2012年9月20日のシリア情勢

シリア政府の動き

アリー・ハイダル国民和解問題担当国務大臣は、記者会見を開き、紛争解決に向けた政治プロセスが「結晶化を始め、近日中にその結果が現れるだろう」と述べた。

また「今日行われるべきもっとも重要なことは、排他的政治とは無縁の前提条件なき対話を受け入れることである」と強調した。

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シリアのバッシャール・ジャアファリー国連代表は、子どもと紛争問題に関する国連特使のレイラ・ゼルギィーが国連安保理に提出した事務総長報告に関して、安保理会合で、誤ったな情報を含んでいることへの懸念を表明するとともに、プロフェッショナリズムを欠き、煽動目的で欠かれていると批判した。

SANA(9月20日付)が報じた。

国内の暴力

ラッカ県では、シリア人権監視団(9月20日付)によると、アイン・イーサー市のガソリン・スタンドが爆破され、少なくとも30人が死亡、80人以上が負傷した。クルディーヤ・ニューズ(9月20日付)によると、死者数は約70人。

al-Ḥayāt, September 21, 2012

al-Ḥayāt, September 21, 2012

アブー・ムアーイヤを名のる活動家は、AFP(9月20日付)に対して、爆破は軍の空爆によるもので、「同地域で唯一燃料を販売しているヒシャーム・ステーションに爆弾が投下された」と証言した。

一方、SANA(9月20日付)によると、軍・治安部隊がタッル・アブヤド市で反体制武装勢力と交戦し、戦闘員10人を殺害した。

またラッカ市郊外のラシード農園、スカイルー村近くで軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した。

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ダマスカス県、ダマスカス郊外県では、シリア・アラブ・テレビ(9月20日付)によると、ヤルムーク区に軍・治安部隊が反体制武装勢力掃討のために突入し、100人以上を逮捕、また複数が殺害された。

またハジャル・アスワド市で軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトに突入するなどして交戦し、戦闘員多数を殺傷、逮捕した、という。

アブー・サラームなる活動家はロイター(9月20日付)に対して、「我々は(ヤルムーク区で)包囲されている。子供、老人、女しかいない…。反体制勢力の戦闘員の男女も包囲されている」と述べた。

また彼によると、ヤルムーク区では少なくとも3人が射殺された、という。

一方、シリア国民評議会は声明を出し、ハジャル・アスワド市、ヤルムーク区が砲撃に曝されていると発表した。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市のブスターン・カスル地区、マルジャ地区、サーリヒーン地区、フィルドゥース地区などが軍・治安部隊の激しい砲撃に曝された。

一方、AFP(9月20日付)は、軍消息筋の話として、アレッポ市カッラーサ地区ジャマールモスク周辺で、軍・治安部隊が反体制武装勢力の大規模な拠点に対して砲撃を加えた、と報じた。

また共和国護衛隊がアルクーブ地区、サーフール地区へと進軍を続けたという。

このほか複数の住民によると、アレッポ市のバーブ街道が空爆を受けた。

SANA, September 20, 2012

SANA, September 20, 2012

これに対して、SANA(9月20日付)は、軍・治安部隊がアレッポ市(ブスターン・カスル地区、ハナーヌー地区、ジュダイダ地区、アルクーブ地区、ブスターン・アルーバーシャー地区)、バーブ市、アフタリーン市、アアザーズ市、フライターン市、マンビジュ市、サジュダーン市、マーリア市、カフルハムラ村などで、反体制武装勢力と交戦し、外国人戦闘員を含む多数を殺害、彼らが使用していた車輌、装備を破壊したと報じた。

アレッポ市ブスターン・カスル地区では、フィダー・アラビー学校近くに布陣していたアフガン人戦闘員100人以上を殺害した、という。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市バアルバ地区が砲撃を受けたほか、タルビーサ市、ラスタン市で軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦した。

一方、SANA(9月20日付)によると、スルターニーヤ市、タルビーサ市、タッル・サクラジャ村(クサイル市郊外)、ナキーラ市など軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、多数の戦闘員を殺傷、大量の武器弾薬を押収した。

またタッルカラフ市郊外では、レバノンからの潜入を試みる戦闘員を国境警備隊が撃退した。

al-Ḥayāt, September 21, 2012

al-Ḥayāt, September 21, 2012

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ダルアー県では、SANA(9月20日付)によると、宗教関係局のムアンマル・シハーダート長が武装テロ集団に誘拐された。

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スワイダー県では、SANA(9月20日付)によると、県軍住宅機構のマルワーン・フサイン生産課長が武装テロ集団に暗殺された。

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イドリブ県では、SANA(9月20日付)によると、イドリブ市内やビンニシュ市・タウーム市間の街道など各地で、軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員多数を殺傷、乗っていた車輌を破壊した。

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クルディーヤ・ニューズ(9月20日付)は、ハサカ県ラアス・アイン市でシリア・クルド国民評議会のマフムード・ワーリー氏(評議会事務局メンバー)が何者かに暗殺された、と報じた。

シリア・クルド青年調整連合は、政府軍・シャッビーハの犯行と断じた。

一方、「アフバール・シャルク」(9月21日付)は、シリア・クルド国民評議会のマフムード・ワーリー氏暗殺に関して、複数の活動家がPKK系の民主連合党の犯行だと疑っていると報じた。

反体制勢力の動き

シャームの民のヌスラ戦線はインターネットを通じてビデオ声明を出し、8月にハマー県ムハルダ市で遠隔操作した自動車に爆弾を仕掛けて、「シャッビーハ」の拠点を攻撃した、と発表した。

映像には「シャッビーハ」が拠点としていたと思われる学校に向かってムハルダ市の高速道路上を走り、爆発する車が撮っていた。

ビデオ声明によると、これにより162人以上の「シャッビーハ」が死亡した、という。

8月末の映像を今になって公開した理由、犯行の真偽は定かでない。

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シリア・ムスリム同胞団のムハンマド・リヤード・シャカファ最高監督者は『ジュムフリイェト』(9月20日付)に対して、「クルド人はシリア北部でマイノリティに過ぎず…、同地の人口の5%を占めるに過ぎない」としたうえで、「シリアにおいてクルド人の政体が作られることを拒否する」と述べた。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会のハイサム・マンナーア在外局長はAKI(9月20日付)に対して、軍の発砲停止、逮捕者釈放、平和的デモ認可、弾圧の責任者の処罰が、紛争和解に向けた政治的プロセスを行ううえでの「不可欠な条件」だと述べた。

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AFP(9月21日付)は、民主的変革諸勢力国民調整委員会のメンバー3人が何者かに誘拐された、と報じた。

委員会在外局の声明によると、誘拐されたのは、中国訪問を終え帰国したアブドゥルアズィーズ・ハイイル渉外局長、イヤース・アイヤーシュ執行委員(アラブ社会主義者運動幹部)の2人と、この2人を出迎えたマーヒル・タッハーンの3人。

3人はダマスカス国際空港を出たあと、連絡を絶ったという。

事件に関して、民主的変革諸勢力国民調整委員会は広報局長の名で声明を出し、中国から帰国した使節団は2台の車に分乗、1台目にはハサン・アブドゥルアズィーム代表、マフムード・マルイー氏が、2台目にはハイイル、アイヤーシュ、タッハーンが乗り、午後5時15分頃に空港を出発、その後2台目の車だけが失踪したことを明らかにした。

またSANA(9月21日付)は、「武装テロ集団」が誘拐したと報じた。

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ユーチューブ(9月20日付)で、キリスト教徒離反兵がダマスカス郊外県で「アンサールッラー大隊」という名の部隊の結成を宣言する映像がアップされた。

Youtube, September 20, 2012

Youtube, September 20, 2012

http://www.youtube.com/watch?v=P_JyGKQfjVo

諸外国の動き

イラクのアリー・ムーサウィー首相付広報顧問は、『ハヤート』(9月21日付)に対して「バグダードは米国にシリアへの武器供与疑惑を裏付ける証拠の提示を求めているが、今のところ何らの証拠も示されていない」ことを明らかにした。

ロイター(9月21日付)が、西側諜報筋の話として、イラク領空経由でイランの武器がシリアに搬入されていると報じたことを受けた動き。

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ヨルダンのファーイズ・タラーウィナ首相は、シリア人避難民を収容するキャンプを増設する意思はないことを明らかにした。

ペトラ通信(9月20日付)が報じた。

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シリアの友連絡グループ会合がオランダのハーグで開催され、西側諸国など約60カ国が参加、アサド政権への制裁強化などを協議した。

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ベラルーシ外務省報道官は、米国によるベラルーシ企業への制裁をめぐって、シリア政府への武器関連機器の供与を行っているとの疑惑を否定した。

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トルコ軍は、2012年6月のシリア軍によるトルコ空軍のF4ファントム撃墜に関する報告書を作成、そのなかで同機がシリア領海外の国際領海上で攻撃を受けたとの結論を出した。

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スイス政府は、シリア人避難民36世帯を受け入れた。

AFP(9月20日付)が報じた。

AFP, September 20, 2012, September 21, 2012、Akhbār al-Sharq, September 20, 2012, September 21, 2012、AKI, September 21, 2012、al-Ḥayāt, September 21, 2012, September 22, 2012、Kull-nā Shurakāʼ, September 20,
2012, September 20, 2012、al-Kurdīya News, September 20, 2012、Naharnet.com,
September 20, 2012、Reuters, September 20, 2012、SANA, September 20, 2012,
September 21, 2012、Youtube, September 20, 2012などをもとに作成。

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