国連安保理でトルコによるシリアへの越境砲撃や「テロ支援」停止を求めるロシア提案の決議案が米英仏の反対で廃案に(2016年2月20日)

国連安保理で、トルコによるシリアへの越境砲撃、地上部隊派遣の脅迫、外国人テロリスト支援の停止を求める国連安保理決議案(ロシア提出)が審議されたが、米国、英国、フランスの反対によって廃案となった。

決議案では、トルコなどがシリアへの地上部隊派遣を準備していることに多大なる懸念を表明、シリアの主権尊重、越境砲撃の停止、地上部隊派遣計画の停止を求めるとともに、加盟国に対して、外国人テロリストのシリア領内への潜入阻止を呼びかけていた。

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は「決議案が拒否されたことに対して遺憾の意を表明する以外にない」としつつ、「シリアの安定と領土の統一性を保障するための政策を継続する」と述べた。

またロシアのヴラジミール・ヴォロンコフ国連副大使は、安保理が「プロパガンダの場と化した」としたうえで「決議案を拒否した国々はそれがロシアの案だというだけで拒否した」と非難し、「決議案は国連安保理での諸決議、ウィーンやミュンヘンでの合意に沿って、シリアでの地上部隊介入の試みを阻止する」ことをめざしていたと強調した。

一方、サマンサ・パワー米国連大使は、決議案を拒否した理由として「シリアでのロシア軍の空爆に対する見方を無実化し、国連安保理決議第2254号の不履行を招く」からだと述べた。

トルコのハレド・シャフィク国連大使は会合後の記者会見で、「トルコは、有志連合に参加するか、国連安保理決議が定めなければ、シリアへの単独での介入を行うと決定することはない」としたうえで、シリア領内への越境砲撃が国際法に準じた「自衛行為」だと述べた。

また「トルコはシリア領内から発砲を受けており、我々は適切なかたちでそれに報復している」と主張した。

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EU各国首脳は、ブリュッセルでの首脳会議後に共同声明を出し、シリア政府とその同盟者に対してテロリストでない反体制組織への攻撃を直ちに停止」するよう求め、こうした攻撃が「和平の可能性を脅かし、ダーイシュ(イスラーム国)を利し、難民危機を増大させる」と警鐘を鳴らした。

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フランスのフランソワ・オランド大統領は声明を出し、シリア軍と西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍が包囲するアレッポ市の人道状況に懸念を表明した。

AFP, February 20, 2016、AP, February 20, 2016、ARA News, February 20, 2016、Champress, February 20, 2016、al-Hayat, February 21, 2016、Iraqi News, February 20, 2016、Kull-na Shuraka’, February 20, 2016、al-Mada Press, February 20, 2016、Naharnet, February 20, 2016、NNA, February 20, 2016、Reuters, February 20, 2016、SANA, February 20, 2016、UPI, February 20, 2016などをもとに作成。

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