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アサド政権の動き
ダマスカス県中心にあるサブウ・バフラート広場にシリア人「数千人」(『ハヤート』10月13日付)が集まり、国内での暴力行使拒否、挙国一致、殉教者家族との連帯、そしてシリアに対する陰謀を阻止したロシアと中国への謝意の表明がなされた。この集会は、フェイスブックの「我が祖国シリア、我が指導者バッシャール・アサド」ページで若者たちが呼びかけ、内務省にデモ実施を申請、認可を受けていた。
参加者は「国民と軍はあなたとともにある、祖国の指導者よ」、「シリアは我らの国、アサドは我らの指導者」といった垂れ幕・プラガード、シリア、ロシア、中国の国旗などが掲げられた。
SANA(10月13日付)が公開した集会の写真を見る限り、「数千人規模」と発表されてきた反体制勢力の金曜礼拝後の反体制デモの規模をはるかに越える動員がなされたことがわかり、アサド政権の動員力の高さ、反体制勢力側の誇張が再確認できる。
なおSANAは参加者が100万人にのぼったと報じた。
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大統領府声明によると、バッシャール・アサド大統領は、シリア民族社会党のアスアド・ハルダーン党首と会談し、シリアは「困難な段階を乗り越え、国民の意思を実現した」と述べた。
また同会談で、アサド大統領は「民族主義的ダイナミズムと国民感情をシリア国民の間で強化し、地域で起きている事態を利用してアラブ民族感情を弱体化させようとする外国の陰謀に対抗するため、民族主義政党の役割を活性化することが重要」と述べた。
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『ザマーン・ワスル』(10月12日付)は、アサド政権が国土の40%の治安を掌握しておらず、15%に至っては軍事的にも制圧されていないとの調査結果を伝えた。同調査によると、アサド政権が軍事的・治安的に掌握しているのはダマスカス、アレッポ、タルトゥースおよび一部の郊外の45%に過ぎないという。しかしこのデータの出典、調査方法は明確ではない。
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反体制活動を行う一部の弁護士に対して、バアス党シリア地域指導部民族治安局から活動自粛の最後通告を行うよう要請があったことを伝える弁護士組合のニザール・サキーフ総裁の文書がフェイスブックで公開された。
同文書は9月5日付で、ダイル・ザウル県支部長宛に発信されていた。
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ハサン・ジャラーリー内務省市民問題担当次官は、2012年に電子チップの入った新たなIDを国民に発行すると発表した。
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NNA(10月12日付)は、10月12日、シリア軍部隊がレバノンのベカーア県ワーディー・アンジャル内にレバノン国軍が設置した土嚢からレバノン領内に約400メートル入った地点に再展開した。反体制活動家追跡のために侵入・展開したものと思われる。
なお「レバノンの声」ラジオによると、シリア軍部隊は10月6日にもビカーア県アルサール地域に侵入し、レバノン在住のシリア人1人に発砲、殺害したという。
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内務省のハサン・ジャラーリー次官は、シリアの身分証明書の発給を受けた「ハサカ県の外国人」(クルド人)の数が60,000人にのぼったことを明らかにした。またシリア国籍の取得を申請している「ハサカ県の外国人」の数が106,116人に達していると述べた。
クルド人に対する国籍付与は、2011年4月7日にアサド大統領が発令した「ハサカ県の外国人に対する国籍付与法」に基づく措置である。
反体制運動掃討
マナールは、シリア民主党のアフマド・クーサー書記長が政党法に基づく初の認可を受けたと報じた。
同報道で、クーサー書記長は「反体制運動は敵対的ではない。我々は民主主義と表現の自由を実践し、政府や体制の過ちを見つけたらそれに光をあてる」と述べ、「今日起きていることは、シリアに対する世界的な戦争であり、それはさまざまな武器を駆使して行われている…。この陰謀は、民族的・人民的意志、強い意志を通じて阻止されるものである…。国民には要求があり、それは正当なものだが、陰謀はこうした要求よりも巨大である」と付言した。
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シリア司法当局は反体制活動家のワリード・ブンニー弁護士(8月6日逮捕)を釈放した。ブンニー弁護士は「デモ扇動と宗派主義的亀裂の助長」の容疑で身柄拘束されていたが、保釈金115シリア・ポンドを支払い釈放となった。
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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市ダイル・バアルバ地区から大きな爆発音が聞こえ、またバーブ・アムル地区から7時間にわたって激しい銃声が聞こえた。同監視団によると、ヒムス市のダイル・バアルバ地区で10日に負傷した青年がヒムス市の軍事病院で死亡した。
またヒムス市ハーリディーヤ地区は依然として軍・治安部隊に包囲されており、3日前から大規模な逮捕・追跡活動が行われていた。
オガレット・ニュース・ネットワーク(10月12日)は、ヒムス市ハーリディーヤ地区のタカウウィー・モスクに対して軍・治安部隊が砲撃を加えたと報じた。
SANA(10月13日付)は、ヒムス県の関係当局は95人の指名手配者を逮捕するとともに、「武装テロ集団」が「破壊行為」に使用していた(使用しようとしていた)車輌、武器、弾薬、爆発物などを押収したと報じた。
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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ドゥーマー市の総合情報部内務治安課分所近くから巨大な爆発音が聞こえ、同市市街地に軍・治安部隊が多数展開し、通行禁止となった。
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アレッポ県では、シリア人権監視団によると、アレッポ市で治安部隊による大規模な逮捕・追跡活動が行われ、23人が逮捕された。
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ダルアー県では複数の活動家・目撃者によると、軍・治安部隊が家宅捜索・逮捕活動を行い、ジハード・アターッラー・マハーミード氏の自宅でムハンナド・ファトヒー・マハーミード氏を逮捕した。
諸外国の動き
米法務省は、シリア系米国人1人が米国内のシリア人反体制活動家に対するスパイ活動を行ったとして、10月10日に逮捕・起訴したと発表した。
逮捕されたのはムハンマド・アナス・ハイサム・スワイド氏(47歳)で、「米国およびシリア国内で反体制デモを行う人々の映像ビデオ、音声テープなどの情報を集め…(これらの人々に)おそらく危害を加えた」容疑(有罪となれば最長で禁固40年)で連邦裁判所に起訴された。
起訴状によると、スワイド氏は2011年8月3日からシリアのムハーバラートのために活動していた、という。
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カタールのハマド・ブン・ハリーファ・アール・サーニー首長はジャズィーラ(10月12日付)でテレビ演説を行い、シリア国民評議会の発足を「重要なステップ」と高く評価し、アサド政権に対してシリアの国益のために同評議会と「相互理解」に達するよう呼びかけた。
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英国外務省は声明を出し、中東局長がシリア国民評議会のブルハーン・ガルユーン議長、バスマ・カドマーニー報道官、ニブラース・ファーディル氏と会談したと発表した。
同局長は会談後に、「シリア国民評議会の発足はシリアの反体制勢力の代表者を広く糾合するうえで前向きなステップだ」と述べたという。
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イスラーム教ウラマー世界連盟のユースフ・カラダーウィー議長は声明を出し、シリア国民評議会への支持を表明した。
AFP, October 12, 2011、Akhbar al-Sharq, October 12, 2011、Damas Post, October 12, 2011、al-Hayat, October 13, 2011, October 15, 2011、Kull-na Shuraka’, October 12, 2011,
October 14, 2011、NNA, October 12, 2011、SANA, October 13, 2011、SNS, October
12, 2011、Zaman al-Waṣl, October 12, 2011などをもとに作成。
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