2012年2月5日のシリア情勢

国内の暴力

国連安保理を通じた西側諸国および一部アラブ諸国のアサド政権へのバッシングが露中の拒否権発動で阻止されたことを受けるかたちで、シリア各地で軍・治安部隊が市民を巻き込んだ離反兵への掃討作戦が激化させた。

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イドリブ県ではAFP(2月6日付)、トルコのNTV(2月6日付)などは、対トルコ国境沿いのアイン・バイダ村とヒルバト・ジャウズ村に対して軍・治安部隊が大規模な掃討作戦を行い、迫撃砲などで攻撃を加え、村は「パニック」に陥っていると報じた。

NTV(2月6日付)によると、迫撃砲がトルコ領内ギュヴェッチ村にむ着弾したという。

シリア人権監視団によると、ザーウィヤ山のイフスィム村で軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦し、兵士6人が死亡、21人が負傷した。

またフィルユーン村でも同様の戦闘で兵士5人が、サラーキブ市近郊でも兵士2人が死亡した。

アブディーター村では、離反兵が軍の車輌を襲撃し、兵士1人を殺害した。

一方、マストゥーマ村では軍・治安部隊と離反兵の戦闘に市民が巻き込まれ、女の子1人が死亡した。

さらにマアッルシューリーン村では市民1人が殺害された。

他方、SANA(2月5日付)によると、武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、兵士1人を殺害した。

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ヒムス県では、シリア人権監視団によると、ヒムス市のカラム・ザイトゥーン地区、バーブ・アムル地区、クスール地区などで軍・治安部隊による大規模掃討作戦が続けられた。

ラスタン市では、軍・治安部隊が大規模な掃討作戦を継続、市民3人を殺害した。市内では離反兵の応戦も行われており、シリア人権監視団によると、離反兵が市内の軍・治安部隊の検問所を襲撃、そのほとんどを破壊し、多くの兵士を死傷させた。

一方、SANA(2月5日付)によると、武装テロ集団がヒムス県タルビーサ市のガス・パイプラインを破壊した。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、ダーライヤー市の発砲で子供1人が殺害された。

またシリア革命総合委員会によると、軍・治安部隊がマダーヤー町に対して掃討作戦を開始した。

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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、ハーッラ市で軍・治安部隊と離反兵が激しく交戦した。

一方、SANA(2月5日付)によると、武装テロ集団が治安維持部隊を襲撃し、兵士1人を殺害した。

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ダイル・ザウル県では、SANA(2月5日付)によると、ブーカマール市で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発し、子供2人が死亡した。

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地元調整諸委員会は3月の反体制運動開始からの死者数が7,339人に達したと発表した。

アサド政権の動き

SANA(2月5日付)によると、バッシャール・アサド大統領は宗教関係省が主催した預言者聖誕祭の祝典に出席した。祝典には、共和国ムフティーのアフマド・バドルッディーン・ハッスーン師、ムハンマド・アブドゥッサッタール宗教関係大臣などイスラーム教スンナ派の宗教関係者が多数参列した。

SANA, February 5, 2012

SANA, February 5, 2012

 

SANA, February 5, 2012

SANA, February 5, 2012

 

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SANA(2月5日付)によると、各地でロシアと中国の拒否権発動支持、アサド政権の改革支持を訴える大規模な集会が実施された。

集会が開かれたのはダマスカス県サブウ・バフラート広場、スワイダー県スワイダー市、タルトゥース県タルトゥース市など。

反体制勢力の動き

地元調整諸委員会は「尊厳の不服従」と銘打って反体制ゼネストを呼びかけた。

SANA, February 5, 2012

SANA, February 5, 2012

SANA, February 5, 2012

SANA, February 5, 2012

ゼネストは、①2日間のゼネストを通じた市民的不服従、②経済的不服従の開始と配給協会の設置、③ダマスカスとアレッポでの不服従の準備、という3段階からなるという。

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シリア国民評議会は声明を出し、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、「制裁なしの殺人許可」と厳しく非難し、そのうえで国連総会の場で、国際社会の支持を獲得し、シリア国民を支援するための国際的連絡グループの結成をめざすとの新方針を示した。

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シリア・ムスリム同胞団は、ロシアと中国がアサド政権の殺戮に関与していると非難し、両国製品のボイコットを呼びかけた。

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シリア国家建設潮流は声明を出し、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、いかなる正当性もない、と厳しく非難した。

レバノンの動き

『ラアユ』(2月5日付)はヒズブッラーに近い消息筋の話として、「ヒズブッラーはたとえそれがイスラエルとの戦争を意味しようと、アサド政権の崩壊を許さないだろう」と報じた。

諸外国の動き

ヒラリー・クリントン米国務長官は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、「昨日安保理で起きたことは、吐き気がする」と述べた。

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フランスのニコラ・サルコジ大統領は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、安保理メンバー13カ国の支持にもかかわらず否決されたと激しい遺憾の意を示し、「フランスは降参しない…。欧州・アラブのパートナーと対話を続け、アラブ連盟イニシアチブの実施を国際社会が支持するための「シリア国民の友達」グループを発足する」と述べた。

一方、アラン・ジュペ外務大臣も「国際社会を麻痺させる」と非難した。

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シリア国内の反体制運動を煽動するカタールのハマド・ブン・ジャースィム首相兼外務大臣は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、「殺人の権利を与える」と批判した。

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在外反体制活動家に活動拠点を提供し、反体制運動を煽っているトルコのアフメト・ダウトオール外務大臣は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して「冷戦の思考に依然としてとらわれている」と非難し、「ロシアと中国は現実を考慮せず、西側に対抗するために決議案を支持しなかった」と述べた。

またブレント・アリンジュ副首相は、レバノン政府がアサド政権を「一言」も批判していない、と不快感を示した。

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チュニジアのハマーディー・ジバーリー首相は、チュニスのシリア大使館を一時閉鎖すると発表、国際社会に対して、シリア大使を追放するよう呼びかけた。

これに対して、SANA(2月5日付)によると、チュニスのシリア大使館前でチュニジア人数百人がデモを行い、ジバーリー首相による大使館の一時閉鎖の決定に抗議した。

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国連の潘基文事務総長は、国連安保理での対シリア決議案に対するロシア・中国の拒否権発動に関して、「国連の役割を損なう」として大いなる懸念を表明した。

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ヨルダン・ムスリム同胞団のハマーム・サイード・アラブ最高監督者はロシア・中国製品のボイコットを呼びかけた。

AFP, Fabruary 5, 2012、Akhbār al-Sharq, February 5, 2012、al-Ḥayāt, Fabruary 6, 2012、Kull-nā Shurakā’, February 5, 2012、Naharnet.com, February 5, 2012、al-Ra’y, February 5, 2012、Reuters Fabruary 5, 2012SANA, February 5, 2012などをもとに作成。

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