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シリア政府の動き
アサド大統領は、政令第333号を発し、ハサン・サーリフ・ジャラーリーをラッカ県知事に任命した。
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DamasPost(9月17日付)は、シリア・ハッジ最高委員会が、サウジアラビアのハッジ省から巡礼者受け入れに関する解答が期日までに寄せられなかったとして、シリアからの巡礼を中止することを決定したと報じた。
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『クッルナー・シュラカー』(9月17日付)は、反体制武装勢力掃討に際して伐採されたサボテンなどが伐採されたダマスカス県ラーズィー農園地区、マッザ区、カフルスーサー区、カダム区、アサーリー地区、ダハーディール地区、ナフル・イーシャ地区、南部環状線地区、ダマスカス郊外県ダーライヤー市などの再開発を提案する、と大手不動産業者のアブドゥルファッターフ・イヤースーが発表した、と報じた。
国内の暴力
ハサカ県では、クルディーヤ・ニュース(9月17日付)などによると、ラアス・アイン市で、ラタキア県からハサカ県に向けて穀物を運んでいたトラックの車列が200人以上の武装集団に襲撃され、車列の警備のために同行していた治安要員2人が殺害され、3人が負傷した。
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アレッポ県では、AFP(9月17日付)によると、軍・治安部隊による「浄化」が完了したとされるアレッポ市マイダーン地区で、反体制武装勢力が再び潜入し、戦闘が発生した。
シリア人権監視団によると、アレッポ市のハラブ・ジャディーダ地区にある空軍情報部施設と科学研究施設の近くで軍・治安部隊と反体制武装勢力が交戦、ヘリコプターが同地区上空を旋回したのと時を一にして、科学研究施設が激しく炎上したという。
一方、SANA(9月17日付)によると、アレッポ市西ザフラー地区にある科学研究センターで、守衛が反体制武装勢力と交戦し、戦闘員10人を殺害し、撃退した。
またカフルハムラ地区でも軍・治安部隊が反体制武装勢力と交戦した。
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ダマスカス県、ダマスカス郊外県では、地元調整諸委員会によると、カダム区、アサーリー地区、ハジャル・アスワド市に対して軍・治安部隊が砲撃を加えた。
シリア人権監視団によると、カダム区で処刑された遺体16体が発見される一方、カフルスーサ区では11人が射殺された。
一方、SANA(9月17日付)によると、ハジャル・アスワド市、カダム区、アサーリー地区で軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」の追跡を継続し、多数の戦闘員を殺傷した。
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イドリブ県では、シリア人権ネットワークによると、タマーニア町で「シャッビーハ」が一家3人を銃殺した。
またシリア殉教者大隊の戦闘員によると、同大隊がアブー・ズフール航空基地を砲撃し、空港内のMiG戦闘機一機を破壊、また上空で戦闘機複数を撃墜した(未確認情報)。
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ダイル・ザウル県では、ダイル・ザウル市革命評議会報道官によると、軍が「樽爆弾」を使用し、多数の民間人が死傷した。
また軍・治安部隊は市内の橋を破壊し、人道支援の搬入を阻止している、という。
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ヒムス県では、地元調整諸委員会によると、ラスタン市に対して軍・治安部隊が砲撃を行った。
一方、SANA(9月17日付)によると、ヒムス市シャンマース地区で反体制武装勢力の86人が投降し、武器を当局に引き渡した。
またヒムス市ジャウバル区で、反体制武装勢力が製造していた爆弾が爆発し、戦闘員5人が死亡した。このほか、ヒムス市バーブ・フード地区、ナキーラ地方などで軍・治安部隊が反体制武装勢力が交戦し、多数の戦闘員を殺傷した。
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ダルアー県では、地元調整諸委員会によると、タスィール町、サフム・ジャウラーン村、ジッリーン村に対して軍・治安部隊が砲撃を行った。
一方、SANA(9月17日付)によると、イズラア市、ガバーギブ町、サフム・ジャウラーン村とジッリーン村間の街道などで、軍・治安部隊が反体制武装勢力の「残党」への追跡を継続し、多数の戦闘員を殺傷、武器弾薬を押収した。
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ハマー県では、SANA(9月17日付)によるとシーハ村で、軍・治安部隊が反体制武装勢力のアジトに突入し、大量の武器弾薬を押収した。
反体制勢力の動き
シリア共産主義者委員会は声明を出し、シリア国民救済大会の開催準備に抗議して、民主的変革諸勢力国民調整委員会から脱会すると宣言した。
声明は委員会のマンスール・アタースィー書記長が発表した。
レバノンの動き
LBCI(9月17日付)などによると、シリア軍戦闘機が発射したミサイル4発がベカーア県バアルベック郡の対シリア国境に位置するアルサール地方に着弾した。
諸外国の動き
パレスチナのイスラーム聖戦の指導者の一人ムハンマド・ヒンディーはガザで記者会見を開き、「シリアの親愛なる人民とシリアの難民キャンプでの我らがパレスチナ人民に対する暴力を非難する」と述べた。
シリア国内の本部を移転させたことに関して、「シリアにはいかなる事務所もない。またカイロにもない。我々は在外のパレスチナ難民の一部をなしている」と述べた。
シリア情勢については「我々はシリア国内の情勢には介入しない。我々は暴力の停止…、シリアの統合を維持し、シリア国民の利益実現し、外国の介入を遠ざけるような解決案の創出を呼びかけている」としつつ、「レジスタンスは人民の革命と解放によって強化される…。アラブ諸国の革命はパレスチナの利益になる」と締めくくった。
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エジプト、トルコ、イランの外相は、エジプト、トルコ、イラン、サウジアラビアによるシリア問題四カ国連絡グループの枠組みで、カイロのエジプト外務省で会談し、シリア情勢について協議した。
会談には、エジプトのムハンマド・カーミル・アムル外務大臣、トルコのアフメト・ダウトオール外務大臣、イランのアリー・アクバル・サーレヒー外務大臣が出席した。
サウジアラビアのサウード・ファイサル外務大臣は、「緊急の用務」のため欠席した。
エジプト外務省報道官によると、会談では、シリアの紛争の周辺諸国への波及抑止などについて話し合った。
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中国の外交部はインターネットで声明を出し、楊潔篪外務大臣が、シリアの危機解決は外国の介入ではなく、シリア国民の指導のもとになされねばならないとの述べたと発表した。
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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はモスクワでアラブ国際関係評議会使節団と会談した。
使節団を率いたムハンマド・ジャースィム・サクル議長によると、ラブロフ外務大臣は会談で、ロシアがアサド政権存続に固執しておらず、シリアの将来はシリア国民自身が決するべきで、外国の介入には同調しないとのこれまでの立場を繰り返した。
使節団には、イラクのイヤード・アッラーウィー元首相、レバノンのフアード・スィニューラ元首相らが参加した。
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DamasPost(9月17日付)は、信頼できる匿名消息筋の話として、シリア政府が一部の西欧諸国外交関係者から、ダマスカスの大使館や外交駐在員事務所の再開に関する前向きな意思表示を受けたと報じた。
同報道によると、これらの国々は2013年初めに閉鎖中の大使館を再開することを検討しているという。
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シリアでの人権侵害を調査するための国連人権理事会調査委員会のパウロ・セルジオ・ピネイロ委員長(ブラジル)が国連人権理事会でシリア情勢について報告を行った。
そのなかでピネイロ委員長は、シリアで「戦争犯罪」を犯した個人、軍事組織の容疑者の「新極秘リスト」を作成し、国際社会においてしけるべき追究を行うための第一弾として、近く国連人権高等弁務官に提出するとの意向を明らかにした。
『ハヤート』(9月18日付)によると、このリストに反体制勢力の活動家・組織が記されているかは定かでない。
ピネイロ委員長は報告のなかで、軍および政府側の民兵が戦争犯罪を犯していると糾弾する一方、過激なイスラーム主義者がシリア国内での増加していると懸念を示した。
彼らの一部は、シリアの反体制勢力に与し、一部は独立して活動を行っているという。
一方、シリアのファイサル・ハッバーズ・ハマウィー代表大使は、西側諸国および一部のアラブ諸国が「ジハード主義者」、「傭兵」に資金と武器を支援していると非難した。
また、ピネイロ委員長の報告書が「不正確」だと指摘し、17カ国が「ジハード主義テロリスト」をシリアに派遣していると強調した。
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フランス外務省報道官は、ピネイロ委員長の報告書に関して「ダマスカスの体制に対する決定的証拠を含んでいる」とし、「戦争犯罪、人道に対する罪をシリア政府が犯している」と非難した。
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UNICEFは声明を出し、シリア国内、レバノン、ヨルダン、トルコ、イラクで避難生活を送る子供たちの教育に4000万ドル以上が必要だとの試算を発表した。
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ヒューマン・ライツ・ウォッチ(9月17日付)は、反体制勢力が、身柄拘束者の拷問・殺害などの「戦争犯罪」を犯していると発表した。
AFP, September 17, 2012、Akhbar al-Sharq, September 17, 2012、al-Hayat, September 18, 2012、Kull-na Shurakaʼ, September 17, 2012, September 18,
2012、al-Kurdiya News, September 17, 2012、LBCI, September 17, 2012、Naharnet.com,
September 17, 2012、Reuters, September 17, 2012、SANA, September 17, 2012などをもとに作成。
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