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シリア政府の動き
国連総会出席のため訪米中のワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣は、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表と会談し、事態収拾の成否は、テロリストへの教練・武器供与の抑止にかかっていると伝えるとともに、シリア人への制裁解除の必要を強調した。
またムアッリム外務在外居住者大臣は、トーゴ、レバノンの外相と会談した。
SANA(9月29日付)が報じた。
アレッポ市での「決戦」
アレッポ県では、シリア人権監視団によると、バーブ・アンターキヤー(アンタキヤ門)地区、ジュルーム地区、バーブ・ジュナイン地区、シャイフ・ヒドル地区周辺、ブスターン・バーシャー地区周辺、マイダーン地区、イザーア地区、サラーフッディーン地区、サーフール地区、ブスターン・カスル地区、カッラーサ地区、アアザミーヤ地区などに軍・治安部隊が砲撃し、反体制武装勢力と激しく交戦した。
シリア人権監視団によると、戦闘は反体制武装勢力が進軍を試みたことで激化した。
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UNESCOで世界文化遺産されているアレッポ市旧市街の一区画で火災が発生した。
『ハヤート』(9月30日付)は、複数の活動家の話として、火災は28日夜から29日未明にかけての反体制武装勢力と軍・治安部隊の砲撃・発砲により発生したと報じた。
シリア人権監視団によると200件、反体制活動家によると700から1,000件の商店が焼失した、という。
火災発生前に軍・治安部隊と反体制武装勢力は旧市街のアンタキヤ門で激しく交戦していた。
反体制武装勢力の複数の戦闘員は、この戦闘でアンタキヤ門を制圧したと述べたが、別の戦闘員によると戦闘は続いており、反体制武装勢力も軍・治安部隊も門を制圧していない、という。
シリア人権監視団によると、軍・治安部隊と反体制勢力の双方が出火の原因をめぐって非難を応酬している、という。
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一方、SANA(2012年9月29日付)によると、アレッポ市カッラーサ地区、バーブ・ナイラブ地区、ブスターン・カスル地区、バーブ・ハディード地区、マサーキン・ハナーヌー地区、マルジャ地区、サーフール地区、アーミリーヤ地区、タッル・ザラーズィール地区などで軍・治安部隊が反体制武装勢力の拠点・アジトを攻撃し、多数の戦闘員を殺傷、武器弾薬を押収した。
またアサド湖で反対武装勢力の船舶4隻を破壊した。
このほかワディーヒー村、カフルダーイル村などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員を殺傷、装備を破壊した。
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SANA(2012年9月29日付)によると、サクラーヤー村で武装テロ集団に反対するデモが発生し、反体制武装勢力が発砲し、排除した。
その他の国内の暴力
ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、アサーリー地区バルザ区で軍・治安部隊が反体制武装勢力追跡のために展開、激しく交戦したという。
またカーブーン区では家々が軍によって破壊され、バサーティーン・バルザ区では恣意的逮捕が行われている、という。
一方、SANA(2012年9月29日付)によると、ジャウバル区、カーブーン区、バルザ区で軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトを攻撃、多数の戦闘員を逮捕、武器弾薬などを押収した。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ハラスター市、フーシュ・アラブ村、ランクース市、東グータ地方で、軍・治安部隊が砲撃を行った、という。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ムザイリーブ町で軍・治安部隊が要撃を受け、兵士3人が殺害された。
またムザイリーブ町・タッル・シハーブ町間で軍・治安部隊と反体制武装勢力が激しく交戦した。
一方、SANA(2012年9月29日付)によると、ムザイリーブ町および周辺で軍・治安部隊が反体制武装勢力の追撃、多数の戦闘員を殺傷した。
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ヒムス県では、SANA(2012年9月29日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、ラスタン市、クサイル市郊外などで軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
またタッルカラフ市郊外で、レバノンからの潜入を試みた反体制武装勢力戦闘員を軍・治安部隊が撃退した。
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ラッカ県では、SANA(2012年9月29日付)によると、タッル・アブヤド市郊外の反体制武装勢力拠点を軍・治安部隊が破壊した。
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イドリブ県では、SANA(2012年9月29日付)によると、タフタナーズ市近郊の武装集団を軍・治安部隊が殲滅した。
反体制勢力の動き
ロンドンに拠点を置く反体制組織のシリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン代表は、AFP(9月29日付)に対し、ダマスカス県・ダマスカス郊外県での軍・治安部隊が「革命戦闘部隊戦闘員が存在を強めた」のを受けて激化したと述べた。
また反体制武装勢力について、「厳戒態勢のなかでもダマスカスで活動でき、政府が反体制勢力を根絶できないことを政府に示そうとしている」と述べた。
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アンマンに家族だけを連れて脱走したリヤード・ファリード・ヒジャーブ前首相はテレビ局のインタビューに応じ、アサド大統領が「治安対策は非論理的・非客観的」だとするバアス党地域指導部メンバーの意見を却下し、弾圧を続けた、と述べた(真偽は定かでない)。
また軍による「樽爆弾」などを用いた空爆を非難した。
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『クッルナー・シュラカー』(9月29日付)は、反体制武装勢力で活動を行う女性戦闘員の写真を掲載した。
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「アフバール・シャルク」(9月30日付)は、シリア・ムスリム同胞団、イスラーム教徒ウラマー連盟、国民民主潮流、シリア解放ウラマー協会など24のイスラーム組織が「シリア改革連合」なる政治同盟を結成したと報じた。
同報道によると、29日にカイロで結成大会が開かれ、最高機関である諮問(シューラー)評議会議長にはムーサー・イブラーヒームが就任した。
イブラーヒーム議長は、国内のすべての活動家のための統一ビジョンの作成をめざし、革命への寄与、国民へのサービス提供、情報活動などを行う、という。
またシリア国民評議会との共同行動を行う一方、現下の状況における暫定政府発足にはメリットがないと拒否し、体制打倒後に発足すべきとの立場を示した。
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Elaph(9月29日付)は、自由シリア軍のリヤード・アスアド大佐がトルコからシリア国内への司令部移転を発表した声明に関して、クルド民族主義勢力によるトルコ国内での武装闘争激化を受け、トルコ政府が支援を断念したことが背景にあると報じた。
同報道は、自由シリア軍に近いカイロの活動家の話として、この移転に際して、トルコ軍内のアレヴィー派の幹部が政府に強い圧力をかけたと指摘した。
諸外国の動き
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は国連総会で演説し、シリア国内の紛争激化への懸念を表明し、政府と反体制勢力に即時停戦と交渉のテーブルにつくことを受け入れさせ、事態すべてのシリア人が満足するような改革の内容にいたるための国際社会の努力を調整すべきだと主張した。
また「ジュネーブ合意の実施に反対する者は…、政府だけが停戦することに固執し、反体制勢力に作戦強化を促し、流血を深刻化させている」と非難した。
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イランのアリー・アクバル・ヴェラーヤティー外務担当上級顧問はイラン・イスラーム共和国通信(9月29日付)に対して、アサド大統領が「蜂起を打ち負かし、米国とその同盟国への勝利を実現し、それがイランにとっての勝利ともなろう」と述べた。
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CNN Turk(9月29日付)によると、国連総会出席のため米国滞在中のアフメト・ダウトオール外務大臣は、ニューヨークで記者団に対して、シリアからの迫撃砲着弾に関して「我が国国境へのこのような侵害が続くなら、我々は(報復)権利を保持し、この権利を行使することになるだろう」と述べた。
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UAEのアブドゥッラー外務大臣は国連総会で演説し、シリア政府が「正統性を失った」と発言した。
AFP, September 29, 2012、Akhbar al-Sharq, September 29, 2012, September 30, 2012、Elaph, September 29, 2012、al-Hayat, September 30, 2012、Kull-na Shurakaʼ, September 29, 2012、al-Kurdiya News,
September 29, 2012、Naharnet.com, September 29, 2012、Reuters, September
9, 2012、SANA, September 29, 2012、Syria News, September 29, 2012などをもとに作成。
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