米軍はYPG主体のシリア民主軍支援強化のために軍専門家数十人の駐留を計画する一方、シリア民主軍に対して「安全保障地帯」でのアル=カーイダ系組織との戦闘停止を要請(2016年1月14日)

『ハヤート』(1月14日付、イブラーヒーム・ハミーディー記者)は、米国がシリア北東部の対トルコ・イラク国境に近いマーリキーヤ市に、米軍専門家数十人を駐留させ、西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍への支援強化を計画していると伝えた。

マーリキーヤ市は現在、西クルディスタン移行期民政局ジャズィーラ地区の実効支配下にある。

同紙によると、バラク・オバマ米大統領はシリア北部および北東部でのシリア民主軍を支援するために米軍顧問をシリア国内に派遣することを決定し、すでにアレッポ県アイン・アラブ市に4人、ハサカ県ルマイラーン町に3人の合わせて7人の顧問を駐留させているという。

ロンドンの西側高官が語ったところによると、米国はマーリキーヤ市内にある農業用飛行場を軍事基地に改築し、そこに米軍専門家を常駐させ、そこから対ダーイシュ戦の前線に彼らを派遣することを計画している、という。

またこれに先だって、数週間前に、米軍はヘリコプターで約50トンの武器、装備をシリア領内に搬入したという。

なお、シリア民主軍はアレッポ県北部のいわゆる「安全地帯」西端に位置するアアザーズ市一帯で、シャームの民のヌスラ戦線、シャーム自由人イスラーム運動などに対する攻勢を強め、同地への包囲網を形成しつつあるが、これを受け、米国は、シリア民主軍に10日間の猶予を与え、これらアル=カーイダ系組織との戦闘を停止し、ダーイシュとの戦いに集中するよう求めているという。

米国の要請は、シリア民主軍によるアアザーズ市一帯での勢力拡大によって、アレッポ市とトルコを結ぶ兵站路が閉鎖され、アレッポ県アフリーン市一帯からラアス・アイン市、ラッカ県タッル・アブヤド市を経て、ハサカ県にいたる国境地帯を西クルディスタン移行期民政局に掌握されることを「レッドライン」とみなすトルコに配慮したものだという。

なお『ハヤート』推計によると、各地で善戦するシリア民主軍は、アフリーン市一帯で約1万人(人民防衛隊約1万人とアラブ人戦闘員約300人)、アイン・アラブ市一帯で約1万人、タッル・アブヤド市一帯とハサカ県で約2万人を擁するという。

AFP, January 13, 2016、AP, January 13, 2016、ARA News, January 13, 2016、Champress, January 13, 2016、al-Hayat, January 14, 2016、Iraqi News, January 13, 2016、Kull-na Shuraka’, January 13, 2016、al-Mada Press, January 13, 2016、Naharnet, January 13, 2016、NNA, January 13, 2016、Reuters, January 13, 2016、SANA, January 13, 2016、UPI, January 13, 2016などをもとに作成。

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