アサド大統領が最高憲法裁判所の設置を定める2012年政令第35号を発令、民主的変革諸勢力国民はカイロで予定されているアラブ連盟主催のシリア反体制勢力大会に参加せず(2012年5月13日)

Contents

アサド政権の動き

アサド大統領は、最高憲法裁判所の設置を定めた2012年政令第35号を発令した。

SANA, May 13, 2012

SANA, May 13, 2012

最高憲法裁判所は大統領を含む7人から構成され、新憲法に基づき、大統領(任期7年)の再任の是非を審査する。

http://www.sana.sy/ara/2/2012/05/14/418652.htm

第10期人民議会選挙をめぐる動き

SANA(5月13日付)は、ダマスカス郊外県の14カ所で第10期人民議会選挙の再投票が行われたと報じた。

国内の暴力

スーリーユーン・ネット(5月13日付)は、イラクのアル=カーイダの元指導者だというアブー・ウマルを名のる活動家が、シリア国内でのイスラーム主義者によるとされる自爆テロはシリアのムハーバラートによる仕業だと述べた、と報じた。

**

イドリブ県では、シリア人権ネットワークによると、タマーニア町に軍・治安部隊が装甲車などを投入し、反体制運動を支持する住民を逮捕、「50%以上の家屋を焼き打った」。

同ネットワークによると、タマーニア町による住民は、アサド政権を支持し、「シャッビーハ」を輩出しているとされる隣接するアズィーズィーヤ村(アラウィー派の村)の「怒り」を買っており、両村の対立はアズィーズィーヤ村出身の「シャッビーハ」がタマーニア町の青年2人を殺害したことで激化していた、という。

シリア人権監視団によると、この掃討作戦で、女性2人を含む市民5人が死亡した。

**

ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市、ドゥマイル市で治安部隊が市民2人を射殺した。

一方、「イバーダ大隊」を名のる離反兵を指揮していたサッターム・カラーウ(アブー・ウダイ)氏が、ドゥーマー市での軍・治安部隊との戦闘で殺害された。

同大隊は、過去数ヶ月にわたり軍・治安部隊を襲撃していた、という。

地元調整諸委員会やシリア人権監視団によると、ドゥーマー市などグータ東部では軍・治安部隊が激しい砲撃を加え、活動家・市民らを逮捕している、という。

Kull-na Shurakā’, May 13, 2012

Kull-na Shuraka’, May 13, 2012

**

ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ダイル・ザウル市で離反兵(少尉)が要撃を受け殺害された。

一方、SANA(5月13日付)は、フワーイジュ・ズィーバーン町で武装テロ集団が治安維持部隊に発砲し、1人を殺害した、徒報じた。

**

ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ラスタン市で治安部隊が市民1人を射殺した。

**

ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ナワー市での軍・治安部隊と離反兵の交戦で、離反兵2人が殺害された。

一方、ハーッラ市での交戦では、軍・治安部隊兵士4人が殺害された。

**

イドリブ県では、シリア人権監視団によると、タッフ村などで住民が反体制デモを行った。

一方、『ハヤート』(5月14日付)は、シリア・トルコ国境に敷設された地雷撤去を行っていたボランティア活動家6人(シリア人)が地雷の爆発に巻き込まれ負傷したと報じた。

**

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市サラーフッディーン地区でアレッポ大学学生ら数十人が反体制デモを行った。

一方、SANA(5月13日付)によると、武装テロ集団がアレッポ市南部の変電所に勤務する技師1人を暗殺した。

反体制勢力の動き

民主的変革諸勢力国民調整委員会のハイサム・マンナーア在外局長は、5月16日にカイロで予定されているアラブ連盟主催のシリア反体制勢力大会に参加しないと述べた。

マンナーア氏は記者会見で、「5月10日にナビール・アラビー事務総長から突然の招待を受けたが、誰が招待し、誰が招待されたのか、そしてそれが何人かも知らされておらず、どのような根拠で招待者が決定されたのか、そして会合の組織的基礎、(回付される)ペーパー案がどこかも分からない」と述べた。

またこうした招待が、シリア国民評議会の再編の失敗を受けた動きで、国民調整委員会、シリア民主フォーラム、シリア・クルド民主評議会などといった主要な反体制組織を排除しようとするものだと批判した。

なお国民調整委員会報道委員会によると、マンナーア氏は先週、チュニジアのムンスィフ・マルズーキー大統領と会談し、同大統領が軍事介入を拒否するとの姿勢と、反体制勢力の結集のための協力を行う意思があることを示した、という。

**

反体制活動家のファフド・ミスリー氏は、RT(5月14日付)に対して、シリア政府が過去2ヵ月の間にアル=カーイダのメンバーなどイスラーム主義者約500人を釈放し、「政府は彼らが攻撃してくることをよく知っている」たと述べた。

ミスリー氏は複数の友人からの情報として、アサド政権が、イスラーム解放党、アル=カーイダ、サラフィー主義者、ジハード主義者ら約500人をサイドナーヤー刑務所や軍事情報局パレスチナ課拘置所から釈放した、という。

また「政府は彼らが、自分たちに敵対してくるだろうということをよく知っている…。彼らはシリアの治安当局によってリクルートされ…、その後釈放された…。そのなかには現在アレッポに潜伏するアブー・ムスアブなどがおり、政府は彼が治安当局によって監視されていることを彼に知らしめている」と付言した。

その他の国内での動き

アサド政権を支持するムハンマド・ワリード・フィルユーン師(ダマスカス・ラフマ・モスク説教師)は、ドゥンヤー・チャンネル(5月13日付)で、「預言者の時代に倣って」、ハッジ、ウムラ、礼拝を廃止すべきだと述べた。

AFP, May 13, 2012、Akhbar al-Sharq, May 13, 2012、al-Hayat, May 14, 2012、Kull-na Shuraka’, May 13, 2012、Naharnet.com, May 13, 2012、Reuters,
May 13, 2012、SANA, May 13, 2012、Sūrīyūn.net, May 13, 2012、al-Watan, May 13, 2012、Zaman al-Wasl, May 13, 2012などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.