共和国護衛隊のマナーフ・トゥラース准将が離反、アラブ連盟事務局長はシリア危機がアナン特使のイニシアチブに則って平和的に解決されるべきとの見解を示す(2012年7月5日)

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国内の主な動き

親政府系のSyria Steps(7月5日付)は、治安当局高官の話として、共和国護衛隊のマナーフ・トゥラース准将(第105旅団長)が離反し、トルコに逃走した、と報じた。

Kull-na Shuraka', July 5, 2012

Kull-na Shuraka’, July 5, 2012

トゥラース准将はアサド大統領の親しい「学友」の一人で、父はハーフィズ・アサド前大統領の「盟友」だったムスタファー・トゥラース元国防大臣。

トゥラース家はヒムス県ラスタン市の出身。

同治安当局高官によると、「シリアのムハーバラートは彼を身柄拘束しようと思えばできた。彼の逃走は、シリアのムハーバラートが彼が外国と接触し、シリア国内のテロ活動を指揮しているとの充分な情報を得たあとの出来事で…、彼の脱走はまったく影響はない」。

イフバーリーヤ・チャンネル(7月5日付)によると、トゥラース准将は最近、共和国護衛隊の任務を解かれ、アサド大統領も任務の遂行・介入を行わないよう命令していた、という。

『ハヤート』(7月6日付)によると、マナーフ准将の家族、ムスタファー・トゥラース元国防大臣、ビジネスマンの兄フィラース・トゥラース氏、そしてその家族はみなパリに滞在中だという。

なお兄のフィラース氏もまた7月2日のフェイスブックの書き込みで、離反を示唆していた。

「シリアは、一定仕組みによる国際的な監視のもとに選ばれる国民制憲協会の設置に向かって進んでいる。これこそが目的だ。その実現の方法は平和的な政治運動各派と軍事化した各派の統合であり、組織された単一の勢力を創出することだ。そのとき、国際社会が危機を終わらせるために支援すべるため、いかに声をあげるかが分かるだろう。これを実現するため行動しなければならない」と綴っていた。

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アリー・ハイダル国民和解問題担当国務大臣(シリア民族社会党インティファーダ派)はヒムス県タッルカラフ地方の和解委員会が主催した国民対話会合に出席し、和解に向けた対話への参加を呼びかけた。

SANA(7月5日付)が報じた。

国内の暴力

ダイル・ザウル県では、SANA(7月5日付)によると、ダイル・ザウル市で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト側に大きな損害を与えた。

SANA, July 5, 2012

SANA, July 5, 2012

一方、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市、シュハイル市が軍・治安部隊の砲撃に曝された。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、クサイル市郊外のブワイダ村で民間人2人が親政府の武装集団に誘拐、殺害された。

またヒムス市のジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区などが砲撃にさらされた。

一方、SANA(7月5日付)によると、クサイル市で治安維持部隊が武装テロ集団と交戦した。

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ハマー県では、SANA(7月5日付)によると、ムーア村で電力公社のアブドゥッラー・アブー・ガーニム設備管理局長が乗った車が武装テロ集団によって襲撃され、同局長が暗殺され、車に同乗していた1人が負傷した。

一方、ハマー県では、シリア人権監視団によると、ラターミナ町が軍・治安部隊の砲撃に曝された。

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アレッポ県では、シリア正教会アレッポ司教区が声明を出し、アレッポ市スライマーニーヤ地区の司教区に隣接するビルに武装集団が押し入り、シリア軍の准将を誘拐した、と発表した。

一方、シリア人権監視団によると、アレッポ市のシャッアール地区、マイダーン地区、アアダミーヤ地区で、治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

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スワイダー県では、『クッルナー・シュラカー』(7月5日付)によると、スワイダー市フルサーン広場で爆発があり、反体制活動家マイーン・ラドワーン氏が死亡した。

この事件事件に関して、シリア人権監視団は、スワイダー市で爆発があり、「市民」1人が死亡したと発表した。

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イドリブ県では、反体制活動家(アブー・ガイス・ハーニー氏)によると、軍・治安部隊がハーン・シャイフーン市内に突入し、家や農地を焼き討ちにした、という。

同活動家によると、住民の80%はすでに避難し、また反体制武装集団は未明の戦闘で大きな損害を受けた、という。

別の活動家らによると、同市には戦車、装甲車約100両が突入し、砲撃を加えた、という。

またシリア人権監視団によると、マアッラト・ニウマーン市が砲撃に曝され、6人が殺害された。

このほか、ビンニシュ市、カフルアウク市、ジスル・シュグール市では夜間デモが発生した、という。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、カナーキル村、カタナー市に軍・治安部隊が突入し、カタナー市で反体制武装集団戦闘員を殺害した。

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タドムル県では、シリア人権監視団によると、タドムル市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市郊外で反体制武装集団の指導者1人が殺害された。

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ラタキア県では、シリア人権監視団によると、ラタキア市3月8日通りで爆弾が爆発し、多数が負傷した。

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AFP(7月5日付)は、複数の反体制活動家の話として、国外で集められた医療物資が密かに国内に搬入された、と報じた。

諸外国の動き

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、ドイツのギド・ヴェスターヴェレ外務大臣とモスクワで会談した。

Kull-na Shuraka', July 5, 2012

Kull-na Shuraka’, July 5, 2012

会談後、ラブロフ外務大臣は、6月1日にドイツを訪問した際、ドイツのアンゲラ・メルケル首相がアサド大統領の政治亡命を受け入れるようロシアに要請していたことを明かし、「ユーモアだと思った。私は彼女にユーモアを込めてこう返答した。あなた方ドイツ人が私たちの代わりにアサド氏を受け入れたらどうですか」と述べた。

ラブロフ外務大臣によると、話題は楽しい雰囲気のなかで終わったという。

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イラクのホシュヤール・ゼバリ外務大臣は、外務省での記者会見で、「個人的には、イエメン…モデルはシリアでは成功しないと思う。なぜなら、イエメン問題ではそうしたモデルを擁護する者がいたが、シリアではそのようなことを擁護する者はいないからだ」と述べた。

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アラブ連盟のアフマド・ベン・ヒッリー事務次長は記者会見で、シリア反体制勢力大会において「軍事的解決が適切だと考える一部アラブ諸国と一部反体制勢力がいたが、これは彼らの立場であって、アラブ連盟の立場ではない」と否定、アナン特使のイニシアチブに沿って平和的に解決されるべきだとの見解を示した。

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ロバート・ムードUNSMIS司令官はダマスカスで記者会見を開き、「現地に展開する監視団の統合を来週中に行い…、シリア国民のニーズや要求により適切に応えるべく組織改編・調整を継続するだろう」と述べた。

またUNSMISの武装化の是非に関して、「監視団の武装は良い選択肢ではない…。武器を持たずに来たことで、シリア国民から歓待され…、これが監視団を守ってきた…。銃を持っていれば、状況はまったく異なってしまうだろう」と述べた。

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トルコ軍は、シリア軍が撃墜した空軍機のパイロット2人の遺体を回収した、と発表した。

遺体はシリア海岸沖8.6キロ、推進1,260メートルの地点から回収された。

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ウィキリークスは、2006年8月から2012年3月までにシリア政府高官が送受信したメール248万4899通を公開するとの声明を出した。

http://wikileaks.org/syria-files/
http://wikileaks.org/syria-files/releases.html

AFP, July 5, 2012、Akhbar al-Sharq, July 5, 2012、al-Hayat, July 6, 2012、Kull-na Shurakaʼ, July 5, 2012、Naharnet.com, July 5, 2012、Reuters,
July 5, 2012、SANA, July 5, 2012、Syria Steps, July 5, 2012などをもとに作成。

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