2012年5月16日のシリア情勢

アサド政権の動き

アサド大統領はロシア24テレビ(5月16日付)のインタビューに応じ、西側諸国とのメディア戦争に当初は敗北しそうだったが、長期的には「メディアは現実を打ち負かすことはできない…。状況は変わっている。なせなら実際に起きていることはメディアのレポートとは大きく異なるからだ」と述べた。

RT, May 16, 2012

RT, May 16, 2012

また「シリア政府は自らの立場を世界中の記者に伝えようとしてきたが、一部の通信社は紛争当初に作り出された嘘や偽りの映像に固執する人々にだけシリア(のニュース)を配信し続けている」と批判した。

シリア国民評議会に関して、アサド大統領は「外国で活動している組織で…影響力がなく…、シリア国民の国益に反して活動している…。選挙ボイコットの呼びかけは…人々(との関係)をボイコットせよという呼びかけに等しい…。自分たちを国民の代表だと言っている彼らがどうして人々をボイコットできるのか?…私は彼らにいかなる意義も重要性もあるとは考えない」と述べた。

また自由シリア軍については、「何よりも先ず彼らは自由でない」と述べ、外国から武器や資金を供与されている組織が自由であるはずがないと批判するとともに、「死刑判決を受けた犯罪者集団で、アル=カーイダ系の宗教的過激派・テロリスト、さらにはアラブ諸国などから来た外国の傭兵からなっている」と指摘した。

そのうえで、シリア当局が多くの外国人傭兵をすでに捕捉しており、そのことを世界に向けて発表する準備をしていることを明らかにした。

西側のバッシングに関しては、「政府側の暴力について指摘するが、テロリストについては一言も触れていない…。アナン氏は今月シリアを訪れるが、私は彼にこのことを伝えたい…。 これらの国々の指導者たちは、(アラブの春の蜂起が)春ではなく、混沌だということが明らかになった。私は「シリアにこの混沌を拡げようとすれば、苦しむのはあなたたちだ」と言ったが、彼らはそのことをよく理解している」と述べた。

また西側の経済制裁については、「制裁は政府ではなく、一般の人々にだけ影響を与える…。我々はこうした困難を克服するためオルターナティブを見つけようとしている」と述べた。

フランソワ・オランド仏大統領に関しては、「きっと中東とアラブ世界に混沌を拡げるような政策をとらないだろう」と述べ、期待感を示した。

ロシアと中国の姿勢に関しては、「政体」やアサド大統領個人を支持しているのではなく、国際社会の安定化を支持していると評価した。

http://www.youtube.com/watch?v=8GcD4sz6K8o

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アサド大統領は2012年法令第169号を発し、第10期人民議会当選者を承認した。

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ファイサル・ミクダード外務在外居住者次官は、マナール・チャンネル(5月16日付)で、「レバノン領からテロ集団がシリアに攻撃を行っており…、これらのテロリストはレバノンの一部の勢力の支援を受けている」と断じたうえで、「レバノンでシリアに敵対する者が勝つことはないだろう」と述べた。

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『クドス・アラビー』(5月16日付)は、シリアの複数の政治筋の話として、6月に在外の反体制勢力とアサド政権の対立が緩和し、国民対話が開始され、選出間もない第10期人民議会が解散する可能性が高いと報じた。

国内の暴力

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、ハーン・シャイフーン市で治安部隊の発砲により5人(子供1人、男性1人、離反兵3人)が死亡した。

またサラーキブ市では兵士3人が離反した。

アブー・ハマームを名のる反体制活動家は、「ハーン・シャイフーン市での攻撃で包囲されていたUNSMIS隊員6人は市内の安全な場所に避難し、反体制勢力と一晩を過ごし…、国連が3台の車を手配し、隊員を移送した」と述べた。

ハマーム氏によると、ハーン・シャイフーン市では一晩中、砲撃が続いていたという。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市シャンマース地区に対して軍・治安部隊が「戦場処刑」を行い、アブー・フライラ・モスクのイマーム、マルイー・ザクリート師を含む15人を殺害した。

シリア赤新月社のアブドゥッラフマーン・アッタール総裁は、ヒムス市クスール地区で救急医療活動を行っていたシリア赤新月社車輌が14日に砲撃に遭い、医療隊員2人が負傷した、と発表、強く非難した。

しかし、アッタール総裁は、ヒムス市およびヒムス県全域で引き続き人道・救急医療活動を継続するとの意思を示した。

これに対して、『ザマーン・ワスル』(5月16日付)は、ヒムス市の赤新月社が、ボランティア隊員2人(アフマド・アトファ氏、ジハード・ハーキミー氏)が政治治安部に身柄拘束されたことに抗議して、市内での活動を凍結した、と発表したと報じた。

このほか、SANA(5月16日付)によると、武装テロ集団がヒムス市で治安維持部隊兵士を射殺した。またシリア人権監視団によると、ラスタン市で軍・治安部隊の発砲により1人が死亡した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市の避難民キャンプで子供1人を含む3人が治安部隊の発砲で死亡した。

Kull-nā Shurakā’, May 16, 2012

Kull-nā Shurakā’, May 16, 2012

またムライハ村で逮捕・摘発活動を行う治安部隊が市民1人を射殺した。

一方、SANA(5月16日付)によると、武装テロ集団がナーズィヒーン地区で市民に向け発砲し、子供1人を殺害、16人を負傷させた。

またザイズーン村で、武装テロ集団がシャイフのムーサー・アフマド・アウダ師を暗殺した。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ラターミナ町に軍・治安部隊が突入し、離反兵と交戦した。

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アレッポ県では、SANA(5月16日付)によると、武装テロ集団がダイル・ファーヒラ市にある土地改良公社の技術者1人を殺害した。

反体制勢力の動き

シリア国家建設潮流は声明を出し、アラブ連盟主催の反体制勢力大会開催失敗を踏まえ、アラブ連盟に対して現下のシリアの危機に関する問題から手を引きよう求めた。

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シリア国民変革潮流は声明を出し、アラブ連盟主催の反体制勢力大会延期に対して遺憾の意を示した。

レバノンの動き

レバノンのアラブ民主党のリフアト・イード党首は、トリポリ市内での対立に関して「アラブ軍」がレバノンに駐留することなく安定は回復しないだろう、と述べ、シリア軍の介入を通じた事態収拾を示唆した。

諸外国の動き

『ワシントン・ポスト』(5月16日付)は、サウジアラビア、カタールなど湾岸アラブ諸国が月数百ドルの資金援助を反体制武装集団に行う決定をし、シリア・ムスリム同胞団も独自の援助チャンネルを設置したことで、反体制武装集団が武器・装備を拡充し、ラスタン市奪還などの成果をあげた、と報じた。

同報道によると、米国もまた「非軍事的な支援」(nonlethal assisatnce)を増加させる一方、友好国との調整を続けている、という。

http://www.washingtonpost.com/world/national-security/syrian-rebels-get-influx-of-arms-with-gulf-neighbors-money-us-coordination/2012/05/15/gIQAds2TSU_story.html

『ハアレツ』(5月16日付)は、イスラエル高官の話として、イスラエルの軍事情報局のアヴィブ・コシャヴィ少将が2週間前に米ワシントンと国連本部を秘密裏に訪問し、イランの核問題、シリア情勢、ヒズブッラー対策などを協議、アサド政権の存続がイスラエルの国益に資するとの従来の姿勢を改め、その打倒が国益にかなうとの姿勢に転換したと報じた。

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国連のマーティン・ニスルキー報道官は、UNSMIS車輌が破壊されたイドリブ県ハーン・シャイフーン市での軍・治安部隊による攻撃に関して、隊員が「危険な状態」に曝されているとの懸念を表明し、「シリア政府は自らが支配する地域における隊員の安全を最優先するべき」と述べた。

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アラブ連盟のナビール・アラビー事務総長は、ナースィル・カドゥワ・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同副特使とカイロで共同記者会見を開き、16~17日に予定されていたシリアの反体制勢力の大会の延期に関して、「連盟はすべての反体制勢力と等距離で、一当事者を犠牲に別の当事者を支援することはない」との姿勢を改めて確認した。

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キャサリン・アシュトン欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長の報道官はシリア情勢に関して、アサド政権に暴力の即時停止を改めて求めた。

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国連の拷問禁止委員会は声明を出し、アサド政権による「組織的拷問」を非難、その停止を求めた。

AFP, May 16, 2012、Akhbār al-Sharq, May 16, 2012、AKI, May 16, 2012、Haaretz, May 16, 2012、al-Ḥayāt, May 17, 2012、Kull-nā Shurakā’, May 16, 2012、Naharnet.com, May 16, 2012,
May 18, 2012、al-Quds al-‘Arabi, May 16, 2012、Reuters, May 16, 2012、RT, May 16, 2012、SANA, May 16, 2012、The Washington Post, May 16, 2012、al-Waṭan, May 16, 2012、Zamān al-Waṣl, May 16, 2012などをもとに作成。

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