米国はシリア駐留ロシア空軍撤退への評価に伸張な態度を示す一方、イランはロシア、シリア、ヒズブッラーの協力関係に変化はないと強調(2016年3月15日)

米ホワイト・ハウスは声明を出し、バラク・オバマ米大統領がロシアのヴラジミール・プーチン大統領と電話会談を行い、シリア駐留ロシア空軍の「部分撤退」宣言や敵対行為停止合意の継続・強化策について意見を交わしたと発表した。

電話会談で、オバマ大統領は、2月27日の停戦発効後、散発的な違反はあるもの、暴力行為は減少したとしたうえで、シリア軍の攻撃継続が敵対行為停止や政治プロセスの進展を脅かしかねないと述べたという。

また人道支援物資搬入に関しても進展があったとしつつ、ダーライヤー市などへの物資搬入をシリア政府に認めさせるべきだと述べたという。

なお、ホワイトハウスは、シリア駐留ロシア軍の「部分撤退」宣言そのものについては、「現段階においてその影響がどの程度のものかを特定するのは時期尚早」だと発表した。

『ハヤート』(3月16日付)によると、米ロシアの電話首脳会談は、プーチン大統領とシリアのアサド大統領の電話会談後に行われた。

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欧州連合(EU)の外務・安全保障政策上級代表付報道官は、ロシア駐留シリア空軍の主要部隊の撤退宣言に関して「シリア国内の暴力減少の実現と敵対行為の長期的停止に資するいかなる措置も和平プロセスにおいて極めて重要なことだ」と高く評価した。

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フランス外務省報道官は、ロシア駐留シリア空軍の主要部隊の撤退宣言に関して「現実に反映されるのであれば、良い進展」と評価した。

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イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣は、シリア駐留ロシア空軍の主要部隊の撤退に関して「停戦維持のために力を行使する必要がない」との判断に基づいているとして、これを歓迎した。

ザリーフ外務大臣は「シリアで停戦がほぼ維持されているという事実は歓迎すべきことであり、我々は2年半、あるいは3年以上前から求めてきたものだ…。ロシアが駐留部隊の部分撤退を開始すると発表したことは、停戦を維持するのに力に訴える必要がないと見ていることを示すものだ」と述べた。

一方、アリー・アクバル・ヴェラーヤティー最高指導者顧問は、ファイサル・ミクダード外務在外居住者副大臣との会談後、イラン、ロシア、シリア、ヒズブッラーなどの諸勢力の協力関係に変化はないと強調した。

『ハヤート』(3月16日付)が伝えた。

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AFP(3月15日付)によると、シリア駐留ロシア空軍の主要部隊の撤退宣言に関して、デミストゥラ特別代表は声明を出し、「重要な進展」だと高く評価した。

なお声明を読み上げたアフマド・ファウズィー報道官によると、デミストゥラ特別代表は14日晩に、安保理の非公式会合直前に、ロシア側とのテレビ会議でこの撤退について知らされていたという。

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西クルディスタン移行期民政局(ロジャヴァ)人民防衛隊(YPG)主体のシリア民主軍の政治母体であるシリア民主評議会は声明を出し、シリア駐留ロシア空軍の主要部隊撤退に関して「ロシア軍撤退という突然のニュースは、我々にとってはサプライズではない…。ロシアは国際社会の諸勢力との合意のもと、政治的な計画と交渉を成功させるために覇権を駆使するだろう」と評価した。

AFP, March 15, 2016、AP, March 15, 2016、ARA News, March 15, 2016、Champress, March 15, 2016、al-Hayat, March 16, 2016、Iraqi News, March 15, 2016、Kull-na Shuraka’, March 15, 2016、al-Mada Press, March 15, 2016、Naharnet, March 15, 2016、NNA, March 15, 2016、Reuters, March 15, 2016、SANA, March 15, 2016、UPI, March 15, 2016などをもとに作成。

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