2011年8月12日のシリア情勢

フェイスブックの「シリア革命2011」で「我々はアッラー以外にはひれ伏さない」金曜日のデモが呼びかけられるなか、各地で午後の礼拝後に反体制デモが発生した。軍・治安部隊は各県にある数百のモスクを包囲していたにもかかわらず、複数の活動家によると、ダマスカス郊外県、ハマー県、ヒムス県、ダイル・ザウル県、ダルアー県などで数万人が街頭に出た。しかし、軍・治安部隊は、催涙ガス、実弾などで対抗し、少なくとも20人を殺害した。また数十人が負傷、多数が逮捕された。

一方、米国は世界各国、とりわけ中国、ロシア、インドを名指しして、シリアの石油、投資部門への制裁、武器売却の停止を呼びかけたが、トルコがバッシャール・アサド政権のもとでの政治改革を依然として支持するなか、その対シリア圧力は限界が見え始めている。

反体制デモ

シリア人権監視団によると、ヒムス市では、グータ地区、クスール地区、ハーリディーヤ地区、バイヤーダ地区、インシャーアート地区、バーブ・スィバーア地区、バーブ・ドゥライブ地区などでデモ。ハーリディーヤ地区では約3000人、インシャーアート地区では約10,000人が参加したが、アダウィーヤ・モスク近くで1人が殺害された。またヒムス市郊外のクサイル市では12人が殺害された、という。

アレッポ・シリア革命調整委員会の活動家によると、アレッポ市内の約40カ所、郊外約20カ所で反体制デモが発生したが、メディアはほとんど報道しなかったと抗議。同活動家によると、規模は小さかったもの、サーフール地区、サイフ・ダウラ地区、マルジャ(バーブ・ナイラブ)地区、ジャミーリーヤ地区、アシュラフィーヤ地区、シャイフ・マクスード地区、マディーナ・ジャーミイーヤ地区などでデモが行われ、治安部隊の発砲により4人が殺害された。また同活動家は、アレッポ市での革命を支持する諸部族のリストを発表。このリストには、バカーラ・フサイニーヤ族、ダマーリハ・フサイニーヤ族など17の部族の名前が列記されている。

シャーム・ニュースによると、イドリブ県アリーハー市が軍・治安部隊に包囲された。またハーン・シャイフーン市で女性1人が殺害された。

ハマー市では、サハーバ・モスク、ウスマーン・ブン・アッファーン・モスク、ハムザ・モスクでデモが発生し、軍・治安部隊が市民に発砲、同市の活動家がAFPに語ったところによると2人が死亡。

ダイル・ザウル市でも、住民の一人によると、「ほとんどすべてのモスクから街頭へ」出て反体制デモを行った。これに対して、軍・治安部隊が発砲し、1人が殺害された。

シリア人権監視団によると、ダマスカス郊外県のドゥーマー市でデモが発生し、5人が殺害された。サクバー市のデモでも2人が殺害された。またシリア革命調整連合によると、ダーライヤー市でもデモが発生、シャッビーハがラフマーン・モスクを包囲し、犠牲者葬儀を妨害した。このほか、ザバダーニー市などでも午後の礼拝後にデモが発生した。シャーム・ニュースによると、ムウダミーヤト・シャーム市は夜の礼拝後のデモに備えて軍・治安部隊の包囲が続いた。

複数の活動家、住民によると、ラタキア市ラムル地区でもデモが発生し、約8000人が参加した。しかしラタキア市は、スライバ地区、スライバ開発計画地区、シャイフ・ダーヒル地区、アンターキヤー通り地区に軍・治安部隊が多数展開するなかでデモは困難となっており、バーラール・モスクなどでは治安部隊が礼拝者を包囲し、逮捕した。

バーニヤース市も複数のモスクが包囲されている。

シリア革命調整連合によると、ハサカ市ではサーリヒーヤ地区に軍・治安部隊が駐留。武器・弾薬が搬入される一方、シャッビーハ数百人も集結し、攻撃の恐怖が高まっている。

ダルアー県住民によると、ハウラーン地方のタイバ町、ジーザ町、ムサイフラ町などで数十人が逮捕。これらの町では連日反体制デモが行われていた。

『シャルク・アウサト』(12日付)によると、アサド政権は、3月半ばに反体制デモが始まって以来、レバノンやイランに資金を避難させ、その総額は230億ドルにおよぶ。アンタリア・シリア変革大会審議会のムハンマド・カルクーティー氏が空かす。西側諸国の制裁をかわすのがその狙い。

反体制活動家が12日、「偉大なる我らがシリア国民への共同声明(シリアのすべての通り、広場、施設からの「アサド」の名の排斥に関して)」を発表。アサド図書館(ダマスカス県内の国立図書館)、アサド湖(ラッカ県)などアサドを冠した地名、施設名の「国民~」への改称、ハーフィズ・アサド前大統領、バッシャール・アサド大統領の銅像の撤廃を求める。声明に署名した組織は以下の通り。シリア革命調整連合、地元調整諸委員会、シリア・クルド青年調整連合、自由シリア軍、自由将校運動、シリア変革大会、シリアのための国民行動団、ダマスカスおよび同郊外平和的変革自由主義者連合、シリア革命調整国民連立、アレッポ・シリア革命調整連合、ダルアー・シリア革命指導評議会、ハマー市調整委員会、ハマー自由主義者ブロック、ヒムス市自由主義者連合、ヒムス市諸地区連合、ヒムス革命主義者連合、シリア変革青年連合、シリア革命諸委員会連立、ダイル・ザウル調整委員会、ラタキア調整委員会、バーニヤース革命指導評議会、ジスル・シュグール・シリア革命調整連合、タルトゥース・反アサド・シリア革命、ジャブラ調整委員会、ムウダミーヤト・シャーム調整委員会、イドリブ市調整委員会、ザバダーニー調整委員会、マダーヤー調整委員会、カファル・ナブル調整委員会、マアッラト・ニウマーン調整委員会、ザーウィヤ山調整委員会、マアッラト・ハルマ調整委員会、サルミーン調整委員会、ビンニシュ調整委員会、タルビーサ調整委員会、ラスタン調整委員会、クサイル調整委員会、フーラ調整委員会、タッルカラフ調整委員会、ルクンッディーン調整委員会、サクバー調整委員会、サラーキブ調整委員会、サラミーヤ調整委員会、ハサカ調整委員会、カーラ調整委員会、カナーキル調整委員会、「反バッシャール・アサド・シリア革命」ページ、シリア・ウラマー連盟、シャーム文学者連盟、シリア人権委員会、アラブ・シャルク文明戦略研究センター、シリアのための青年、2月5日平和的変革運動、シリア・ムスタクバル青年、シリア自由女性、シリア・ナウルーズ革命、「クルド青年革命」ページ、シリア自由青年連合、「君らとともに」チーム、シャーム・ニュース・ネットワーク、シリア自由ジャーナリズム・ネットワーク、フラッシュ・ニュース・ネットワーク、オガレット・ニュース・ネットワーク、ダイル・ザウル・ニュース・ネットワーク、「我らはみなハウラーンの殉教者」ネットワーク、アレッポ・ニュース・ネットワーク、「夢のシリア」ネットワーク、イドリブ・ニュース・ネットワーク、「自由シリア」ネットワーク、シリア覚醒変革チーム、「我々はみな殉教者ハムザ・アリー・ハティーブ少年」、「ハマー・シリア革命」ぺージ、「我々はみなシリア」ページ、自由の「細菌」、シリア市民社会青年、シリアの恥・反革命シリア人リスト。

在米反体制有識者のラドワーン・ズィヤーダ氏が中東研究所で講演。ビジネスマンのイブラーヒーム・スライマーン氏(2007年にアサド大統領がイスラエルに派遣)らが出席。アリー・ハビーブ国防大臣の退任、ムハンマド・サルマーン元情報大臣による国民民主イニシアチブに関して、アラウィー派内の不協和音を示していると指摘。

SANAは、ダマスカス郊外県ドゥーマー市、アレッポのサーフール地区、イドリブ県アリーハー市で武装テロ集団の狙撃手が無差別発砲し、治安維持要員3人が死亡したと報じた。また反体制デモに関しては、ヒムス市郊外、イドリブ市郊外、ダマスカス郊外県、ラタキア市ラムル地区で午後の礼拝後にデモが発生したと報じた。

アサド政権内の動き

衛星テレビ局のジャズィーラやフッラで特派員を務めたアクラム・フザーム氏が政党法のもと、初の政党発足を準備中。党名は民主公正党。

レバノン

ベカーア県では、ジュッブ・ジャニーン村、カーミド・ルーズ村でシリア国民との連帯を求めるデモが発生。

サイダー市南部、イクリーフ・ハルーブ、カトルマーヤーで金曜日の礼拝後にシリア国民との連帯を求めるデモ。レバノン・イスラーム集団の支持者が組織。

各国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、記者団に対して「シリアの石油・ガスを依然として購入している国々、アサドに武器を供与し続けている国々に…歴史の正しい方向に導くような決定を下すことを我々は呼びかける」と述べる。ノルウェー外相との共同記者会見で、「アサドは国を指導する正統性を失った」と述べたが、退任を要求はしなかった。なおこれに先だって、11日、国務長官はCBSとのインタビューで、中国とインドにエネルギー部門での制裁を科すよう求めるとともに、ロシアには武器供与を停止するよう求めていた。また反体制勢力各派に対しては民主主義への移行のプロセスを円滑に行うための統一的な行動計画を作成するよう呼びかけた。一方、ダマスカスに戻ったロバート・フォード米大使は、ジャーナリストがデモを取材できるようワリード・ムアッリム外務大臣に求める。

キャサリン・アシュトン欧州連合(EU)外務・安全保障政策上級代表報道官は、シリア情勢をめぐる対処法に関して、米国とEUの間に足並みの乱れが生じていることを否定し、追加制裁を検討していると述べる。

エジプト作家連合が、「怒りと懸念」を表明。エジプト政府に「1月25に革命をシリア、リビア、イエメンでの革命をもって」完結するべく実質的な役割を」果たすよう求める。

チュニジア外務省がアサド政権に対して「暴力の即時停止」、「真剣な国民対話」を求める。

オランダ外務省が対シリア制裁の強化を主唱。

米ラジオSAWAによると、リビアのベンガジ当局は早朝、ムアンマル・カッザーフィー政権に武器を提供しようとしていたシリア船籍を拿捕、武器を押収。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは声明を出し、EUに対してシリアの石油・ガス企業の資産凍結を呼びかける。

AFP, August 12, 2011、Akhbār al-Sharq, August 12, 2011, August 13, 2011,
August 16, 2011、al-Ḥayāt, August 13, 2011、Kull-nā Shurakā’, August 12, 2011、Naharnet, August
12, 2011、Radio Sawa, August 13, 2011、Reuters, August 12, 2011、SANA, August
13, 2011、Sham News Network, August 12, 2011、al-Sharq al-Awsat, August 12, 2011、UPI, August 13, 2011などをもとに作成。

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