シリア国民評議会のガルユーン事務局長が辞意を表明、UNSMISが展開されていないヒムス県ではラスタン市に対して軍・治安部隊が激しい砲撃を加える(2012年5月17日)

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反体制勢力の動き

シリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン事務局長は声明を出し、辞意を表明した。

Kull-na Shurakā’, May 17, 2012

Kull-na Shuraka’, May 17, 2012

声明でガルユーン事務局長は、「シリア国民評議会内での事務局長選挙結果が様々な反応や批判を巻き起こした…。コンセンサスないしは選挙に基づいて新たな候補者が選ばれ次第辞職を発表する…。私はコンセンサスを受けて立候補を受け入れた。私は自分が分裂をもたらす立候補者であることを受け入れない。私はいかなる地位にも固執しない」と述べた。

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ブルハーン・ガルユーン事務局長の辞意表明を受け、地元調整諸委員会は声明を出し、シリア国民評議会からの脱退の可能性を宣言した。

声明において、地元調整諸委員会は、「我々が評議会の活動への参加を見合わせて2ヵ月が経ち、最近ではローマでの事務局会合への参加も見送ってきたが、評議会が自らの過ちを検証せず、評議会改革に必要と考えられる諸要求に応じなければ…、参加凍結を開始し、脱退する」と表明した。

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反体制活動家のファウワーズ・タッルーがシリア国民評議会からの脱退を宣言した。

しかしシリア国民評議会は声明で、タッルー氏がシリア国民評議会のメンバーではなかったと主張した。

国内の暴力

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ラスタン市に対して軍・治安部隊が昼夜、激しい砲撃を続けた。

同市にはUNSMISは展開していない。

また地元調整諸委員会によると、ヒムス市ハーリディーヤ地区、ジャウラト・シヤーフ地区に対して、軍・治安部隊が激しい砲撃を加えた。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アルバイン市、カナーキル村で治安部隊による大規模逮捕・摘発が行われ、クタイファ市では軍・治安部隊と離反兵が交戦した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ダルアー市で治安部隊がゼネストを中止させるため展開を強化した。

Kull-na Shurakā’, May 17, 2012

Kull-na Shuraka’, May 17, 2012

シリア革命総合委員会によると、身柄拘束された少女(リーター・ジャマール・ジャフマーニーさん)との連帯を訴え市内複数地区でゼネストが行われている、という。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市内の2カ所で爆発が起きた。

一方、アレッポ大学では、医学部キャンパス内のハーフィズ・アサド前大統領の記念碑が破壊された。

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ユーチューブ(5月17日付)に、アレッポ大学前を通過する国連の車輌に軍服姿の男性が襲いかかる映像が公開された。

「アフバール・シャルク」(5月23日付)によると、この車輌はUNSMISの車輌で、襲いかかった男性は治安機関の兵士だという。

http://www.youtube.com/watch?v=2TGcGDKmwO0&feature=youtu.be

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ハサカ県では、『クッルナー・シュラカー』(5月17日付)によると、アームーダー市でPKK系のクルド民族主義政党の民主統一党メンバーが消費公社による住民への砂糖配給に介入しようとしたのを、政治治安部が阻止しようとして、対立が激化、銃撃戦に発展した。

また『クッルナー・シュラカー』(5月18日付)は、シリア・クルド民主合意政治局メンバーのムハンマド・サーリフ・ウスマーン氏(通称サーリフ・スーフィー)がカーミシュリー市で政治治安部によって逮捕したと報じた。

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シリア人権ネットワークによると、軍・治安部隊の弾圧や反体制武装集団との戦闘で6人が死亡した。内訳はイドリブ県2人、ダマスカス県・郊外県2人、ダルアー県1人、ラッカ県1人。

アサド政権の動き

SANA(5月17日付)によると、ファイサル・ミクダード外務在外居住者次官は、第10期人民議会選挙後の組閣に関して、「挙国一致内閣となるだろう…。我々はシリア建設のために行動する意思があるすべての建設的な反体制組織を歓迎する」と述べた。

また反体制武装集団に関して、「武装テロ集団はアナン特使の和平案を履行していない…。問題なのはそもそもUNSMISを望んでいなかった国(の動き)だ」と非難した。

レバノンの動き

レバノンの声ラジオ(5月17日付)は、ファタハ・イスラームのメンバー6人が南部県サイダー郡にあるアイン・フルワ・パレスチナ難民キャンプを脱走したと報じた。

ナハールネット(5月18日付)によると、ハイサム・シャアビー、アブー・ムハンマド・タウフィーク・ターハー、ムハンマド・アーリフィー、ズィヤード・アブー・ニアージュ、ムハンマド・イブラーヒーム・マンスール、ウサーマ・シハービー。

『ジュムフーリーヤ』(5月18日付)は、このうちアブー・ニアージュら5人がアル=カーイダのメンバーだと報じる一方、『ナハール』(5月18日付)は、彼らがジュンド・シャームとファタハ・イスラームのメンバーだと報じた。

『ジュムフーリーヤ』(5月18日付)によると、6人はシリアで「特別な任務」を実行するため、トリポリに向かったという。

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シリアの反体制勢力は対レバノン国境地帯(シリア領内)で2週間前に拉致したレバノン人2人(はドゥル・フサイン・ハリール・ジャアファル氏、アブドゥッラー・ザイン氏)を釈放した。

これに対してレバノンのジャアファル家側は、シリアの反体制活動家2人を含むシリア人39人を見返りとして釈放した。

この「捕虜交換」はシリア領内のズィーター市で行われた。

諸外国の動き

イスラエルのエフード・バラク国防大臣は、CNN(5月17日付)に対して、「(アサド政権)崩壊が遅れていて失望する…。アサド政権は完全に終わったと考えている」と述べた。

また「方法を案出すべきだと思う…。シリアの体制を転換させるために。イエメン方式にするのがよい。つまりアサドとその取りまきが国を去るが…、党、諜報機関、軍は解体しないという方法が」と付言した。

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ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ首相は、サンクト・ペテルスブグル市で講演し、5月18~19日に米国で開催されるG8首脳会議に出席し、シリア情勢などを協議したいとの意思を示すとともに、「外国の主権に関する事柄への外国の干渉は破壊的な内戦をもたらすだろう」と述べ、シリアへのバッシングを続ける西側諸国の姿勢を暗に批判した。

AFP, May 17, 2012、Akhbar al-Sharq, May 23, 2012、CNN, May 17, 2012、al-Hayat, May 17, 2012, May 18, 2012、al-Jumhiriya, May 18, 2012、Kull-na Shuraka’, May 17, 2012, May 18, 2012、al-Nahar, May 17, 2012, May 18, 2012、Naharnet.com, May 17, 2012、Reuters, May 17,
2012、al-Safir, May 18, 2012、al-Watan, May 17, 2012、Youtube, May 17, 2012などをもとに作成。

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