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イフバーリーヤ・チャンネル襲撃
ダマスカス郊外県では、イフバーリーヤ・チャンネル(テレビ局)の消息筋によると、ドゥルーシャー市にある同チャンネル施設を午前4時半頃、武装集団が襲撃し、記者3人と守衛4人を殺害し、施設を爆破、機材などを盗んだ。
被害者のなかには手を縛られ殺された者もいた。
またこの襲撃で9人が負傷し、7人が誘拐された。
ウムラーン・ズウビー情報大臣は現場を視察し、記者団を前に事件を「報道の自由と報道倫理に対する虐殺行為」と非難した。
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SANA(6月27日付)は、シリアの報道関係者らがダマスカス県内のラジオ・テレビ機構前でイフバーリーヤ・チャンネルに対する「テロ」に抗議する座り込みを行った。
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SANA(6月27日付)は、人民議会がイフバーリーヤ・チャンネルに対する「テロ」を非難する決議を採択した、と報じた。
また進歩国民戦線加盟政党やジャーナリスト連合なども相次いで非難声明を出した。
国内でのその他の暴力
ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、マヤーディーン市で軍・治安部隊と反体制武装集団が交戦し、軍・治安部隊の兵士少なくとも10人が殺害された。
また軍・治安部隊の兵士15人が離反した、という。
一方、SANA(6月27日付)によると、ダイル・ザウル市内で治安維持部隊と武装テロ集団の交戦が続き、テロリスト多数が殺害された。
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ダマスカス郊外では、SANA(6月27日付)によると、ドゥーマー市で治安維持部隊が道路封鎖を試みた武装テロ集団と交戦し、ムハンマド・ワリード・イドリース、ウマル・ダルウィーシュらテロリスト3人を殺害した。
一方、シリア革命総合委員会によると、ダイル・アサーフィール市に対して、軍・治安部隊が砲撃を加えた。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊がハーン・スブル村に対して砲撃を加えた。同市では26日からの反体制武装集団と軍・治安部隊が交戦している、という。
一方、SANA(6月27日付)によると、アイン・ハムラー村で街道を封鎖しようとした武装テロ集団と治安維持部隊が交戦し、テロリスト4人を殺害した。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団が県北東部のマンナグ航空基地を襲撃した。
これに対して、軍・治安部隊がマンナグ村に進軍し、逮捕・摘発活動を行った、という。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のジャウラト・シヤーフ地区、カラービース地区に対する砲撃を継続した。
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ダルアー県では、シリア革命総合委員会によると、ダルアー市で続けられているゼネストによりライフラインが逼迫している、という。
国内のその他の動き
『クッルナー・シュラカー』(6月27日付)は、シリア当局がビジネスマンのフィラース・トゥラース氏と、俳優のジャマール・スライマーン氏を反体制運動に資金援助しているとの容疑で指名手配したと報じた。
フィラース・トゥラース氏はムスタファー・トゥラース元国防長官の長男で、トゥラース家はヒムス県ラスタン市出身。
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『クッルナー・シュラカー』(6月27日付)は、シリア共産党ウィサール・ファルハ・バクダーシュ派のアンマール・バクダーシュ書記長が、カドリー・ジャミール議員(変革解放人民戦線、人民意思党)の入閣に不快感を示している、と報じた。
カドリー・ジャミール議員は、シリア共産党ウィサール・ファルハ・バクダーシュ派のもとメンバーで、2000年代初めに離党し、シリア共産主義者国民統一委員会(通称シリア共産党カースィユーン派)を結成、その後、シリア民族社会党インティファーダ派などとともに変革解放人民戦線を結成し、5月の人民議会選挙で5議席を獲得、入閣していた。
なおシリア共産党バクダーシュ派とともにユースフ・ファイサル派が与党連合の進歩国民戦線に加盟している。
反体制勢力の動き
シリア国民評議会の連絡事務所筋は、評議会が5月からトルコとヨルダンの避難民キャンプにいる自由シリア軍の士官や義勇兵への給与振り込みを開始した、と述べ、振込がなされていないとのリヤード・アスアド大佐司令官の発言を否定した。
また国内で戦う離反兵や戦闘員に関しても、近く給与支払いが開始されると述べた。
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シリア国民評議会は、シリア国民評議会のバスマ・カドマーニー女史が反体制活動家とともに銃を握って映っている写真に関して、カドマーニー氏の写真ではない、と否定した。
写真はトルコのウェブサイトに掲載されたとして「シリア・ポリティク」(6月14日付)が公開していた。
http://www.syria-politic.com/ar/Default.aspx?subject=754#.T-njP_XDdmo
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ドイツなどで活動する反体制組織、シリア近代民主党は、イフバーリーヤ・チャンネルに対する「テロ」に関して、「シリア政府に従うメディア、とりわけイフバーリーヤとドゥンヤー・チャンネルは…「テロと専制の特権を与えられた機関」であり…、革命にとって合法的標的だ」と述べ、反体制武装集団による襲撃を是認した。
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シリア革命総合委員会報道官のハーニー・アブドゥッラーなる活動家は、AKI(6月27日付)に対して、赤十字国際委員会とシリア赤新月社によるヒムス市内の負傷者および住民の搬出作業が、軍・治安部隊の砲撃によって再び失敗したと述べた。
同活動家によると、搬出作業が失敗したのはこれで3度目。
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シリア国民評議会は、声明を出し、ダイル・ザウル市および周辺都市が数週間に及ぶ軍・治安部隊の砲撃により「被災都市」となったと発表し、シリア国民ではなく、国際社会に対してアサド政権の暴力停止のための行動を求めた。
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『デイリー・テレグラフ』(6月27日付)は、アレッポ軍事病院の集中治療科長で最近トルコに避難した軍医の証言をもとに、逮捕された反体制活動家の負傷者が拷問、放置されたり、反体制運動に関する情報提供量によって異なった治療を受けている、と報じた。
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『クッルナー・シュラカー』(6月27日付)は、6月18日にダマスカス県カフルスーサ区で逮捕されたイサーム・タキー弁護士ら反体制活動家数十人がダマスカス検察庁に告訴されたと報じた。
諸外国の動き
アナン特使は、6月30日にジュネーブで「シリア作業グループ」会合を開催すると発表した。
会合は外相レベルで行われ、安保理常任理事国代表が参加するほか、トルコ、EU、国連事務総長の代表、そしてカタール、クウェート、イラクの代表がアラブ連盟の代表として招聘された。
イランとサウジアラビアは招聘されなかった。
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6月30日にジュネーブで開催予定の「シリア作業グループ」会合に関して、ロシアのヴィタリー・チュルキン国連代表大使は『ハヤート』(6月28日付)に、イランとサウジアラビアが招聘されなかったことへの遺憾の意を示した。
チュルキン国連代表大使は「シリアの移行プロセスは、政府と反体制勢力の政治プロセスへの参加を通じて、シリア人によって決せられねばならない…。イランがジュネーブでの会合に参加しないのは残念だ…。彼ら(サウジアラビア)も影響力のある当事者であるため、招待されねばならなかった。しかし、アラブ連盟によって(同国は)代表されている…と考える」と述べた。
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フランス外務省報道官は、6月30日にジュネーブで開催予定の「シリア作業グループ」会合に関して、「シリアでの民主的転換の原則やプロセス、そして暴力停止、人道支援…といった優先事項が合意される」と述べ、アサド政権打倒「後」の政治プロセスを議論されるべきとの意思を示した。
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ヒラリー・クリントン米国務長官は、6月30日にジュネーブで開催予定の「シリア作業グループ」会合に関して、「ポスト・アサド時代にシリアを導くための民主的転換を準備する」努力を支持すると述べ、危機の政治的解決をめざすアナン特使や国際社会の機運を牽制した。
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AFP(6月27日付)によると、国連人権理事会の調査委員会は、ヒムス県ハウラ地方での「虐殺」に関して、「現時点で責任者が誰だったのかを特定することはできないが、親政府の勢力が殺害の多くを行ったと思われる」と報告書で結論づけた。
2012年2月から6月のシリア国内の暴力に関する調査報告のなかで、委員会はまた「タッルドゥー市で24時間以上行われた暴力行為にはおそらく三つの当事者が参加した。シャッビーハ、親政府の民兵、そして暴力激化を望む反体制勢力ないしは外国の勢力、である…。既存の証拠に基づくと、調査委員会はこれらの仮説のいずれをも排除できなかった」とした。
さらに「一部地域では、戦闘は国際的性格を持たない武力紛争となりつつある」と述べ、事態の悪化に懸念を示した。
ヒムス県ハウラ地方での「虐殺」に関する国連人権理事会の調査委員会の報告に対して、シリアのファイサル・ハッバーズ・ハマウィー代表は「目に余るほどの政治化してこの会合に参加はしない」と述べ、会合途中で議場を退席、抗議の意を示した。
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米中東和平基金(The Foundation for Middle East Peace)は、シリア・アラブ共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師および同国のキリスト教司教・司祭からなる使節団の訪米を中止したと発表した。
中止に関して、同基金のフィリップ・ウィルコック代表は、ハッスーン師が欧米諸国で自爆攻撃が行われるだろうと述べたこと(http://www.youtube.com/watch?v=F6sJa8iiOmM)が理由だと述べた。
なお「アフバール・シャルク」(6月27日付)は、共和国護衛隊の複数の消息筋の話として、ハッスーン師らの米国派遣は、バアス党シリア地域指導部の民族治安局の提案に基づいた動きだと報じた。
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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は、軍の祝賀会に出席し、シリア軍によるトルコ空軍機撃墜に関して「明白且つ差し迫った脅威」と非難したが、「いかなる国をも攻撃する意思はない」と述べ、軍事的報復を否定した。
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ロイター通信(6月27日付)は、複数の消息筋の話として、イランのタンカー3隻が近くシリアのタルトゥース港に到着し、灯油などを供給する、と報じた。
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イタリアのジュリオ・テルツィ・ディ・サンタガタ外務大臣がレバノンを訪問し、ミシェル・スライマーン大統領、ナジーブ・ミーカーティー首相、ナビーフ・ビッリー国民議会議長と相次いで会談、シリアの混乱のレバノンへの波及に危機感を示した。
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ロシアのインテルファクス通信(6月27日付)は、軍消息筋の話として、ロシア軍が近く戦闘ヘリコプターや防空システムをシリアに追加供与するだろうと報じた。
AFP, June 27, 2012、Akhbar al-Sharq, June 27, 2012、AKI, June 27, 2012、Aljazeera.net, June 27, 2012、The Daily Telegraph, June 27, 2012、al-Hayat, June 28, 2012、Kull-na Shurakaʼ, June 27, 2012、Naharnet.com, June 27,
2012、Reuters, June 27, 2012、SANA, June 27, 2012などをもとに作成。
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