2012年7月29日のシリア情勢

国内の暴力(アレッポ市)

アレッポ県では、複数の活動家や目撃者によると、軍・治安部隊による反体制武装集団掃討作戦が継続され、ヘリコプターや戦車などによる砲撃が続き、事態は「全面的な市街戦」の様相を呈し、反体制武装集団が占拠した地域の住民はそのほとんどが避難を余儀なくされた。

Kull-nā Shurakāʼ, July 29, 2012

Kull-nā Shurakāʼ, July 29, 2012

Kull-nā Shurakāʼ, July 29, 2012

Kull-nā Shurakāʼ, July 29, 2012

**

シリア人権監視団のラーミー・アブドゥッラフマーン所長によると、軍・治安部隊の増援部隊は、そのすべてがアレッポ市内の戦闘地域に展開しておらず、多くは反体制武装集団が占拠している街区を包囲し、孤立化を狙っているという。

**

アブー・アラー・ハラビーを名のる活動家はAFP(7月29日付)に対して、戦闘がバーブ・ナスル、バーブ・ハディード、旧市街にも達しつつあると述べた。

**

自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐はAFP(7月29日付)に対して、飛行禁止空域の設定を西側諸国に懇願した。

アカイディー大佐は「我々は西側に緩衝地帯があると言っている。しかし我々は緩衝地帯が必要なのではなく、我々が体制を打倒できるようにするための飛行禁止空域が必要なだけだ」と述べた。

また「(軍・治安部隊の)戦車が入る街区はどこであっても、戦車の墓場になるだろう…。(軍…治安部隊は)航空機か遠距離の迫撃砲、都市に対する砲撃…を通じてしか(アレッポ市内に)入ることができない…。我々はすべての街区を堅固に護っており、おかげさまで対戦車、対空兵器を保持している…。これまで戦車8輌など車輌多数を破壊し、100人以上を殺害した」と豪語した。

**

一方、SANA(7月29日付)によると、アレッポ市のサラーフッディーン地区で軍・治安部隊が反体制武装集団残党の「浄化」を完了した。

公式筋によると、同地区で殺害した戦闘員のなかには外国人が含まれていたという。

また軍・治安部隊はバーブ・ハディード、ブスターン・ザフラ地区、バルクーム地区などで武装テロ集団と交戦し、甚大な被害を与えた。

国内の暴力(その他)

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市、ムウダミーヤト・シャーム市、スバイナ町周辺で、軍・治安部隊による逮捕・追跡活動が行われ、ハーマ町で反体制活動家1人が、アルバイン市で市民1人が死亡した。

**

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区に軍・治安部隊が砲撃したほか、バーブ・フード地区では治安部隊が技師組合ビルに突入し、反体制勢力の戦闘員2人を殺害した。

Kull-nā Shurakāʼ, July 29, 2012

Kull-nā Shurakāʼ, July 29, 2012

また市内の警察署近くでも戦闘があり、反体制武装集団の戦闘員1人が死亡した。

一方、SANA(7月29日付)によると、対レバノン国境に位置するタッルカラフ地方で、国境警備隊が潜入を試みる反体制武装集団と対峙した。

またタルビーサ地方でも反体制武装集団のアジトを襲撃し、甚大な打撃を与えた。

**

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シャイフ・マスキーン市で激しい戦闘があった。

一方、SANA(7月29日付)によると、県内の避難民キャンプなどで軍・治安部隊反体制武装集団の追跡を継続し、「野戦病院」を発見した。

またブスラー・シャーム市、シャイフ・マスキーン市などでも軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦した。

**

ハサカ県では、シリア人権監視団によると、サイイド・ハンムード村で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、前者に死傷者が出た。

**

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、イドリブ市で軍・治安部隊と反体制武装集団が激しく交戦、またヒーシュ村では市民2人が砲撃で死亡した。

一方、SANA(7月29日付)によると、対トルコ国境に位置するジスル・シュグール地方アイン・バイダーで潜入を試みる反体制武装集団と対峙した。

また県内各地で反体制武装集団の追跡を継続し、甚大な打撃を与えた。

**

ハマー県では、シリア革命総合委員会によると、軍・治安部隊が逮捕・追跡活動を継続、ガーブ平原の村々に突入した。

**

Kull-nā Shurakāʼ, July 29, 2012

Kull-nā Shurakāʼ, July 29, 2012

ダイル・ザウル県では、SANA(7月29日付)によると、ダイル・ザウル市で郡・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、甚大な被害を与えた。

**

スワイダー県では、『クッルナー・シュラカー』(7月29日付)によると、スワイダー市でレバノンの親アサド政権の政治家ウィヤーム・ワッハーブ氏(ドゥルーズ派)の事務所のタイスィール・ハートゥーム所長が反体制武装集団に襲撃され、負傷した。

襲撃に関して、スワイダー軍事評議会のハルドーン・ザインッディーン大尉なる活動家は、「シャッビーハのウィヤーム・ワッハーブへのメッセージだ」と述べ、スワイダー市への訪問を認めないとの意思を示した。

なおワッハーブ氏は、最近暗殺未遂に遭い、スワイダー市への訪問を中止している。その背景には、レバノンのワリード・ジュンブラート進歩社会主義党党首がいるとされたが、スワイダー軍事評議会が犯行を認めている。

シリア政府の動き

シリアのワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣がイランを訪問し、マフムード・アフマディーネジャード大統領、アリー・アクバル・サーレヒー外務大臣らと会談した。

会談後、ムアッリム外務在外居住者大臣は、アレッポ市での反体制武装集団の武装闘争に関して、「ダマスカスでの戦闘に敗北した戦闘員がアレッポに移動した」ためとの見方を示し、「彼らの計画は失敗するだろう…。シリア国民は軍とともに戦っている」と述べた。

SANA, July 29, 2012

SANA, July 29, 2012

また「トルコからシリアに入った戦闘員は、リビア、チュニジア、エジプトなどの国籍を持っており、イラクから入り逮捕された戦闘員は、アル=カーイダのメンバー」であることを明らかにした。

さらに「現状を踏まえると、シリアに陰謀を企てる者たちは悪質だと思う。現下の対決が終わり、シリア全土に安定と治安が回復したとしても、陰謀は止まないだろう。なぜなら背後で糸を引いている者が明らかだからだ…。イスラエルがことを動かしており、残念なことに一部の湾岸アラブ諸国がイスラエルとともに、陰謀を働いている」と付言した。

一方、レバノンに関しては「レバノンが武装テロ集団の潜入を阻止することを望んでいる。そうすることはレバノンとシリアのためになる」と述べた。

**

SANA(7月29日付)によると、イランのアフマディーネジャード大統領は、「真理が不正に勝利するまで、陰謀と対決するシリアを支持する」と述べた。

またサーレヒー外務大臣は、シリアにおいて体制転換が実行できるとする西側の発想を「幻想」だと非難した。

**

『クッルナー・シュラカー』(7月29日付)は、ラーミー・マフルーフ氏が代表を務めるブスターン慈善協会がダマスカス県とダマスカス郊外県でアラウィー派に武器と資金を供与し、反体制デモを阻止しようとしている、と報じた。

**

SANA, July 29, 2012

SANA, July 29, 2012

『クッルナー・シュラカー』(7月29日付)は、シーア派の複数の消息筋の話として、ダマスカス郊外県のサイイダ・ザイナブ町の廟をイランの革命防衛隊が警備していると報じた。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会は、アレッポ、ダマスカス、ヒムスでのシリア政府による「虐殺」を阻止するための国連安保理緊急会合の招集を求めた。

**

シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長は訪問先のUAEのアブダビで、「自由シリア軍」に重火器を供与するよう呼びかけた。

スィーダー事務局長は「我々がここで欲している支援とは、革命運動家への質的支援だ。我々は戦車、戦闘機を食い止める武器が欲しい」と述べた。

一方、暫定政府の人事に関して、スィーダー事務局長は、「ほとんどのメンバーは反体制勢力だが、現政府のメンバーも若干含まれる」と述べ、バスマ・カドマーニー報道官の発言や評議会の声明を再び否定、ジョルジュ・サブラー報道官に同調した。

またマナーフ・トゥラース准将との協力の是非に関して、暫定政府発足の第1段階においてトゥラースは参加できないとしたうえで、「現地で活動する自由シリア軍や革命勢力との…対話と調整が行われねばならない」と答えた。

また「暫定政府は愛国的でクリーンでコンセンサスに基づく人物が指導しなければならない」と述べ、トゥラース准将が首班になる可能性を否定した。

一方、スィーダー事務局長は、反体制勢力が「基本的な必需品」を得るために少なくとも月1億4,500万ドルが必要だが、過去数ヶ月で1,500万ドルしか資金を得られていないことを明らかにした。

また7,200万ドルの義援金を5日で集めたサウジアラビアに対して謝辞を述べた。

**

AFP(7月29日付)は、シリア国民評議会のアブドゥルバースィト・スィーダー事務局長がイランのエルビルに向かったと報じた。

シリアのクルド民族主義勢力(シリア・クルド国民評議会)にシリア国民評議会への参加を呼びかけることが目的だという。

**

「アフバール・シャルク」(7月29日付)は、ムハンマド・フサーム・ハーフィズ駐アルメニア・シリア領事がアサド政権を離反した、と報じた。

**

アンワル・ブンニー弁護士は、AKI(7月29日付)に対して、アサド政権が新設したテロ犯罪特別法廷を「国民に対する違法な武器」と非難した。

レバノンの動き

北部県トリポリ市のジャバル・ムフスィン地区・バーブ・タッバーナ地区で住民どうしの衝突が激化し、2人が死亡、5人が負傷した。

衝突は27日から散発的に続いており、負傷者は3日間で20人以上に達した。

**

レバノンのワリード・ジュンブラート進歩社会主義党党首は、『ナハール』(7月29日付)に対して「シリアの体制はこれまで以上にレバノンで強力になっている」と述べ、治安機関などに対してアサド政権が影響力を行使していると非難した。

諸外国の動き

コフィ・アナン特使は声明を出し、アレッポ市での戦闘激化に関して懸念を表明し、「政治的正常化をもたらすための政治的転換が危機を解決し、シリア国民のために平和を実現する唯一の方法」だと強調した。

**

ヨルダン政府は、対シリア国境のマフラク市郊外のザアタリー地方にシリア人避難民を受け入れる初の国営のキャンプを開設した。

開設式にはナースィル・ジャウダ外務大臣が出席した。

AFP, July 29, 2012、Akhbār al-Sharq, July 29, 2012、al-Ḥayāt, July 30, 2012、Kull-nā Shurakāʼ, July 29, 2012、Naharnet.com, July 29,
2012、al-Nahār, July 29, 2012、Reuters, July 29, 2012、SANA, July 29, 2012、Sky News Arabic,
July 29, 2012、al-Thawra, July 30, 2012などをもとに作成。

 

(C)青山弘之 All rights reserved.

カテゴリー: シリア政府の動き, レバノンの動き, 反体制勢力の動き, 国内の暴力, 諸外国の動き パーマリンク