米主導の有志連合は不法占拠するシリア領内のタンフ国境通行所に向けて進軍するシリア軍・親政権武装勢力の拠点を再び爆撃(2017年6月6日)

米中央軍(CENTCOM)は、事前の警告を無視して、シリア南部の「緊張緩和地帯」内に進軍した「親シリア体制部隊」(pro-Syrian regime forces)に対して爆撃を行ったと発表した。

この部隊は、戦車1輌、装甲車1輌、対空兵器数基、武装した車輌複数台、兵士60人以上からなり、ヒムス県南東部のタンフ国境通行所に有志連合およびその「協力部隊」(partner forces)を脅威にさらしたという。

Wikipedia, June 6, 2017

なお、声明によると、有志連合は、タンフ国境通行所一帯で、ダーイシュ(イスラーム国)に対する「テロとの戦い」に参加するシリアの「協力部隊」を教練・指導してきたという。

また、有志連合は、シリアの体制軍、親体制部隊との戦闘は望んでいないが、親体制部隊が「緊張緩和地帯」から退去しなければ、自衛行為をとる、と主張した。

**

米高官が匿名を条件にロイター通信(6月7日付)に明らかにしたところによると、空爆は米軍戦闘機が実施したという。

**

有志連合が不法に占拠しているシリア領のタンフ国境通行所は、ロシア、トルコ、イランの署名をもって5月6日に発効した「緊張緩和地帯設置にかかる覚書」において、「緊張緩和地帯」には設置されていない。

**

有志連合の空爆に関して、シリア軍消息筋はSANA(6月6日付)に対して、有志連合が午後5時40分にヒムス県東部のシャヒーマ地区を通るタンフ街道沿いのシリア軍拠点1カ所を空爆し、多数の兵士が死亡、物的被害が出たことを明らかにしたにしたうえで、ダーイシュ(イスラーム国)、シャーム解放機構をはじめとするテロ組織に対して「テロとの戦い」を続けるシリア軍およびその同盟者に対する敵対行為から手を引くよう警告した。

また、シリア人権監視団によると、米軍の空爆で、シリア軍士官1人と非シリア人戦闘員16人が死亡したという。

CENTCOM, June 6, 2017、AFP, June 6, 2017、AP, June 6, 2017、ARA News, June 6, 2017、Champress, June 6, 2017、al-Hayat, June 7, 2017、June 8, 2017、Kull-na Shuraka’, June 6, 2017、al-Mada Press, June 6, 2017、Naharnet, June 6, 2017、NNA, June 6, 2017、Reuters, June 6, 2017、June 7, 2017、SANA, June 6, 2017、UPI, June 6, 2017などをもとに作成。

(C)青山弘之 All rights reserved.