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シリア政府の動き
アサド大統領は、第4次中東戦争戦勝記念日に合わせて、カシオン山中腹にある無名戦士廟を訪れ、献花した。
ファフド・ジャースィム・フライジュ国防大臣ら、軍幹部が同行した。
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ファフド・ジャースィム・フライジュ国防大臣は第4次中東戦争戦勝記念日に合わせて、シリア・アラブ・テレビ(10月6日付)に出演し、「我々は勝利の約束の日の間近にいる」と述べた。
トルコをめぐる動き
トルコや欧米の複数のメディアは、アサド大統領がシリア軍に対トルコ国境から約10キロ離れて展開するよう求めたとし、「シリア・トルコ国境地帯に幅10キロの緩衝地帯が作られるだろう」と報じた。
シリア、トルコ両政府は、この報道にコメントしていない。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、数時間の戦闘の末、反体制武装勢力が対トルコ国境のヒルバト・ジャウズ村を制圧した。
この戦闘では、軍・治安部隊の兵士25人が殺害され、数十人が負傷、反体制武装勢力の戦闘員も3人死亡した、という。
ヒルバト・ジャウズ村に面するハタイ県のギュヴェッチ(Güveççi)村には、早朝、シリア領からの迫撃砲が2発着弾した。
迫撃砲はトルコ領内50メートルの地点に着弾した。
犠牲者は出なかったが、ハタイ県の発表によると、トルコ軍が直ちに迫撃砲4発を発射し、反撃した。
またシリア軍は国境近くに展開する反体制武装勢力に砲撃したという。
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SANA(10月6日付)によると、イドリブ県北部で軍・治安部隊が反態勢武装勢力のアジトを攻撃し、多数の戦闘員を殺害、装備を破壊した。
国内の暴力
ヒムス県では、シリア人権監視団によると、タイバ村への軍・治安部隊の砲撃により、反体制武装集団6人を含む20人が「殉教」した。
同市の住民のほとんどは既に避難していたという。
またヒムス市のハーリディーヤ地区への軍・治安部隊の砲撃も続いた。
一方、SANA(10月6日付)によると、ジュースィヤ村一帯、ダイル・バアルバ地方などで軍・治安部隊が反体制武装勢力に対する特殊作戦を行い、戦闘員多数を殺傷した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市スッカリー地区、アーミリーヤ地区、マルジャ地区、マサーキン・ハナーヌー地区、フィルドゥース地区、サーリヒーン地区が砲撃を受けた。
一方、SANA(10月6日付)によると、アレッポ市カスル・ブスターン地区で、軍・治安部隊が特殊作戦を実施、トルコ人4人を含む多数のテロリストを殲滅した。
またフィルドゥース地区、ブスターン・バーシャー地区、シャイフ・ヒドル地区でも同様の作戦を実施したほか、シャイフ・サイード地区、ブスターン・バーシャー地区、ダウワール・ブアイディーン地区、ダウワール・マルジャ地区、ダウワール・カーディー・アスカル地区などで、反体制武装勢力の拠点を攻撃し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、グータ地方東部で軍・治安部隊の砲撃が続いた。
一方、SANA(10月6日付)によると、クドスィーヤー市で軍・治安部隊が反体制武装勢力の残党を追撃、ウマリー・モスクやバラダー・ビールの工場で、武器弾薬、麻薬を押収した。
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ダイル・ザウル県では、SANA(10月6日付)によると、ダイル・ザウル市各所で軍・治安部隊が反体制武装勢力の「浄化」を継続した。
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ダルアー県では、SANA(10月6日付)によると、軍・治安部隊がムサイフラ町、カラク村などで反体制武装勢力の「残党」を追撃し、多数の戦闘員を殺傷した。
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『クッルナー・シュラカー』(10月6日付)は、ムハンマド・アサド暴行事件に関連して、弾圧を受けるラタキア県カルダーハ市のイスマーイーリー家が反体制運動に与することを決定したと報じた。
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『クッルナー・シュラカー』(10月6日付)は、ハールーン・アサド(大統領の従兄弟)が殺害された、とドゥライド・アサド弁護士がフェイスブックに綴ったと報じた。
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ダマスカス県では、晩に、ファハーマ地区のハーリド・ブン・ワリード通りで、爆弾が仕掛けられた車が爆発した。シリア・アラブ・テレビ(10月6日付)が速報で報じた。
シリア人権監視団によると、県南部のハーリド・ブン・ワリード通りに位置する警察署で爆発音が聞こえ、その後激しい銃声が鳴り響いた。
爆発の発生後、現場に至道路は閉鎖され、被害状況は不明だという。
一方、SANA(10月7日付)は、この爆発で警官1人が死亡した、と報じた。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=v87jbMP_Dms
反体制勢力の動き
自由シリア軍(バッラー大隊)は、シリア軍がグータ東部から48時間以内に撤退しなければ、自らが拉致しているイラン人革命防衛隊元隊員(巡礼者)48人を1人ずつ殺すと脅迫した。
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ダマスカス郊外県グータ東部の空軍基地(第55師団第591防空大隊本部)襲撃(4日)に関して、自由シリア軍シャーム自由人大隊は声明を出し、イマーム・フサイン大隊との合同作戦で、コブラ・ミサイル(地対空ミサイル)を含むすべての兵器・弾薬を獲得、基地内の全員を捕捉した、と発表した。
http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=VDmeX5cy70c
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『クッルナー・シュラカー』(10月6日付)は、シリア・ビジネスマン評議会が、シリア国民評議会に参加しないと正式に回答した、と報じた。
クルド民族主義勢力の動き
Syria Steps(10月6日付)は、PKKのアブドゥッラ・オジャラン前党首が、シリアの治安を乱すいかなる者も許さないとしたうえで、アサド政権のために4,000人の殉教者を擁していると述べたと報じた。
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クルド最高委員会は声明を出し、カーミシュリー市などでの学校閉鎖に関して、ハサカ県知事、教育局長との面談を行うための使節団を結成・派遣しないと発表し、アサド政権の正統性を否定しているとの姿勢を明示した。
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『クッルナー・シュラカー』(10月6日付)は、軍・治安部隊の部分撤退を受け、アレッポ県アイン・アラブ市および郊外で大麻の栽培が活発になっている、と報じた。
複数のクルド人活動家によると、同地域における麻薬栽培の道義的責任は民主統一党にあるという。
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サウジ日刊紙『アッカーズ』(10月6日付)は、信頼できるクルド消息筋の話として、シリア・クルド国民評議会と西クルディスタン人民議会が、合同治安委員会の設置を協議していると報じた。
同報道によると、西クルディスタン人民議会を指導する民主統一党が難色を示している、という。
またシリア・クルド・イェキーティー党の消息筋によると、クルド人の武装組織結成の動きが顕在化している、という。
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『クッルナー・シュラカー』(10月6日付)は、シリア・クルド国民評議会事務局メンバー兼シリア・クルド青年運動メンバーのクーハドルズ・タマルと同僚2人が、イラクからの帰路で逮捕されたと報じた。
3人は民主統一党の人民保護委員会の制圧地域で逮捕されたという。
諸外国の動き
SANA(10月6日付)は、ロシア政府からの人道支援物資24トンが到着した、と報じた。
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イラン外務省は、シリアで8月に拉致されたイラン人巡礼者(革命防衛隊元隊員)48人の即時釈放を求めた。
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トルコのタネル・ユルドゥズ・エネルギー天然資源大臣は、シリアからの迫撃砲着弾に関して、「シリア国民は無罪」と述べ、電力供給を続けると発表した。
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ヒラリー・クリントン米国務長官は、トルコ領内へのシリア軍の迫撃砲着弾に関して、「諸外国はアサド政権に発砲停止と政治的移行期間開始を説得すべき」と述べた。
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パレスチナのハマースのムシール・ミスリーは「ハマースは不正と専制に抵抗する革命的人民の意思を支持する」と述べた。
AFP, October 6, 2012、Akhbar al-Sharq, October 6, 2012、al-ʻAkkaz, October 6, 2012、al-Hayat, October 7, 2012、Kull-na Shurakaʼ, October 6, 2012、al-Kurdiya News, October
6, 2012、Naharnet.com, October 6, 2012、Reuters, October 6, 2012、SANA, October
6, 2012、Syria Steps, October 6, 2012, October 7, 2012などをもとに作成。
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