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アサド政権の動き
バッシャール・アサド大統領はラッカ県を訪問し、ラッカ市ダルイーヤ地区のヌール・モスクで同県の名士、人民諸組織、職業諸組合、バアス党の幹部、市民とともにイード・アル=アドハーの礼拝を行った。
礼拝後、アサド大統領はラッカ県庁に移動し、同県の名士、政界、経済界らの代表と面談した。
SANA(11月6日付)は、アサド大統領が県庁に到着した際に数万人の民衆が訪問を歓迎したと報じた。
また歓迎する民衆に対して、アサド大統領がマイクを握って以下のように述べたと報じた。
「内乱、テロ、外国の干渉に反対し、合法的な権利に根ざした主義主張を行うことは、陰謀に立ち向かうシリアの力の基礎をなす…。シリアは、その人民、愛国的選択、そして自由な決意ゆえに強力であり、祖国の権利を完全に回復するために活動しようとしている。また我々の前には、我々の主権と自決を標的とするすべての戦いにおいて勝利する以外の選択肢はない」。
アサド大統領が民衆の前に姿を現したのは、2011年3月30日の人民議会での演説後以来約7ヵ月ぶり。
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『ザマーン・ワスル』(11月6日付)は、バアス党の正規党員(入党後数年を経た党員)に対して、ムハーバラートへの参加を「開放」したと報じた。
同報道によると、これにより、バアス党員の治安機関、シャッビーハ、人民諸委員会への関与が認められたと解釈し得る一方、ムハーバラートがデモ弾圧にあたって組織外の人材を必要としているとみなすこともできるとしている。
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『ザマーン・ワスル』(11月6日付)は、2011年に入って、76,000人の労働者が解雇されたと報じた。
反体制勢力の動き
アブドゥルハリーム・ハッダーム前副大統領は『ナハール』(11月6日付)のインタビューで、アサド政権が崩壊すれば、レバノンはイランから解放されるだろう、と述べた。
シリアでの反体制運動に関して、ハッダーム前副大統領は「レバノン人はシリアの運命がレバノンと結びついていることに気づくべきだ」と述べ、支援を呼びかけ、「体制が倒れれば、レバノンは解放されるが…、シリアの体制が存続すれば、占領は続き、レバノン人は締め付けられ続けるだろう」と述べた。
ハッダーム副大統領は、1990年代までシリアによるレバノン実効支配を主導した首脳の一人で、「レバノン総督」などと呼ばれていた。
反体制勢力掃討
ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市での犠牲者数は9人にのぼった(その後、同監視団は死者数を13人と発表した)。
シリア革命総合委員会によると、タルビーサ市やハーッラ市でデモが発生し、10人が負傷した。
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ハマー県では、シリア人権監視団によると、ハマー市で治安部隊が1人を射殺した。
またシリア人権監視団などによると、ハマー市、タイバト・イマーム市、ハルファーヤー市、ラターミナ町、ハマーミーヤート村、カルナーズ町、カフルヌブーダ町、ハッターブ村、スーラーン市、カフルズィーター市でイード・アル=アドハーの礼拝後に反体制デモが発生し、カフルヌブーダ町では市民1人が殺害された。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、イドリブ市で、離反兵と思われる武装集団が治安機関の兵士5人を殺害した。
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ダマスカス郊外県では、地元調整諸委員会によると、ザマルカー町、アルバイン市でデモが発生し、軍・治安部隊が介入した。
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ダマスカス県では、カフルスーサ区のダクル・モスクでイード・アル=アドハーの礼拝後に反体制デモが発生、治安部隊が催涙ガスや空砲を発射し排除を試み、5人が負傷、30人が逮捕された。
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地元調整諸委員会やシリア人権監視団によると、タルトゥース県バーニヤース市で治安部隊が多数展開するなか、反体制デモが断行された。
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シリア人権監視団によると、複数の刑務所で言論犯や投獄中のデモ参加者らがハンストを行い、アラブ連盟との合意(逮捕者釈放)を履行しないアサド政権の姿勢に抗議した。
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シリア人権連盟は、11月に入って、治安当局が弁護士のアスマー・サーサ女史(ダマスカスの裁判所で逮捕)、映画監督のニダール・ハサン氏ら多数を逮捕したと発表した。
アラブ連盟の動き
アラブ連盟は、シリア国内での弾圧継続を受け、11月12日(土曜日)に緊急会合を開催すると発表した。
諸外国の動き
サウジアラビアに避難中のサアド・ハリーリー前首相は、イード・アル=アドハーの礼拝に際して、支持者にアサド政権が崩壊すれば、レバノンに戻れると述べた。
ハリーリー前首相は以下のように述べたという。
「人は平和的でなければならないと思う。我々はレバノンでそうだったし、シリア国民が最終的に勝利すると確信している…。彼らのために祈ろう…。この体制は変えられることなくして変わらない、と世界が理解するべきだと思ってきた…。ベイルートが恋しい、レバノンが恋しい。しかしもっとも恋しく感じているのは人々のことだ…。時が来たらレバノンに戻る」。
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レバノン民主主義人権研究所のナビール・ハラビー報道官は、レバノンでの武器密輸容疑によるシリア人逮捕の一部は誤認逮捕の可能性があると述べた。
ハラビー報道官は、シリア人アンマール・ウマル・アディーブ氏はベイルート南部郊外の友人を訪問しようとしていたところヒズブッラーに身柄拘束され、その2日後に釈放されたのち、兄弟とともにサウジアラビアを訪問しようとしたところ、ベイルート国際空港で逮捕され、軍事裁判所に起訴されたと述べた。
ムハンマド・シャーキル・シャッラーフ氏、スィルカーム・ムハンマド・アリー氏(クルド人活動家)らも同じようにして逮捕されたという。
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フランスのアラン・ジュペ外務大臣は、Euro 1のインタビューに応え、「個人的に、改革プログラムを発表しておきながら実施しない(アサド)政権に我々はもはや何も期待できないと思う」と述べた。
AFP, November 6, 2011、Akhbar al-Sharq, November 6, 2011、al-Hayat, November 7, 2011, November 8, 2011、Kull-na Shuraka’, November 6, 2011、al-Nahar, November 6, 2011、Naharnet, November 6, 2011、Reuters, November 6, 2011、SANA, November 6, 2011、Zamān al-Wasl, November 6, 2011などをもとに作成。
写真はSANA, November 6, 2011。
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