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国内の暴力(アレッポ市)
シリア人権監視団や反体制活動家らによると、サラーフッディーン地区、サーフール地区、ザフラー地区、イザーア地区、アアザミーヤ地区などに対して、軍・治安部隊がヘリコプターや戦車などを投入し、砲撃を続けた。
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自由シリア軍のファルザート・アブドゥンナースィル准将はAFP(7月30日付)に対して、アレッポ市郊外のアンダーン検問所(アレッポ市北部5キロに位置)を10時間にわたる戦闘のちに制圧した、と語った。
この戦闘で、反体制武装集団は軍・治安部隊の戦車・装甲車7輌を捕捉、1輌を破壊した。
また、反体制武装集団は戦闘で6人が犠牲になった、という。
同検問所はアレッポ市とトルコ国境を結ぶ「戦略的要衝」とされる。
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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐は、AFP(7月30日付)に対して、「我々は昨晩、サラーフッディーン地区での軍・治安部隊による3度の進軍を阻止し、戦車4輌を破壊した」と述べ、同地区の「浄化」を完了したとのシリア政府側の発表を否定した。
またアカイディー大佐は、自由シリア軍がアレッポ市の「35~40%を制圧した」と豪語した。
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一方、SANA(7月30日付)によると、アレッポ市郊外のダール・クッバターン・ジャバル回廊で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、後者の車輌4台を破壊した。
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ジャズィーラのウマル・ハシュラム特派員がアレッポ市で負傷した。
ジャズィーラ(7月30日付)によると、同特派員は、軍・治安部隊が部分的に奪還した街区で負傷、その後トルコに搬送された、という。
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ロイター通信(7月30日付)は、アレッポ市近郊の村出身の反体制活動家の話として、「アレッポ市で戦っている戦闘員の約80%は農村出身者だ。アレッポは商業都市で、住民は中立でいたいと考えている。しかし我々はここに来て、彼らは我々を受け入れているように見える」と報じた。
国内の暴力(その他)
ダマスカス県では、地元調整諸委員会によると、ルクンッディーン区やカフルスーサ区で治安部隊が大規模な逮捕・追跡活動を行った。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、マスラーバー市とハラスター市の間の農村地帯で、治安部隊が大規模な逮捕・追跡活動を行った。
またムウダミーヤト・シャーム市では16歳の少年が殺害された。
『クッルナー・シュラカー』(7月30日付)はイブラーヒーム・サーフィー中将(第1師団司令官)の息子のフィラース・サーフィー氏(シリア・アラブ航空パイロット)と妻でジャーナリストのファーディヤー・ジブリール氏がダマスカス国際空港街道で襲撃され、死亡したと報じた。
一方、SANA(7月30日付)によると、ハラスター市郊外で軍・治安部隊が反体制武装集団の残党を掃討し、多数を逮捕した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ラスタン市での砲撃で2人が死亡した。
一方、シリア・アラブ・テレビ(7月30日付)は、ヒムス市のカラービース地区の「浄化」を完了した、と報じた。
またSANA(7月30日付)によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、戦闘員多数を殺害した。
さらにクサイル地方でも軍・治安部隊が反体制武装集団を交戦し、戦闘員多数を殺害した。
このほか、タッル・カラフ地方では国境警備隊がレバノン領内から潜入を試みた反体制武装集団の戦闘員を撃退した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シャイフ・マスキーン市で2人が射殺された。
一方、ANA(7月30日付)によると、ジュッブ・サファー村、カーラ村で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を逮捕した。
またタッル・シハーブ町の国境警備隊がヨルダン領内から潜入を試みた反体制武装集団の戦闘員を撃退した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ブライディージュ村などで、軍・治安部隊が大規模な逮捕・追跡活動を行った。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ハビート市が砲撃に曝された。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ブーカマール市で2人が撃たれて死亡した。
一方、SANA(7月30日付)によると、ダイル・ザウル市内で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員多数を死傷させた。
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ハサカ県では、SANA(7月30日付)によると、カーミシュリー市郊外で軍・治安部隊が反体制武装集団のアジトを襲撃し、武器弾薬などを押収した。
ダイル・ザウル県沿いのサアダー村で爆発(誤爆)があり、武装テロ集団のメンバー多数が死亡した。子供2人も巻き添えになったという。
シリア政府の動き
シリアの外務在外居住者省は、国連安保理議長と事務総長宛に対して、ダマスカスとアレッポでの反体制武装集団による民間人への攻撃にサウジアラビア、カタール、そしてトルコが資金・武器を供与していることに抗議する書簡を送付した。
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英国外務省は、ハーリド・アイユービー駐英シリア臨時代理大使が辞職した、と発表した。
暴力行為や弾圧行為を犯すアサド政権を代表することが自身の意に反する、というのが離反の理由だという。
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トルコの高官筋が明らかにしたところによると、ラタキア県警察の副所長を含むシリア人士官12人が離反し、トルコ領内に避難した。
しかし同消息筋は、離反した副所長の氏名は明らかにしなかった。
反体制勢力の動き
自由シリア軍国内合同指導部は「革命の全要求を応えるための国民救国計画」と題した声明を出し、体制打倒後の暫定機関を主導する「最高国防評議会」の結成を呼びかけた。
声明によると、「最高国防評議会」は、暫定機関の国家運営を担当する「大統領評議会」の設置を第一の任務とする。
「大統領評議会」は民間人と軍人の計6人から構成され、治安・軍機関の再編を担当するという。
また声明では、「暫定政府」に関して、内務大臣と国防大臣のポストを軍に与えられるべきとするとともに、首相府担当大臣も軍が指名する民間人が就くべきだと提言した。
さらに声明では「シリア革命保護最高国民評議会」の設置も提言している。
同評議会は、「行政機関の活動を監視する議会の役割を果たす」という。
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クルド最高委員会は声明を出し、「自らをシリア国民の一部とみなす」とともに、「多元的民主的シリアに向けた革命への平和的・実質的な参加をめざす」との意思を示した。
また「シリアのクルド人は隣国の平和と治安を脅かす意思がない」と表明、また「シリア社会からの分離や分断をめざさない」と宣言した。
クルド最高委員会は、シリア・クルド国民評議会と西クルディスタン人民議会からなる政治同盟。
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Youtube(7月30日付)は、ラタキア県の「トゥルクマーン山」で活動するマムドゥーフ・ジュールハ大隊なる武装集団が、「日本人ジャーナリスト」と思われる青年がイスラーム教徒になったとするビデオを公開した。
諸外国の動き
国連のバレリー・アモス人道問題担当事務次長は、アレッポ市での戦闘を避け避難した市民の数が20万人以上に及ぶと赤十字国際委員会やシリア赤新月社が推計していると発表した。
また「包囲された同市で戦闘に依然として巻き込まれている人の数は把握できない」としてたうえで、戦闘に参加しているすべての当事者に、民間人を標的にしないよう求めるとともに、人道機関が住民に緊急支援を行うため安全な通行を認めるよう呼びかけた。
避難民の多くは「比較的安全な地域の学校や公共施設に一時避難している」という。
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ババカール・ジャイのUNSMIS団長は、ヒムス県のヒムス市とラスタン市を視察し、「激しい砲撃」が行われていることを確認した、と述べた。
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フランスのローラン・ファビウス外務大臣はRTLラジオ(7月30日付)で、アサド大統領を「死刑執行人」と非難、シリアでの流血を停止させるため、国連安保理で緊急会合の開催を求めると述べた。
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ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ首相は『タイムズ』(7月30日付)に対して、シリア情勢をめぐりロシアと西側の対立にもかかわらず、「起こり得る最悪の事態が全面的な内線突入であるという立場に皆が立っている」点で共通している、と述べた。
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サウジアラビアのアフマド・ビン・アブドゥルアズィーズ内務大臣が、シリアへの義援金が29日までに1億800万ドル集まった、と発表した。
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トルコのアフマト・ダウトオール外務大臣はイラクのクルディスタン地域訪問に先立って、「地域は大きな変革を目の当たりにしている。新たな中東を受け入れるか、混沌を受け入れるか…。過去100年においてもっとも重要でもっとも大きな変化だ」と述べた。
また「シリアのレバノン化は許されない」と述べ、シリアの内政混乱を回避したいとの意思を示した。
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『シュピーゲル』(7月30日付)は、今年2月にドイツ国内で逮捕された30歳代のシリア人男性が、シリアの反体制活動家に対するスパイ容疑で連邦裁判所で近く裁判にかけられると報じた。
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ヨルダン日刊紙『ラアユ』(7月30日付)は、シリアの反体制武装闘争に参加して、軍・治安部隊に殺害されたとSANAが報じたヨルダン人のなかに、16年前にシリアでスパイ容疑を受け死亡したヨルダン人が含まれていた、と報じた。
このヨルダン人はウサーマ・アブドゥルカーディル・アフマド・ザハビー容疑者で、ヨルダン国内の台帳(サルト市台帳)によると、1996年5月30日に死亡したになっている、という。
SANAによると、ザハビー容疑者は最近シリア国内に潜入し、ダルアー県のヒルバト・ガザーラ町で反体制武装活動に参加していた、という。
シリア当局が国内で殺害したとされるヨルダン人戦闘員に関しては、ズライカート家やジャーズィー家が、家族の名前(ムハンマド・ズライカート、ファーリス・ジャーズィー)を「盗用」されたと非難していた。
また、殺害されたとされるヨルダン人戦闘員のなかには、シリアに行ったことのない存命の青年の名前(アブー・バラー・サルティー)も含まれていた、という。
一方、『ガド』(7月30日付)は、シリアの反体制武装闘争に参加して殺害されたとされるファーリス・ムハンマド・ジャーズィーの兄弟の話として、ジャーズィーがダマスカスで逮捕されたのちに治安当局に殺害された、と報じた。
AFP, July 30, 2012、Akhbar al-Sharq, July 30, 2012、Aljazeera.net, July 30, 2012、Der Spiegel, July 30, 2012、al-Ghad, July 30, 2012、al-Hayat, July 31, 2012, August 1, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 30, 2012、Naharnet.com, July 30, 2012、al-Raʼy, July 30, 2012、Reuters, July 30, 2012、SANA, July 30, 2012、al-Thawra, July 31, 2012、The Times, July 30, 2012などをもとに作成。
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