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アサド政権の動き
SANA(4月1日付)はバッシャール・アサド大統領の指示に従い、非常事態解除、ダルアー市とラタキア市などでの事件の調査、クルド人統計問題の解決を目的とする三つの個別委員会が設置されたと報じた。
三つの委員会の第1の委員会の任務は、非常事態解除に関する決定実施を「目的」とした立法を4月末までに実施することである。
第2の委員会は、ダルアー県とラタキア県で民間人、軍人の犠牲を出した最近の事件の「早期調査」に関わっている。
一方、第3の委員会は、北東部に位置するハサカ県のクルド人に関する1962年の例外的統計に基づく国籍剥奪問題の解決に向けた過去の提言を実行することを目的としている、という。
SANAによると、「シリアの支配政党であるバアス党地域指導部は昨日、アサド大統領の指示により、国の安全と祖国の尊厳の維持、テロ撲滅のための立法の検討と施行を目的に、複数の法律家からなる委員会を設置した。この措置は、1960年代初めに発令された非常事態解除を目的としており」、同委員会は4月25日までに「問題の検討を完了する」。
またSANAによると、「挙国一致強化のため、アサド大統領は、ハサカ県での1962年の統計(例外的統計)問題解決に関する(バアス党)第10回地域大会(党大会)での提言の実行を検討するための委員会の設置を指示した。同委員会は、4月15日まで問題を検討し、アサド大統領に適切な法的文書発行のための検討結果報告を行う」。
さらにアサド大統領は、最高司法会議議長に対して、「多くの民間人、軍事の犠牲者を出したダルアー県、ダマスカス県での最近の問題すべての即時調査」を実施するための特別司法委員会の設置を指示した。
SANAによると、同委員会は「現行法に従って活動し、同委員会が適切と判断した人物に任務遂行を委任する権限を持ち、関係各局に必要な情報、文書の開示を請求できる」。
アサド大統領のこの指示に従い、ダルアー市とラタキア市でのデモに関する真相究明を任務とする特別司法委員会が設置された。
同委員会はタイスィール・カッラー・アウワード検事総長を委員長とし、ムハンマド・ディーブ・ムクタリン司法検査局長、ハッサーン・サイード・ダマスカス第一裁判所検事、アフマド・サイイド・ダマスカス第一判事からなる。
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ラタキア市やダルアー市など各地でアサド政権による改革を支持する大規模集会が実施された。
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ジャズィーラは、ストラトフォール研究所の報告書においてマーヒル・アサド大佐が、非常事態解除など、アサド大統領に一連の改革プログラムに反対しており、2005年に(バアス党第10回シリア大会などで)改革を約束したことを「弱さの現れ」と見ていると報じた。
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『イクティサード』(3月31日号、第114号)は現下のシリア情勢を痛烈に「自己」批判。
同誌によると、国民の20%は人民議会の活動に満足しておらず、39%は議員の名前を一人も言えない、という。
また65%が、人民議会議員が現下の問題への解決策を案出できないと考えている。
またシリア証券取引所において、約5,700人の投資家が活動していることになっているが、彼らの活動は違法行為から保護されないために実際には50人程度が活動しているに過ぎない。
反体制運動
DP-News(3月31日付)は、ラタキア市鉄道駅近くで「宗派主義反対」というスローガンを掲げるデモが発生し、数十人が参加した。治安部隊が発砲し、複数が死傷したと報じた。
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フェイスブックの「シリア革命2011」ページは「殉教者の金曜」と銘打って反体制デモの実施・参加を呼びかけた。
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シリア・イスラーム民主無所属潮流のガッサーン・ナッジャール氏は、フェイスブックを通じて、「殉教者の金曜日」のデモに参加すると表明した。
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ダマスカス郊外県のアドラー刑務所に収監中の政治犯7人がシリア人権監視団を通じて声明を出し、「民主的変革のため」の反体制デモに参加するよう呼びかけた。
声明を出したのは、アンワル・ブンニー氏、カマール・ルブワーニー氏、アリー・アブドゥッラー氏ら。
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シリア人権委員会は声明を出し、3月30日のアサド大統領の演説後、ラタキア市で少なくとも23人のデモ参加者が治安当局によって殺害されたと発表。
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シリア人権委員会は複数の目撃者の証言として、ヒムス市などで、ムハーバラートが市民を無差別に街頭で逮捕し、携帯を調べ、反体制デモに関するSNSなどを見つけたら直ちに逮捕し、何も見つけられない場合は殴打して釈放している、と発表。
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在米シリア・クルド人が組織するシリア・クルディスタン国民評議会は声明を出し、駐ワシントン・イマード・ムスタファー大使が彼らに接触し、クルド問題解決(国籍付与)に前向きな姿勢を示したことを明らかにした。
同評議会はまた、アサド政権の立場を見極めたうえで、政権支持の是非を決めると発表するとともに、ダルアー市、ヒムス市、ラタキア市住民との連帯を宣言した。
諸外国の動き
『ハヤート』(4月1日付)は、米議会議員は、バラク・オバマ大統領にシリアに対する新たな戦略の採用と、反体制勢力支援の開始を要求したと報じた。
同紙によると、シリアでの反体制デモを受けるかたちで、オバマ政権内では、シリアへの関与、門戸開放、和平交渉再開に代えて、個別制裁やシリア国民保護のための措置を通じて揺さぶりをかけるべきとの論調が高まっているという。
すなわち、オバマ政権は、過去2年間にわたってアサド政権に政策転換を促すべく関与を続けてきたが功を奏さず、制裁や圧力の方がシリアに対処するうえでより大きな成功をもたらすのではとの確信が高まりつつあるという。
なぜならこうした圧力により、アサド大統領は、2005年にレバノンから撤退した後、改革を誓約し、また現在街頭での圧力によって改革路線を再検討しようとしているからである。
こうしたなか、民主党のジョン・マケイン上院議員、無所属のジョゼフ・リーベルマン上院議員らは、シリア現政権に対する関与のありようが「わずかな」成果しかもたらしていないと考え、対話政策の廃止と反体制勢力支持の開始を要求した。
31日(現地時間30日)に発表した声明のなかで、両上院議員は「シリアに対する新戦略の採用が必要であり、それによって合衆国はシリア国民の未来をめぐる合法的な要求を支援することができる」と述べた。
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米国務省は、在留米国人に「シリアの複数の都市で政治的混乱が発生する可能性がある」として出国を促すとともに、シリアへの不要な旅行を控えるよう求めた。
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レバノンのミシェル・スライマーン大統領は、進歩社会主義党のワリード・ジュンブラート党首と会談し、アサド政権が現下の不安定を克服し得るとの見方を示した。
一方、ジュンブラート党首は声明を出し、「バアス党の決定が実施されれば、シリアの国民統合と国内の安定は強化されるだろう…。シリアに改革が実施されることを望むと言いつつ、実際にはシリアを破壊し混乱に陥れようとする疑わしい西側から民族主義に関してレクチャーされる必要はない」と述べ、西側の干渉に疑義を呈した。
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レバノンのナジーブ・ミーカーティー首相がアサド大統領と電話会談を行い、大統領の施政を賞賛し、シリア国民がその指導を支持していると伝えた。
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ヨルダンのジャーナリストがアンマンのヨルダン・ジャーナリスト組合前で座り込みを行い、29日以来消息不明のヨルダン人スライマーン・ハーリディー特派員(ロイター通信)との連帯、即時釈放を求めた。
APF, April 1, 2011、Akhbar al-Sharq, March 31, 2011, April 1, 2011、Aljazeera.net, March 31, 2011、DP-News, March 31, 2011、al-Hayat, April 1, 2011、Kull-na Shuraka’, March 31, 2011、Naharnet.com, March 31, 2011、SANA, April 1, 2011などをもとに作成。
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