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反体制運動をめぐる動き
治安部隊はダマスカス郊外県の複数の都市における展開を強化し、電話、インターネットを遮断した。またヒムスでも作戦を続行し、1人を殺害した。
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ダマスカス郊外県では、シャーム・ニュース・ネットワークによると、キスワ市に、第4師団の兵士数百人が到着した。同部隊はピックアップ・トラック、対空砲を従えていた、という。また軍・治安部隊が検問所・バリゲードを設置し、市内への出入りを禁止。
またキスワ市を含む複数の都市で、携帯電話、インターネットを遮断した。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市で1人が軍・治安部隊の発砲で殺害された。また地元調整委員会によると、ヒムス市のバーブ・アムル地区が包囲され、殺戮が行われた。
一方、シリア人権監視団によると、反体制活動家のムハンマド・サーリフ氏がヒムス市で逮捕された。
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ダルアー県では、SANA(9月22日付)が報じたところによると、武装テロ集団がジーザ町の街道で旅客バスを要撃し、治安維持部隊兵士5人を殺害、17人を負傷させた。武装集団は救急車両が負傷者を搬出することを阻止したという。
またSANA(9月22日付)は、ダルアー市11月16日広場の西側の家の庭で、治安当局が武装テロ集団が製造した爆薬(3キロ)を押収したと報じた。サッド地区でも5~20キロ掃討の爆薬を押収したと報じた。
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シリア革命調整連合はフェイスブックの「シリア革命2011」ページで「反体制勢力統一の金曜日」を呼びかけ、「体制打倒のための反体制勢力の糾合は国民的義務」と強調するとともに、「革命の原則に同調する国民評議会を支持しよう」と主唱し、シリア国民評議会への支持を表明した。
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ハイサム・マーリフ弁護士はアラビーヤ(9月22日付)のインタビューに応え、「シリアの反体制勢力の統合は間近であり、現在作業が進行中である」としたうえで、反体制勢力内でのさまざまな意見の存在が「自然なこと」と述べた。
また「反体制勢力は大きな一歩を踏み出しており、体制打倒と多元的・民主的国家への変革で合意に達した。それ以外の副次的な意見の相違はその後に議論されるだろう」と付言した。マーリフ弁護士は、国連人権理事会にNPO代表として参加している。
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シリア・アラブ・テレビは9月22日、アブドゥルカーディル・ハッラークを名乗る「シリア人テロリスト」が証言し、レバノンのムスタクバル潮流が「テロ攻撃の資金を援助している」と自供した。
SANA(9月23日付)によると、ハッラーク氏は「外国が資金援助する武装テロ集団に参加して多くの殺戮、脅迫、破壊行為を犯したことを自供」し、反体制抗議行動への参加に関しては、「モスクのイマーム、ハーリド・アブドゥルワーヒド師が煽動し、レバノン経由でムスタクバル潮流から届けられた資金を我々に配った」と証言した。
アサド政権の動き
レバノン・シリア分科委員会がベイルートの首相府で開催され、レバノンのベカーア県ウマル・ヤースィーン知事、レバノン・シリア最高会議メンバーのアフマド・ハーッジ・ハサン氏、シリア軍のアブドゥッラッザーク・ムトラク准将、そして両国の軍高官が参加した。
会合では、両国の農耕従事者の往来の簡素化に加えて、シリアへの武器密輸問題が議論された。
『シャルク・アウワト』(9月24日付)は、ヤースィーン知事の話として、この会合で「シリア側は武器問題への懸念を表明し、武器密輸が行われている疑いがあると述べ」、レバノン側に「この手のいかなる違反も許さないよう」強く求めた、と報じた。
これに対して、レバノン側は、「灯油、商品などを含むこの手の密輸を完全に阻止し、両国国境をめぐる問題を解決するため最大限協力している」と答えたという。
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シリア中央銀行のアディーブ・マイヤーラ総裁は、『ハヤート』(9月23日付)に対して、米国政府が同総裁へのビザ発給を禁じ、世界銀行、IMFの会合にシリアが代表を参加させることをはばんでいると非難した。
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『ワタン』(9月22日付)によると、シリア世俗主義者連盟の執行委員会選挙が9月24日に実施される。同選挙では26人が委員として選出される。同連盟は、シリア民族社会党(ターミル・ラスーク、サラーム・ラスーク)、シリア共産党(ハサン・ザーザー)、シリア民主党(サーバー・ウーバー)、シリア人権ネットワーク(アフマド・ハーズィム)のメンバー、無所属(イリヤース・ハルヤーニー)などからなる。執行委員会選出後、同連盟は政党法に従い公認申請を出すという。
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『ダマス・ポスト』(9月22日付)は、バアス党幹部の話として、近くアーディル・サファル内閣の改造が行われ、反体制勢力が入閣するかたちで多元主義の基礎が確立するだろうと報じた。
また同幹部は、近く実施予定の人民議会選挙、統一地方選挙に関しても、「これまでにないほどの民主的、多元的」になると述べたという。
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ギリシャ正教のアターッラー・ハンナー主教はシリア・アラブ・テレビ(9月22日付)のインタビューで、シリアに対する危険な陰謀が、その政治体制だけでなく、愛国的、民族的、アラブ的、人道的、精神的な役割を果たしてきた国家そのものに対して向けられていると警鐘をならした。
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ダルアー市郊外地域の国民対話会合で、治安・安定強化、メディアによる煽動と外国の内政干渉拒否に関して審議がなされた。
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ラタキア市のティシュリーン大学での国民対話会合が閉幕。
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シリアの女性総連合は声明を出し、トルコの避難民キャンプでのシリア人女性への暴行・強姦を強くに非難。
諸外国の動き
シリア訪問を終え帰国したロシア連邦議会使節団のイリヤス・オマハノフ副団長は、RTのインタビューで、アサド大統領が「反体制勢力と会談する意思と準備をしている」と述べた。また人民議会選挙、統一地方選挙に関して早期実施の可能性もあるとの見方を示した。
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ロバート・フォード駐ダマスカス米大使は、ロイター通信の電話インタビューに応えて、「バッシャール・アサド大統領はシリア社会の主要なコミュニティにおいて持っていた支持を失い、民主主義を求めるデモ参加者への弾圧を強化することで、宗派主義的闘争の危険を冒そうとしている…。9月半ば以来、経済的な衰退、政権内部の分裂の兆候、軍のさらなる離反が起きているが、軍は依然として協力できわめて結束している」と述べた。
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『ヒュッリーイェト』(9月22日付)は、トルコ政府がシリアへの軍事物資を輸送していた空輸便を停止したと報じた。
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駐シリアEU委員会代表部は声明を出し、ヒムス市で赤新月社のフクム・ダッラーク・スィバーイー氏が銃で撃たれ死亡したことに哀悼の意を示した。
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『シャルク・アウサト』(9月22日付)は、地元消息筋の話として、シリア人避難民を受け入れているレバノン北部県アッカール郡の村々、とりわけナスーブ村、ムワンサ村で日々、シリア軍が「避難民を受け入れれば攻撃する」との脅迫を受けていると報じた。なおムワンサ村は9月15日にシリア軍の誤射を受けた。
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エジプト・ムスリム同胞団の離反者が結成した自由公正党は、アサド政権の正統性が失われ、革命の勝利は時間の問題、と発表。
AFP, September 22, 2011、Akhbar al-Sharq, September 22, 2011、Damas Post, September 22, 2011、al-Hayat, September 23, 2011, September 24, 2011、Kull-na Shuraka’, September 22, 2011、Reuters, September 22, 2011、SANA, September 23, 2011、al-Sharq al-Awsat, September 22, 2011, September 24, 2011、al-Watan, September 22, 2011などをもとに作成。
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