2014年1月7日のシリア情勢

反体制勢力の動き

イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)のアブー・ムハンマド・アドナーニー報道官は音声声明を出し、シリア革命反体制勢力国民連立、自由シリア軍参謀委員会を「合法的な標的」だと主張、襲撃を予告した。

アドナーニー報道官は「シャームの兵たちよ、覚醒は…疑う余地無く我々のもとにある。我々はその出現を期待し、疑わなかった…。しかし彼らは意表を突き、時期尚早なことに我々に退去を急かしている」と述べるとともに「ムジャーヒディーン軍、シリア革命家戦線の名で知られる者ども、彼らをせき立て、支援し、彼らとともに戦う者どもは…、イスラームの旗を掲げていようと…、あなた方を裏切り…、ムジャーヒディーンと戦うことを望み、唯一神教徒を裏切った」と非難した。

そのうえで「イラク・シャーム・イスラーム国は、(シリア革命反対勢力国民)連立と(シリア)国民評議会、そして(自由シリア軍)参謀委員会、軍事評議会が離反と背教の宗派であると宣言する。なぜなら彼らはダーイシュに宣戦布告し、戦争を始めたからだ」と強調、「こうした組織に与するものは、どこであれ、我々にとって合法的な標的である」と主張した。

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シャームの民のヌスラ戦線指導者のアブー・ムハンマド・ジャウラーニー氏によるとされる音声声明(http://www.youtube.com/watch?feature=player_embedded&v=gsaz2oBZ0TY)が出され、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とイスラーム戦線、ムジャーヒディーン軍などとの戦闘に関して「ムハージリーン(外国人戦闘員)とアンサール(シリア人戦闘員)の紛争と化すことに大いに警鐘を鳴らす」と主張、外国人戦闘員がイスラームの統一を強化するうえで重要だとしたうえで、戦闘を停止し、すべての組織が参加するシャリーア委員会を設置し、事態の正常化をめざすよう呼びかけた。

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シリア革命反体制勢力国民連立幹部のミシェル・キールー氏(シリア民主主義者連合)はラジオ・ロザナ(1月7日付)のインタビューに応じ、シャームの民のヌスラ戦線に関して「私はヌスラ戦線とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と同じように見ていない。ダーイシュは「我々はカリフ制を望み、我々を望まない者は殺す」と言う。しかし、ヌスラ戦線は選挙に基づくイスラーム体制について話している」と弁護した。

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シリア人権監視団は、1月3日から6日までのアレッポ県、イドリブ県、ラッカ県でのイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とムジャーヒディーン軍、イスラーム戦線などとの戦闘により、274人が死亡したと発表した。

死者の内訳は民間人46人(うち5人がダーイシュによって処刑される)、ムジャーヒディーン軍、イスラーム戦線などの戦闘員129人、ダーイシュ戦闘員99人(うち34人がザーウィヤ山で処刑されたダーイシュとジュンド・アクサー大隊戦闘員)。

シリア人権監視団はまた、12月15日から続く軍による「樽爆弾」などでの爆撃による死者数が585人に達したと発表した。

うち子供は172人、女性は54人、武装集団戦闘員は36人、ダーイシュ戦闘員は18人だという。

シリア政府の動き

ウムラーン・ズウビー情報大臣は記者会見を開き、「我々は、その政治的未来において、挙国一致政府、拡大政府が樹立されねばならないことをよく理解している。しかし、(反体制勢力が求める)移行期統治機関なるものは存在しない」としたうえで、「シリア人が参加し、意見を表明する合法的な…選挙で、アサド大統領は共和国大統領としてとどまる」と述べた。

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シリア部族連合はダマスカス県のダーマー・ルーズ・ホテルで記者会見を開き、シリア政府がジュネーブ2会議に派遣する代表団がシリアの部族であるとしたうえで、「テロ集団」と結託する在外の部族代表を名乗る活動家をシリア国民の代表とはみなさない、と主張した。

SANA(1月7日付)が報じた。

国内の暴力

ラッカ県では、シリア人権監視団によると、ラッカ市県・市庁舎周辺で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がイスラーム戦線などと激しく交戦した。

Kull-na Shuraka', January 7, 2014

Kull-na Shuraka’, January 7, 2014

また、クッルナー・シュラカー(1月7日付)は信頼できる消息筋の話として、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)のラッカ県におけるワーリーのアブー・ルクマーンがラッカ市の戦闘で死亡したと報じた。

同報道によると、ダーイシュはラッカ市の県・市庁舎一帯の300~400メートルの一帯で包囲されているという。

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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市などでイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がムジャーヒディーン軍などと激しく交戦するなか、サラーフディーン地区の住民数十人が、ダーイシュのアレッポ県からの退去とイスラーム法に基づく支配を求めてデモを行った。

またアレッポ市インザーラート地区、フィルドゥース地区、バーブ街道地区に軍が「樽爆弾」などで爆撃を行い、複数名が死亡した。

一方、SANA(1月7日付)によると、ハイダリーヤ村、タッラト・ガーリー村、カフルナーハー村、ハフサ村、アウラム・クブラー町、アンジャーラ村、バシャントラ村、ダーラ・イッザ市、バラカート山、ハーン・シュフード村、クワイリス村、カスキース村、アレッポ中央刑務所周辺、マンスーラ村、マアーッラト・アルティーク村、ハーン・アサル村、ヒーラーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

アレッポ市では、ラーシディーン地区、旧市街、カラム・マイサル地区、カーディー・アスカル地区、サーリヒーン地区、ジュダイダ地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がマヤーディーン市に唯一設置していた拠点からラッカ県方面に撤退した。

またダイル・ザウル市ラサーファ地区、工業地区で、軍と反体制武装集団が交戦、またマリーイーヤ村が軍の砲撃を受けた。

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ハサカ県では、シリア人権監視団によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)とシャームの民のヌスラ戦線が、タッル・ブラーク町とタッル・ハミース市で民主連合党人民防衛隊と交戦、両市を制圧した。

しかしシリア革命反体制勢力国民連立は、タッル・ハミース市一帯での戦闘に関して、軍が民主連合党人民防衛隊の支援・協力のもとに攻撃を続けていると批判した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、シャームの民のヌスラ戦線が声明を出し、ジャースィム市にある国立病院を「完全制圧」したと発表した。

声明によると、アブー・クタイバ・ムハージルを名乗る戦闘員が6日に4トンの爆発物を積んだ装甲車で自爆攻撃を行い、同病院の検問所を破壊、制圧に至ったという。

この戦闘では軍兵士50人以上が殺害されたという。

一方、SANA(1月7日付)によると、ダルアー市各所、ハズカイン村、ハッザーン村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス郊外県では、クッルナー・シュラカー(1月7日付)が、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)のウマル・シーシャーニー氏がシャーム自由人イスラーム運動のアブー・ハーリド・スーリー氏と、ムラーフ市で停戦合意を結んだと報じ、合意文書の写真を公開した。

停戦合意では、シャーム自由人イスラーム運動が制圧するムラーフ市の航空基地へのダーイシュの攻撃の禁止、飛行場からダーイシュの拠点への攻撃の禁止などを骨子としている。

一方、SANA(1月7日付)によると、アドラー市(旧市街)、ハラスター市、ヤルダー市、ダーライヤー市、アーリヤ農場で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、イスラーム宣戦の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、シリア革命総合委員会によると、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)がダルクーシュ町の「自由シリア軍」の拠点を襲撃、男性1人と子供3人を銃殺した。

一方、SANA(1月7日付)によると、カストゥーン村近郊、マアッラトミスリーン市近郊、バドリーヤ村近郊で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、サウジ人、イラク人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(1月7日付)によると、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(1月7日付)によると、ヒムス市ワアル地区、カラービース地区、ダール・カビーラ村、ガースィビーヤ村、ハーリディーヤ村、ドゥワイビーヤ村、西サラーム村、東サラーム村、スルターニーヤ村、アブー・アラーヤー村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

イラクの動き

ウサーマ・ヌジャイフィー国民議会議長がアンマール・ハキームSIIC代表と会談、アンバール県でのイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の攻勢への対応について協議した。

イラキー・ニュース(1月7日付)によると、会談で、ヌジャイフィー議長は、国内の政治的不和を解消し、「正しい方法でのアル=カーイダとの戦いを支持する」と述べた。

ハキーム代表もまた、アル=カーイダとの対決をめぐって包括的な合意に達するための対話が対立する政治当事者どうしで行うことの重要性を強調したという。

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ジョー・バイデン米副大統領はヌーリー・マーリキー首相、ウサーマ・ヌジャイフィー国民議会議長と相次いで電話会談し、イラク軍によるアンバール県でのイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)掃討を支持していると述べた。

また米ホワイトハウスのジェイ・カーニー報道官は「我々は、アル=カーイダ系組織を孤立させるための英雄的戦略を発展させるべく、イラク人と密に活動を行い、ラマーディー市における成功を目にしてきた…。状況は流動的で、結論を述べるには時期尚早だが…、米国はスキャンイーグル10機、レイヴン48機とともに…さらなるヘルファイヤ・ミサイルをイラクに供与することを検討している」と述べた。

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ハキーム・ザミーリー国民議会議員はイラキー・ニュース(1月7日付)に、アンバール県ファッルージャ市で、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の指導者の一人アブー・トゥファイリー・クーカーズィー氏が少女に強制わいせつをはたらこうとして殺害された、と述べた。

諸外国の動き

国連と化学兵器禁止機関は、シリアの化学兵器を廃棄するため、危険性の高い化学物質をラタキア港でデンマークの貨物船に積み、搬出作業を開始した、と発表した。

CNN(1月7日付)などが伝えた。

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ジェニファー・サキ米国務省報道官は「イランはシリア政府を支援する以外の何らの支援も行っておらず、外国人戦闘員(ヒズブッラーなどを意図)の送り込み、シリア国民に対する蛮行に関与しているだけだ」と批判した。

また「もしイラン人が、自分たちは良い結果をもたらしたいと真摯に考えていると世界に向かって言いたいのなら、具体的な措置を講じなければならない。しかし今のところ、彼らがそうしたい、ないしはそうすることが彼らの国益になることを示すものはない」と付言した。

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イランのモハンマド・ジャワード・ザリーフ外務大臣はシリアのファイサル・ミクダード外務副大臣と会談し、「イランはジュネーブ2会議の出席に関していかなる前提条件も受け入れない。正式に招待されれば、シリア危機解決のため、正式且つ完全なかたちで参加する用意がある」と述べた。

ファルス通信(1月7日付)が伝えた。

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国連の潘基文事務総長は声明を出し、ジュネーブ2会議に関して、ジュネーブ合意を完全に実施するための政治的関係正常化に向けた包括的合意に至ることをめざすとの意思を示すとともに、30カ国、3国際機関に対して正式に招待状を送付したと発表した。

招待状が送付されたのは、米英仏露中、サウジアラビア、カタール、クウェート、UAE、オマーン、エジプト、アルジェリア、モロッコ、ヨルダン、レバノン、イラクなどで、イランは現時点では招待されていない。

『ハヤート』(1月9日付)によると、シリアの当事者は、ワリード・ムアッリム外務在外居住者大臣、シリア国民反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長宛に招待状が送付された。

『ハヤート』(1月9日付)が入手した招待状全文(http://alhayat.com/Details/590819)のコピーによると、招待状は、本文と、ジュネーブ合意(2012年)、和平プロセスへの女性の参加を定めた国連の関連決議、大会における交渉の原則からなる三つの添付文書からなる。

交渉原則は8項目からなり、ジュネーブ合意、とりわけ「移行統治委員会」設置に関する文言の実践を目的とすること、大会議長はアフダル・ブラーヒーミー共同特別代表が務め、シリアの当事者間の交渉は原則議長を経由して間接的に行われる、ことなどが定められている。

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トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン首相は訪問先の東京で「ジュネーブ2会議においてとられるすべての措置が失敗しないようにし、そのうえでバッシャール・アサドのいない新たな時代を始めるよう、我々は保証しなければならない」と述べた。

AFP(1月7日付)が伝えた。

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PFLP-GCのフサーム・アラファート氏が声明を出し、ダマスカス県ヤルムーク区の病人300人を治療のために県内の病院に搬送することを求めていたタラール・ナージー副書記長の要請にシリア政府が応じたことを明らかにした。

AFP, January 7, 2014、AP, January 7, 2014、Champress, January 7, 2014、Fars News Agency, January 7, 2014、al-Hayat, January 8, 2014, January 9, 2013、Iraqinews.com, January 7, 2014、Kull-na Shuraka’, January 7, 2014、Naharnet, January 7, 2014、NNA, January 7, 2014、Radio Rozana, January 7, 2014、Reuters, January 7, 2014、Rihab News, January 7, 2014、SANA, January 7, 2014、UPI, January 7, 2014などをもとに作成。

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