ガルユーン氏が国民評議会発足に向けた行程表が近く完成すると発表する一方、EUは官報でシリアへの追加制裁の内容を公表(2011年9月3日)

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反体制勢力の足並みの乱れ

ジャズィーラは、ブルハーン・ガルユーン氏が、近く国民評議会発足に向けた行程表が完成すると発表したと報じた。ガルユーン氏によると、評議会のもとに反体制活動が指導され、国内外の反体制勢力による革命運動が調整され、重要な決定に参与する、という。行程表は、国内外の調整諸委員会、政治勢力から任じられており、連絡調整、対話を重ねたうえで策定が進められている、という。またメンバーは、青年らが組織する調整諸委員会の代表、調整諸委員会が選任した政党や政治・社会組織の代表などからなる。

Kull-na Shurakā‘, September 3, 2011

Kull-na Shuraka‘, September 3, 2011

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シリア・アラブ人権委員会代表のハイサム・マンナーア氏はパリでRTのインタビューに応じ、そのなかで「ブルハーン・ガルユーン氏が発表したシリア革命評議会発足の呼びかけは、きわめて危険」としたうえで、「我々を急がす者には、国民に資するアジェンダがない」と非難し、こうした動きがシリアの大衆市民運動の統一に破壊的結果をもたらすと警鐘を鳴らした。

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『サフィール』(9月3日付)によると、パリの反体制勢力は、ビジネスマンで反体制活動家のカマール・サンカル氏が暫定国民評議会構想を主導していたと考えている。同氏はアンタリアやイスタンブールでの反体制勢力会合に資金援助を行い、国外の反体制勢力による反体制運動の主導をめざしてきた。同氏はイフサーン・サンカル氏とともに1990年代はシリア・メルセデス代表として政権に与してきたが、その後ドバイに活動拠点を移し、反体制活動を行っている。

反体制運動をめぐるそのほかの動き

反体制蜂起開始から6ヶ月が経過しようとしているなか、シリアでの死者数が増加している。金曜日の犠牲者の葬儀に参列した会葬者ら10人を軍・治安部隊が襲撃し、十数人が死亡し、3月17日以降の軍・治安部隊兵士を除いた犠牲者数は2,200人に達した。またシリア革命調整連合によると、戦闘機が複数の都市・村の上空を音速で低空旋回し、デモに参加しないよう市民を脅迫。

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イドリブ県では、シリア革命調整連合によると、マアッラト・ハルマ村を複数の戦車が包囲、シャッビーハと治安部隊を載せたバス50輌が突入。ハマー市出身の活動家ら3人が住民の前で見せしめとして殺害された。(イブラーヒーム・ハースード氏、アナス・イスマーイール氏、アブドゥッサマド・スライマーン・イーサー氏)。

シリア人権監視団によると、この作戦はハマーのアドナーン・バックール検事総長捜索を目的としているものと思われる。活動家のアリー・ハサン氏がハマーでアラビーヤの取材に答えたところによると、軍・治安部隊は複数の都市・村でバックール検事総長の捜索活動をしている。

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ハマー県では、シリア人権監視団によると、1ヶ月以上前に逮捕されていたクサイル村出身の市民の遺体が自宅前に放置されているのが発見された。遺体には拷問の跡が見られたという。

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ラタキア県では、複数の活動家によると、バーニヤース市から軍・治安部隊が撤退し、ジスル・ナブウに再結集した。

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ヒムス県では、複数の活動家によると、夜間のデモを弾圧するため、タッルカラフ市に軍・治安部隊の戦車・装甲車が進入した。ヒムス市ではダイル・バアルバ地区、シャーリウ・ザイル地区で軍・治安部隊の発砲で複数が負傷。またワルシャ地区、バーブ・タドムル地区などで朝からデモが行われた。

SANAが報じたところによると、ヒムス市で武装テロ集団の発砲で警官1人が殉職。

レバノンのCNA(al-Markaziya)が報じたところによると、シリア避難民のレバノンへの流入は続き、ワーディー・ハーリドを中心に約2,600人が避難生活を送っている。

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ダイル・ザウル県では、治安部隊がフサイン・ターハー・ハイジー氏をダイル・ザウル市で逮捕したほか、多数の市民の捜索を行った。

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ダマスカス県、ダマスカス郊外県では、ムウダミーヤト・シャーム市で、大規模な逮捕活動が行われ、ジバール・シャーリウ・アルバイーン前で激しい発砲があった。一方、アルバイン市では金曜日の犠牲者の葬儀が行われ、数千人がその後反体制デモを行った。

SANAが報じたところによると、ドゥーマー市で武装テロ集団の発砲で警官1人が殉職。

『クッルナー・シュラカー』(9月3日付)は複数の目撃者の話として、ダマスカス県のティシュリーン公園で「休憩中」のシャッビーハが訪れる女性市民らに暴言を吐くなどの嫌がらせを行った。

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ダルアー県では、ナーフタ町に軍・治安部隊数百人が展開し、市民に発砲、数ヶ月前に辞任していたダルアー商業会議所のファイサル・フマイド前所長と活動家のムハンマド・ファッラーフ氏の身柄を拘束。

アサド政権の動き

『クッルナー・シュラカー』(9月3日付)が信頼できる消息筋の話として伝えたところによると、アサド大統領はスワイダー市のドゥルーズ派シャイフ・アクルを密かに訪問。訪問の目的などは不明。

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情報法成立を受けて発足予定の国民情報会議メンバー候補がリークされた。D Pressによると、情報法制定委員会の座長を務めたターリフ・カーディー・アミーン氏が会長に就任するほか、イブラーヒーム・ヤーフール氏、アリー・ジャマールー氏、サービト・サーリム氏、ナーディヤー・ハウサト氏、ディヤーナー・ジャッブール氏らのメンバー入りが内定しているという。

諸外国の動き

EUが官報でシリアへの追加制裁の内容を公表。石油禁輸措置の発動と合わせて、シリア不動産銀行、シャーム投資グループ、マダー運輸会社との取引禁止、ダマスカス商工会議所のイマード・グラーイワーティー会長、アレッポ商工会議所のファーリス・シハービー会長、ヒムスの著名な商人でアスマー・アフラス大統領夫人の親戚のタリーフ・アフラス氏(アフラス・グループ)、イサーム・アンブーバ(イサーム・アンブーバ農産業)との取引およびビザ発給禁止を新たに制裁項目に追加。官報全文はhttp://eur-lex.europa.eu/JOHtml.do?uri=OJ:L:2011:228:SOM:EN:HTMLを参照。

新生リビア支援国際会議に同行している米高官は『ハヤート』(9月3日付)に対して、シリア国内外のビジネスマンは米国および西側諸国の制裁を免れることはできない、と述べるとともに、バッシャール・アサド大統領がこれまでに二度、レバノン情勢を「炎上」させることを検討していたと指摘。同高官は、「こうしたことは明らかに世界全体を巻き込むことになっただろう」としたうえで、「ヒズブッラーがアサド政権を政治的、戦術的に支援し続けることで、中東地域、そしてレバノン内外のスンナ派・シーア派の緊張が高まり、レバノン国内でのヒズブッラーへの非難を強めることになろう」と述べた。

米国およびEUの石油輸入禁止に関して、『ハヤート』(9月3日付)は信頼できる消息筋の話として、シリアの石油のほとんどは西側に輸出されているが、制裁により輸出不可能となった場合、アサド政権はアジアに代替市場を見つけることができるだろう、と指摘。また米国の制裁について、シリアの石油は米国に輸出されていないため内実はないと述べた。そのうえで、EUの制裁に関しては、デモ弾圧への資金流用を阻止することが最大の目的だと述べた。

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フランスのアラン・ジュペ外相はソポト(ポーランド)でのEU外相会議で、「バッシャール・アサドが態度を変えず、体制が変わらないのなら、シリアへの圧力強化の必要があろう」と述べた。

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英国のウィリアム・ヘイグ外務大臣はソポトでのEU外相会議で、アサド政権による反体制デモ弾圧を「まったく受け入れられない」としたうえで、国際社会のさらなる圧力が必要だとの考えを示した。しかしEUの石油緊急制裁に関しては、シリアが他の国に石油を輸出することは可能だとしたうえで、英国がEU諸国企業のシリアへの投資禁止に制裁を拡大するか否かにするかは明言を避けた。

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インテルファクス通信によると、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、ドシャンベ(タジキスタン)で開催された独立国家共同体(CIS)会合で、「一方的な制裁は良いことではないとこれまでにも言ってきた。危機に対しては共同でアプローチする可能性がなくなるからだ」と述べ、EU(そして米国)によるシリアへの石油禁輸措置に意義を唱えた。

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赤十字国際委員会(ICRC)のヤコブ・ケーレンバーガー会長がダマスカスに到着。アサド大統領との会談、逮捕者の慰問を予定している。

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進歩社会主義党の指導者の一人、レバノンのガーズィー・アリーディー公共労働大臣はシャルク放送とのインタビューに答え、シリア情勢に関して「憎しみ、分裂、宗派主義的・教条主義的言説のなかで、ますます複雑になっている」としたうえで、「シリア国内外のすべてに否定的な影響をもたらしている。我々は、早急な事態の収拾を願っている」と述べた。また「ロシア、イランを含む諸外国は、明らかに、民間人への暴力行使を非難しており、政治的解決を行うよう求めている」と付言した。

AFP, September 3, 2011、Akhbar al-Sharq, September 3, 2011、AP, September 3, 2011、al-Hayat, September 3, 2011、September 4, 2011、Kull-na Shuraka‘, September 3, 2011、Aljazeera.net,
September 3, 2011、Naharnet.com, September 3, 2011、Reuters, September 3,
2011、al-Safir, September 3, 2011、SANA, September 3, 2011などをもとに作成。

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