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国内の主な動き
アサド大統領は各県のワクフ管理者らからなる使節団と会談した。
SANA(7月4日付)によると、会談で、アサド大統領は「宗教関係者が果たす建設的愛国的な役割は、とりわけ現下のシリアの例外的状況のもと」で重要だと賞賛した。
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ロイター通信(7月4日付)は、ヒムス市出身のシャッビーハらの証言などをもとに、同市ザフラー地区などの若者(アラウィー派)が、シャッビーハに参加し、軍や治安機関の命令を受けず(ときには拒否して)、反体制運動の弾圧にあたっている、と報じた。
こうした「新たなシャッビーハ」の数は数百人に及び、なかには10代半ばの少年もおり、従来の犯罪集団には属していないという。
同報道によると、シャッビーハはアサド大統領への忠誠が強い一方、軍指導部を「ネズミ」と卑下し、「誰からの命令も受けず自発的に活動している」という。
しかし別の証言によると、シャッビーハは自発的に活動しているのではなく、治安機関(総合情報部内務治安局)の要請のもとに活動している。
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「アフバール・シャルク」(7月4日付)は、シリア国内のプロパンガスの価格が2011年3月時の10倍以上に高騰している、と報じた。
同報道によると、2012年初め、シリア政府はプロパンガスの価格を1ボンベあたり60シリア・ポンドから400ポンドに値上げしたが、闇市場では1,400~2,000ポンドで売られている、という。
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AKI(7月4日付)は、シリアの反体制勢力筋の話として、ハサカ県の住民が地域の治安・政治・行政の混乱に備え、「市民平和保護人民イニシアチブ」と称するNGOを結成した、と報じた。
また同県カーミシュリー市のキリスト教会委員会が、「社会関係評議会」を設置し、反体制運動支援の方途の検討を本格化させた、と報じた。
国内の暴力
ダマスカス郊外県では、『クッルナー・シュラカー』(7月4日付)によると、サイイダ・ザイナブ町で反体制武装集団が軍事情報局のフサーム・サブーウ大尉が乗った自動車を襲撃、同大尉と同乗していた「シャッビーハ」の「アブー・ハイダル」を暗殺した。
またシリア人権監視団によると、ダーライヤー市、ハムーリーヤ市で治安部隊の発砲で3人が死亡した。
さらに地元調整諸委員会によると、ミスラーバー市が軍・治安部隊の「無差別砲撃」に曝され、シリア革命総合委員会によると、リーハーン農場、ハムーリーヤ市、サクバー市、ハラスター市などが軍・治安部隊の砲撃に曝された。
一方、SANA(6月4日付)によると、ナブク市でムハンマド・ハイイル・ザグルール判事が誘拐された。
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ダイル・ザウル県では、SANA(6月4日付)によると、武装テロ集団がハサカ県とをつなぐ高圧電線を破壊した。
またマヤーディーン市では、治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト多数が殺害された。
一方、シリア人権監視団によると、バーグール市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、軍の兵士1人と反体制武装組織の戦闘員1人が殺害された。
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アレッポ県では、SANA(6月4日付)によると、アアザーズ市で治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、テロリスト多数が殺害された。
一方、シリア人権監視団によると、クルド山一帯で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。
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ヒムス県では、SANA(6月4日付)によると、タッルカラフ地方のレバノン国境に位置するマアーキール村近くで関係当局が潜入を試みる武装テロ集団と交戦し、撃退した。
同報道によると、武装テロ集団は大量の麻薬を放棄して逃走した、という。
一方、シリア人権監視団によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区での砲撃で2人が死亡した。
また調整諸委員会やシリア革命総合委員会によると同市ジャウラト・シヤーフ地区なども軍・治安部隊の砲撃があった。
さらにシリア人権監視団によると、タルビーサ市が軍・治安部隊の激しい砲撃に曝された。
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ダマスカス県では、シリア人権監視団によると、マイダーン地区で治安部隊の発砲で1人が死亡した。
また地元調整諸委員会によると、ジャウバル区で激しい発砲があった。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ムサイフラ町に対する軍・治安部隊の砲撃で子供2人が死亡した。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、マアッラト・ニウマーン市で軍・治安部隊の要撃により4人が、ハーン・シャイフーン市では砲撃で2人が死亡した。
シリア革命総合委員会によると、ザーウィヤ山で軍・治安部隊による砲撃が続いた。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市で反体制武装集団兵士2人が殺害され、シーラーズ村でも軍・治安部隊の砲撃で1人が死亡した。
反体制勢力の動き
シリア・クルド国民評議会は声明を出し、PKK系の民主統一党がハサカ県のアフリーン市、アイン・アラブ市、アームーダー市などで下部組織のメンバーを武装させ、検問所などを設置、実効支配を強める一方、民間人の拘束や民家の捜索などを行っている、と非難した。
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AFP(6月4日付)によると、シリア軍の上級士官が部下の士官2人とともに離反し、トルコ領内に非難した。
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ダマスカス県およびダマスカス郊外県で活動すると見られる調整(タンスィーキーヤ)約20団体が共同声明を出し、「ダマスカス炎上2」と銘打って7月6日に両県内各地の50の幹線道路でタイヤなどを燃やし、道路封鎖を行うと宣言した。
レバノンの動き
ミシェル・スライマーン大統領は、自由シリア軍がレバノン国内に軍事キャンプを設営しているとのスライマーン・フランジーヤ議員(マラダ潮流代表)の発言に関して、「そのような情報は得ていない」と否定した。
フランジーヤ議員は「北部県に自由シリア軍が5つの軍事キャンプを設営した」と発言していた。
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NNA(7月4日付)によると、北部県アッカール郡の対シリア国境に位置するアリーダ村で、シリア領内からの発砲で負傷した。
諸外国の動き
ロバート・ムードUNSMIS司令官は、ダマスカスのホテルで記者会見を開き、シリア作業グループ会合に監視して、「豪華なホテルで多くの言葉が交わされた…が、シリアでの暴力停止のための行動のレベルで達成されたのはほんのわずかだ」と非難した。
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インテルファクス通信(6月4日付)は、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官が「モスクワは米国とシリア大統領の将来に関して協議しない…。我々は何度も我々の立場を説明してきた。シリアでの権力をめぐる問題はシリア国民が決する、と」と述べたと報じた。
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中国外交部報道官は、「中国は現在、シリア作業グループの声明の実施が火急の課題だと考える」と述べ、その「本質」の実施を主唱する一方、「中国のシリア問題に対する態度は変わらない」と述べ、フランスで予定されているシリアの友連絡グループ会合に参加しない意向を示した。
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DFLPのナーイフ・ハワーティマ書記長は、シリア情勢に関して「シリア人民によって代表されている民衆運動、蜂起であり、自由と尊厳といった権利をめざしたもの」と支持を表明した。
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ヒューマン・ライツ・ウォッチはインターネットで声明を出し、2012年4月以降、シリアから避難してきた複数のパレスチナ人を恣意的に不当逮捕していると避難した。
国連によると、これまでパレスチナ人約500人がシリアからヨルダンに避難している、という。
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トルコ軍参謀本部はインターネットで声明を出し、シリア軍に撃墜された空軍機のパイロット2人の遺体がある場所を特定したと発表した。
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インテルファクス通信(6月4日付)は、ロシア高官の話として、シリア軍に撃墜されたトルコ空軍機が2度にわたりシリア領空の防空システムに対して「挑発行為」を行っていたと報じた。
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フランスのローラン・ファビウス外務大臣とイギリスのウィリアム・ヘイグ外務大臣はパリで会談し、シリアの体制転換を円滑に進めるためロシアに積極的な役割を果たすよう求めることを確認した。
AFP, July 4, 2012、Akhbar al-Sharq, July 4, 2012、AKI, July 4, 2012、al-Hayat, July 5, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 4, 2012, July 5, 2012、Naharnet.com,
July 4, 2012、NNA, July 4, 2012、Reuters, July 4, 2012、SANA, July 4, 2012などをもとに作成。
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