アサド大統領がインタビューに応え国内で活動するアル=カーイダ系組織に関する警鐘を鳴らしたうえで反体制勢力を支援している西側諸国を非難、一方ダマスカス県では爆弾テロが発生し負傷者多数(2012年6月28日)

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アサド政権の動き

アサド大統領はイラン国営放送(第4チャンネル、6月28日付)のインタビューに応え、西側諸国が反体制勢力を密かに支援していると非難した。

SANA, June 29, 2012

SANA, June 29, 2012

アサド大統領は「西側諸国と一部の(中東)地域の国々が…シリアの武装集団を支援していることは明らかだ…。我々には…これらの国が介入していることを示す物的証拠はない…。支援はほとんどの場合、密かにそして間接的になされており、各国政府は直接には関与してない…。しかし、これらの国々の政治的姿勢を見ると関与はきわめて明白である。一部の国は武装闘争を支援しているとさえ公言しているのだから」と述べた。

アナン特使の停戦案に関しては、「停戦案が失敗したと言うことは間違いだ。アナン特使の停戦案を支援するといっている者たち(西側諸国)は、実際にはそれを頓挫させ、国連安保理でシリアを非難できるようにしようとしている…。我々にとってそれは良い案だ。なぜなら、テロ集団の暴力停止や一部の国による武器供与停止を謳っているからだ…。現在もそして今後も有効だ」と述べた。

そのうえで「アル=カーイダを初めとする宗教的に過激な集団がテロに関与している」と付言した。

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イラン国営放送のインタビューに関して、SANA(6月29日付)がアサド大統領の発言内容の詳細を報じた。

同通信社によると、アサド大統領はインタビューで、堅固な国内状況が外国による武器資金提供といった介入の成功を阻止する真の障壁となっている、と述べた。

またアナン特使の停戦案に関して、今後も有効であり続けるとしたうえで、同案がテロ集団による犯罪行為の停止と外国によるテロ集団への武器資金供与の停止を求めている点をとりわけ高く評価していると語った。

そのうえで、西側諸国と一部地域諸国はアナン特使を支持しつつ、停戦案を失敗させることで、シリアを非難し、シリアに対抗するための決議を安保理で採択しようとしている、と批判した。

西側諸国による武力介入の可能性に関しては、「彼らにわずかながら残されている知性が、軍事行動に向かうことを抑えるだろう。なぜならこの地域は地政学的に重要であり、その社会的構成は「活断層」を形成しているからだ」と述べた。

一方、アサド大統領は、シリアがレジスタンス(イスラエルの占領に対する抵抗)、アラブ・イスラームの権利を支持するという政治的姿勢をとってきたため、歴史を通じて常に外国の介入の試みに直面し、大国間の主戦場となってきた、と指摘した。

そのうえで、「シリアは、西側の方針ではなく、愛国的大衆的方針に基づき政策を築いてきたがゆえ、民衆が断念しない限りはパレスチナなどをめぐるレジスタンスを継続する」と強調した。

他方、アサド大統領は現下のシリアをめぐる動きには「さまざまな側面がある。パレスチナ、イラク、レバノンなどの諸問題をめぐるシリアの政治敵姿勢に反対する国が地域には複数あり、これらの国は現状がシリアが弱化・粉砕する好機だと考えている。またシリアの姿勢に必ずしも反対していないが、外国の意思に従わざるを得ない国や、自国および自国民の意思を明示できない国もある」と述べた。

国内での暴力に関しては、さまざまな外国人や宗教過激派が当初から殺戮を行っており、その数は現在増加しているとしたうえで、「アル=カーイダがシリアにいる。逮捕したメンバーは犯罪行為を行ったと自供している。アル=カーイダは米国が作り出し、アラブ(湾岸)諸国が資金援助している」と非難した。

紛争解決をめぐる国際社会の動きに関しては、「非シリア的、非愛国的なモデルが大国によって押しつけられることをシリアは受け入れない」と述べ、シリア人による政治的解決を主唱するロシア、中国、イランの姿勢を「客観的」と評価した。

またトルコに関しては、政府と国民を区別する必要があるとしたうえで、トルコ国民がシリアの実情の多くを知っており、その姿勢は好意的であると評価した。

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SANA(6月28日付)は、人民議会が、テロ活動を実行した公務員、テロ集団に所属した公務員、物心面でテロを支援した公務員の解職を定めた法案を可決した、と報じた。

同法案は近く大統領によって施行される見込み。

アナン特使の停戦イニシアチブ(「シリア作業グループ」会合)をめぐる動き

西側外交筋によると、アナン特使は、現政権と反体制勢力からなる暫定政府を樹立し、紛争の平和解決をめざす新提案を提示した。AFP(6月28日付)が伝えた。

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

同外交筋によると、「アナン特使が描いているイメージにおいては、アサド大統領だけでなく、一部の反体制勢力高官も排除する可能性も提案されている」。

一部西側外交筋によると、この提案は、30日にジュネーブで予定されている「シリア作業グループ」会合会合で、米国、イギリス、フランスだけでなく、ロシアと中国にも支持され、ロシアはアサド大統領の退任に同意した、というが、別の西側外交筋はこれを否定した。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、シリアに「過渡期」が必要で、変革を支持するとしつつ、「外国からシリアにいかなる解決策を課すことも支持しない」と述べ、アナン特使が提案しているとされる暫定政府構想に同意したとの一部西側外交筋の発言を否定した。

国内の暴力

ダマスカス県では、シリア・アラブ・テレビ(6月28日付)などによると、マルジャ地区の裁判所前の駐車場で爆弾が2発爆発し、3人が負傷、車複数台が大破した。

同報道によると、爆弾は3発仕掛けられていたが、3発目は爆弾処理班によって撤去された。

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

 

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

また治安筋によると、仕掛け爆弾は磁石で車の下にとり付けられていた、という。

ハミーディーヤ市場(ハミーディーヤ地区)入り口に位置し、通行人の往来が激しい場所で白昼発生したこのテロで死者が1人も出なかったのは奇跡的だと言える。

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ヒムス県では、SANA(6月28日付)によると、カルアト・ヒスン市で武装テロ集団がバアス大学石油化学工学部教授のアフラーム・イマード女史とその両親を暗殺した。

その後、通報により駆けつけた治安維持部隊が武装テロ集団と交戦し、テロリスト10人を殺害した。

殺害されたテロリストのうち2人はアラブ人(非シリア人)だった、という。

またタッル市では、治安維持部隊と武装テロ集団が交戦し、指名手配中のテロリスト1人が殺害された。

ヒムス市でも治安維持部隊が活動家のハーリド・ハマドが率いる武装テロ集団のメンバー多数を殺害した。

一方、シリア人権監視団によると、カルアト・ヒスン市で反体制武装集団のメンバー4人を含む6人が軍・治安部隊の突入で死亡した。

また、クサイル市郊外、タルビーサ市、ヒムス市ジャウラト・シヤーフ地区でそれぞれ1人が殺害された。

シリアの外務在外居住者省消息筋によると、ヒムス県旧市街に取り残されている市民、負傷者の搬出作業が、反体制武装集団の攻撃によって再び失敗した。

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

SANA, June 28, 2012

同消息筋によると、赤十字国際委員会とシリア赤十字社によるこの作業が失敗したのはこれで5度目。

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ダルアー県では、SANA(6月28日付)によると、カフルシャムス町で治安維持部隊が武装テロ集団のアジトに突入し、テロリストを逮捕、大量の武器弾薬を押収した。

現場には、武装テロ集団が粛清したと見られるテロリストの遺体12体が発見された、という。

またカフル・ナースィジュ市でも同様の作戦が行われ、テロリスト13人が逮捕された。

一方、シリア人権監視団によると、フラーク市やジャースィム市での砲撃や戦闘で5人が死亡した。

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イドリブ県では、SANA(6月28日付)によると、イドリブ市内の農業研究センター近くで武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、市民1人が死亡した。

また同市内のマフバズ・アーリー地区で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、子供3人が死亡した。

一方、シリア人権監視団によると、ハーン・シャイフーン地方、マアッラト・ニウマーン市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、軍・治安部隊兵士1人と反体制武装集団の戦闘員1人が死亡した。

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ダマスカス郊外県では、SANA(6月28日付)によると、ドゥーマー市西部の農地に潜伏する武装テロ集団のアジトを治安維持部隊が攻撃し、ムハンマド・ハドル率いるテロリスト4人を殺害した。

一方、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市での軍・治安部隊と反体制武装集団との交戦で、子供3人を含む一家12人と、反体制活動家3人が死亡した。

またフムームーヤ市、アルバイン市でも軍・治安部隊と反体制武装集団との攻勢でそれぞれ1人が死亡し、アルバイン市では軍・治安部隊の兵士4人(うち1人は中尉)が反体制武装集団の要撃で殺害された。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市での砲撃や戦闘で8人が死亡した。

反体制勢力の動き

シリア国民評議会は声明を出し、アサド大統領が残留するかたちでのいかなる政治プロセスにも参加しないと「確固たる明白な姿勢」を示し、アサド政権側に先んじてアナン特使の暫定政府構想を拒否する姿勢を明確にした。

Kull-na Shurakāʼ, June 27, 2012

Kull-na Shurakaʼ, June 27, 2012

またシリア国民評議会のサミール・ナシール氏はロイター通信(6月28日付)に対して、現政権と反体制勢力からなる暫定政府を樹立し、紛争の平和解決をめざすとするアナン特使の提案に関して、「この提案は我々にとって不明瞭だが、アサドの退任が明言されなければ、受け入れられない」と述べた。

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シリア・ムスリム同胞団は声明を出し、アナン特使の暫定政府構想を「徒労」と批判、拒否する姿勢を明示した。

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地元調整諸委員会は声明を出し、シリアの治安当局がハマースの指導者の一人カマール・ガンナージャ氏(通称アブー・アナス・ニザール)をクドスィーヤー市の自宅で暗殺したと発表した。

AFP(6月27日付)が報じたが、真偽は確認できない。

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『クッルナー・シュラカー』(6月28日付)は、「シリア革命」支持者がフェイスブックで「私の国は何と美しいのか」と書かれたTシャツを着てバドミントンをするアスマー・アフラス大統領夫人の写真(撮影日不明)に対して「ぜいたくな生活」だとの理解不能な批判をしている、と報じた。

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自由シリア軍はユーチューブ(6月28日付)で、シリア空軍のファラジュ・シハーダ・マクト少将(中央指導部本部司令官)、軍事情報局パレスチナ課のムニール・アフマド・シュライビー准将(対テロ課)をダマスカス県アダウィーの高速道路で拉致したと発表した。

https://www.youtube.com/watch?v=Ly6iOt-mMbU&feature=player_embedded

https://www.youtube.com/watch?v=Ly6iOt-mMbU&feature=player_embedded

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ジャディード・テレビ(6月28日付)は、シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン前事務局長が26日にレバノンを密かに訪問し、レバノンの複数の高官と会談していたと報じた。

同報道によると、ガルユーン前事務局長はその後、シリアに密入国し、ヒムス市に向かったと思われる。

ガルユーン前事務局長は26日にAFPに対して、数日中にシリア国内に入り、「革命家たちを鼓舞する」と語っていた。

トルコの動き

トルコからの報道によると、トルコ軍がキリス県、ハタイ県(シリア領アレキサンドレッタ地方)に地対空ミサイルなどを増強配備した。

Youtube, June 28, 2012

Youtube, June 28, 2012

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ドーアン通信(6月28日付)は、ガズィアンテップ市に駐留する部隊および地対空ミサイルなどをキリス県の対シリア国境地帯に配備した、と報じた。

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トルコの日刊紙『タラフ』(6月28日付)は、トルコが「自国国境内に安全保障回廊」を設置するため、対シリア国境地帯に地対空ミサイルを配備したと報じた。

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トルコの日刊紙『ミッリイェト』(6月28日付)によると、地対空ミサイルを搭載した軍車輌約30輌がハタイ県の基地を発ち、対シリア国境に向かった。image12

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TNT(6月28日付)は、地対空ミサイルを装備したM113装甲兵員輸送車の車列の映像などを放映した。

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またトルコの地元メディアによると、シャンウルファから対シリア国境に向かって、装甲車を積んだ汽車が向かったという。

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なお「アフバール・シャルク」(6月28日付)はトルコの地元メディアの話として、トルコ軍の対シリア国境への展開を受けるかたちで、アレッポ県の対トルコ国境沿いに位置するアイン・アラブ市でクルディスタンの「国旗」を掲揚した装甲車が複数展開していた。

アナトリア通信(6月28日付)によると、これらの旗は28日朝には下ろされていた。

諸外国の動き

NATO軍事委員会のクヌード・バルティルス議長は、「すべての政治的な手段が尽くされるまで、シリアとイランへの軍事的介入はなされないだろう」と述べた。

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UNHCRのパノス・ムムツィス(Panos Moumtzis)シリア難民担当調整官は、シリアから周辺諸国に避難した避難民の数が185,000人に上ると述べた。

AFP, June 28, 2012、Akhbar al-Sharq, June 28, 2012, June 29, 2012、al-Hayat, June 29, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 28, 2012、Naharnet.com, June 28,
2012、Reuters, June 28, 2012、SANA, June 28, 2012, June 29, 2012などをもとに作成。

 

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