米国防長官がイスラエル国防大臣との共同記者会見のなかでアサド大統領退任の必要を強調、シリア革命総合委員会が発足したシリア国民評議会への支持を表明(2011年10月3日)

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諸外国の動き

イスラエル訪問中のレオン・パネッタ米国防長官はエフード・バラク国防大臣との会談後の共同記者会見で、米国および西側諸国が「明確にアサドが去らねばならない」と考えていると述べ、「政権の抵抗は続いているが、私はきわめて明確に、それが時間の問題で近く起きると思っている。いつかは分からないが」と述べた。

SANA, October 3, 2011

SANA, October 3, 2011

一方のバラク国防大臣は、アサド政権の余命が数えるほどしかないとしたうえで、その崩壊がイランによって支援されている武装集団の「過激派枢軸」にとって「大打撃」となるだろうと述べた。

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シリア国民評議会発足に関し、米国務省高官は、『ハヤート』(10月4日付)に対して、バラク・オバマ米大統領が「平和的な政治的変換を支援するあらゆるシリアのグループ」を歓迎していると述べた。

しかし「残念ながら、シリア国内でこうしたグループが会合を開けないでいる」と述べ、シリア国民評議会をアサド政権に代わり得る政治主体とみなすことには慎重な姿勢を示した。

米財務省は、シリアへの通信機器の輸出を禁止した。

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フランス外務省のベルナール・ヴァレロ報道官は、「フランスは改めて、反体制勢力の分断を試み、野蛮な弾圧を続けるシリア政府に対して、改革と民主主義を希求するシリア国民の政治的表現を尊重するよう呼びかける」と述べ、シリア国民評議会の発足を歓迎した。

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国連安保理では、シリアに対する決議案をめぐる審議が続いているが、ロシアは依然としてシリア政府に圧力をかけるような決議の採択に反対し、政府、反体制勢力双方の暴力を非難するべきだとの姿勢を崩さなかった。

一方、西側諸国は、制裁発動への猶予を設けた決議案の採択を主張した。

反体制運動をめぐる動き

イドリブ県で襲撃されたサーリヤ・ハッスーン(共和国ムフティー、アフマド・バドルッディーン・ハッスーンの息子)が死亡し、アレッポ市で葬儀が執り行われ、数千人が参列した。

SANA(10月4日付)は、イドリブ県のトルコ国境近くで大量の武器弾薬が押収されたと報じた。

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複数の活動家によると、軍部隊がダマスカス郊外県、ダイル・ザウル、ヒムス近郊のタルビーサに突入した。またイドリブ県サラーキブ市を攻撃し、負傷者がでたという。

同活動家らによると、治安部隊はラスタン市で大規模な逮捕活動を行っており、この3日間で少なくとも3,000人が身柄拘束された。

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ハマー県では、カフルズィーター市で軍・治安部隊による攻撃が続いた。

SANA(10月4日付)は、ハマー県ハマー市サーブ-ニーヤ地区で、武装集団が治安維持部隊を襲撃、治安部隊兵士2人を殺害、2人を負傷させたと報じた。

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SANA(10月4日付)は、ヒムス県フルクルス地域で、武装集団が治安維持部隊を襲撃、治安部隊兵士1人を殺害、1人を負傷させたと報じた。

またヒムス市東部で武装集団がヒムス県庁職員の乗ったバスを要撃し、4人を殺害したと報じた。

さらにシャンシャール橋近くでヒムス県税関局の巡回パトロールが武装集団に襲撃され、職員1人、武装集団メンバー1人が死亡したと報じた。

このほか、ヒムス市内で救急車が襲撃を受け、また拷問の跡が残った電気技師のイーサー・ハサン氏の遺体が発見されたと報じられた。

SANA, October 3, 2011

SANA, October 3, 2011

 

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第三の道運動は記者会見を開き、メンバーのムハンマド・ハバシュ人民議会議員がアサド政権による弾圧を非難し、「治安的解決では問題に対処していない」と非難。

またハバシュ人民議会議員は、シリア国民評議会の発足に歓迎の意思を示すとともに、同評議会でコンセンサスにいたった提案を提示するよう呼びかけた。

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シリア革命総合委員会が、シリア国民評議会の発足への支持を表明。

またツイッター、フェイスブック上では、シリア国民評議会の発足を支持するページが立ち上げられた。

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シリア・ムスリム同胞団のアリー・サドルッディーン・バヤーヌーニー前最高監督者は、カタールのブルッキングズ・センターで後援を行い、「シリア国民評議会が反体制勢力の80%を代表している」と述べた。

アサド政権の動き

進歩国民戦線中央委員会会合が開かれ、「民間人の国際的保護」を口実として外国の介入を呼び込もうとする動きに異議を唱えた。

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『ダマス・ポスト』(10月3日付)は、教育省高官筋の話として、同省が民間の教育施設(学校、学院)設置に関して治安当局の認可取得を廃したと報じた。

AFR, October 3, 2011、Akhbar al-Sharq, October 3, 2011、AP, October 3, 2011、Damas Post, October 3, 2011、al-Hayat, October 4, 2011、Kull-na Shuraka’, October 3, 2011、SANA, October 4, 2011などをもとに作成。

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