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国内の暴力(アレッポ市)
アレッポ県では、アレッポ市のサラーフッディーン地区などを包囲する軍・治安部隊が反体制武装集団に対する総攻撃を開始した。
また戦闘の本格化を受け、約20万人の市民が郊外の学校、公園などに避難した。
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AFP(7月29日付)によると、総攻撃は早朝4時に始まり、ヘリコプター4機が空爆を行う一方、戦車などが砲撃を加えた。
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同報道によると、反体制武装集団にはシリア人戦闘員だけでなく、「ムジャーヒドゥーン・タウヒード旅団」を名のるイスラーム主義者も加わっている。
「ムジャーヒドゥーン・タウヒード旅団」は、チェチェン、アルジェリア、スウェーデン、フランスのイスラーム教徒から構成されている。
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自由シリア軍アレッポ軍事評議会のアブドゥルジャッバール・アカイディー大佐によると、ハムダーニーヤ地区で軍・治安部隊を攻撃し、戦車・装甲車5輌を破壊し、「自由シリア軍は軍に甚大な被害を与え、その攻撃を停止させた」。
しかし、アカイディー大佐によると、「サラーフッディーン地区の外には軍の戦車約100輌が展開している」という。
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シリアの治安消息筋はAFP(7月29日付)に対して、「テロリストの逃走を阻止するため、戦闘地区のすべての出入り口は閉鎖されている」という。
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SANA(7月28日付)によると、フルカーン地区で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員2人を殺害、3人を逮捕、武器弾薬および乗っていた車を押収した。
またスライマーン・ハラビー地区でも軍・治安部隊が反体制武装集団を殲滅、アンサーリー地区でも反体制武装集団に甚大な被害を与えた、という。
このほか、スッカリー地区では、反体制武装集団の戦闘員4人を拘束した。
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AFP(7月29日付)によると、アレッポ市からトルコ国境に向かう街道に、反体制武装集団が「自由シリア軍」と書かれた検問所を設置している。
国内の暴力(その他)
ダマスカス県では、シリア革命総合委員会によると、カフル・スーサ区で治安部隊および「シャッビーハ」による逮捕・追跡活動が行われた。
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ダマスカス郊外県では、SANA(7月29日付)によると、スバイナ町で軍・治安部隊が反体制武装集団残党の「浄化」を完了した。
またサイフーニーヤ市(ドゥーマー市郊外)では、反対武装集団によって誘拐されていた市民2人を軍・治安部隊が解放することに成功した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区で軍・治安部隊による砲撃が行われた。
一方、SANA(7月28日付)によると、ヒムス市で反体制武装集団の追跡が継続された。
またクサイル市では、軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、戦闘員8人を殺害した。
ラスタン市でも、軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦したほか、対レバノン国境地帯で越境砲撃を行う反体制武装集団と対峙した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、カルナーズ町に軍・治安部隊が砲撃を加えた。
一方、SANA(7月28日付)によると、カルナーズ町で軍・治安部隊が反体制武装集団の「浄化」を完了した。
またガーブ地方各所で反体制武装集団に甚大な被害を与えた。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦、砲撃を加えた。
一方、SANA(7月28日付)によると、ダイル・ザウル市内で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦し、多数の戦闘員を死傷させた。
またムー・ハサン市では軍・治安部隊が反体制武装集団を殲滅した、という。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ラジャート高原で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。
一方、SANA(7月28日付)によると、ブスラー・シャーム市で軍・治安部隊が反体制武装集団と交戦した。
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ラタキア県では、SANA(7月28日付)によると、軍・治安部隊がサルマー町周辺で武装テロ集団残党の追跡を継続した。
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SANA(7月28日付)は、反体制武装集団がダマスカス郊外県で拉致したとされるイタリア人技術者2人をシリア軍が解放したと報じた。
解放されたのはイタリアの電力会社Ansaldo Energiaの技術者オリアノ・カンターリ(Oriano Cantari)氏(64歳)とドメニコ・テデシ(Domenico Tedeschi)氏(36歳)。
イタリア外務省はこの2人が7月20日に出国のためダマスカス国際空港に向かう途中、警察に逮捕されたと発表していた。
解放された技術者の1人はAGI(7月28日付)に対して、誘拐犯が覆面をしていたので、誰かは分からなかったと答えた。
アサド政権の動き
ムハンマド・イブラーヒーム・シャッアール内務大臣はシリア・アラブ・テレビ(7月28日付)に出演し、7月18日のダマスカス県での爆弾テロで重傷を負った(ないしは死亡した)との一部メディアの報道を否定した。
また市民に対して、「テロリストの呼びかけ」に応じて国外に避難しないよう呼びかけるとともに、「我々の勇敢な軍がテロリストを殲滅し、治安を回復する」と述べた。
一方、反体制武装集団に対しては「国の安定に打撃を与えようとする計画のなかで燃料として利用されているに過ぎないことを悟り…、信念を取り戻す」よう呼びかけた。
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『クッルナー・シュラカー』(7月27日付)は、バアス党シリア地域指導部民族治安局のアミーン・シャラービー副局長(少将)が7月18日のダマスカス県での爆破テロでダーウド・ラージハ国防大臣らとともに殺害され、アブドゥルファッターフ・クドスィーヤ少将が後任となった、と報じた。
しかし、民族治安局は国民安全保障会議に発展解消しており、現在は存在しない。
またクドスィーヤ少将は、爆弾テロ後に軍事情報局長に異動となっている。
反体制勢力の動き
ロンドンを拠点とする反体制組織のシリア人権監視団は、2011年3月以降の死者数が20,028人に達したと発表した。
同監視団によると、うち民間人と反体制武装集団活動家が13,978人、離反兵が968人、軍・治安部隊兵士が5,082人。
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バウワーバ・シャルク(7月28日付)は、シリア国民評議会の匿名消息筋の話として、バスマ・カドマーニー報道官が執行委員会メンバーを解任されると報じた。
同消息筋によると、カドマーニー報道官は「女性局」を代表するとされるが、執行委員会選挙で4票しか得られなかった、という。
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民主主義のためのシリア人キリスト教徒機構が、ヨルダンの避難民に救援物資を提供した。
救援物資は、ヨルダンの避難民キャンプでラマダーンの断食を行うイスラーム教徒がイフタールを行うための食糧などからなる。
『クッルナー・シュラカー』(7月28日付)が報じた。
レバノンの動き
NNA(7月28日付)は、ベカーア県バアルベック郡ブリータール地方でシリアに武器を密輸しようとしたレバノン人とシリア人各1人を軍が逮捕した、と報じた。
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北部県トリポリ市のジャバル・ムフスィン地区・バーブ・タッバーナ地区で27日に再発した住民どうしの衝突が激化し、12人が負傷した。
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NNA(7月28日付)によると、シリア領内から発射されたロケット弾が北部県アッカール郡ナフル・ハーリド地方に着弾し、レバノン人1人が負傷した。
またシリア人避難民3人が国境地帯での地雷に触れ、重傷を負った、という。
諸外国の動き
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は日本の玄葉光一郎外務大臣との会談後の共同記者会見で、西側諸国によるシリアの反体制勢力支援が「さらなる流血」をもたらすと批判した。
ラブロフ外務大臣は「反体制武装集団がアレッポなどの都市を占領し、新たな虐殺が起きかねない…。充分に武装した集団が都市を占拠し、暫定政府のための緩衝地帯のようなものを作ろうとしている。このような状況でシリア政府が「分かりました。私が間違えていました。私を転覆して、体制を変えてください」と言うのをどうして期待できるのか?」と述べた。
また「シリアのすべての当事者が行き過ぎた行為を犯している。我々はこれらすべての当事者に圧力をかけねばならない。西側諸国は、一部周辺諸国とともに、反体制武装破壊分子を実質的に支持、指導している…。この代償はさらなる流血だ」と付言した。
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玄馬外務大臣は、ラブロフ外務大臣の発言を受け「ロシアの姿勢は大きな影響力を持っている。また国際社会の声もある。我々はロシアの建設的な姿勢を支援する」と述べたという。
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ジェイ・カーニー米ホワイトハウス報道官は、アレッポ市での反体制武装集団と軍・治安部隊の戦闘に関して、「アサドの軍が行う民間人に対する野蛮な攻撃」を懸念するとの事実誤認に基づく一方的な批判を行った。
しかし、リビアと同様の介入の可能性に関しては「事態は異なっている」としたうえで、ロシアと中国の拒否権発動により、介入ができない、との責任転嫁を行った。
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UNHCRは、レバノン国内のシリア人避難民の数が34,000人以上に達するとの報告書を発表した。
AFP, July 28, 2012、AGI, July 28, 2012、Akhbar al-Sharq, July 28, 2012、Bawabatalsharq, July 28, 2012、al-Hayat, July 29, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 28, 2012、Naharnet.com, July 28,
2012、NNA, July 28, 2012、Reuters, July 28, 2012、SANA, July 28, 2012、al-Thawra, July 29, 2012などをもとに作成。
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