-Hayat, October 26, 2012、Kull-na Shuraka’, October 25, 2012、al-Kurdiya News,
October 25, 2012、Naharnet, October 25, 2012、Reuters, October 25, 2012、SANA,
October 25, 2012などをもとに作成。
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