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人道支援をめぐる動き
ジャコブ・ケレンベルガー赤十字国際委員会総裁はダルアー市を現地視察し、ムハンマド・ハーリド・ナンヌーシュ・ダルアー県知事と会談するとともに、トラック2台分の食糧、衣料品、毛布500枚などの支援物資を提供した。
ケレンベルガー総裁はこれに先立ち、ダマスカスでワリード・ムアッリム外務大臣、ムハンマド・シャッアール内務大臣、ワーイル・ハラキー保健大臣と会談し、SANA(4月4日付)によると、人道支援に関する協力・調整、アレッポ中央刑務所の視察などに関して意見を交わした。
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複数の反体制活動家とシリア赤新月社筋によると、ヒムス市カラービース地区の配給センターが火災で全焼した。
火災に関して、シリア赤新月社筋は「身元不明の破壊分子が放火した」と述べる一方、反体制活動家は軍・治安部隊の砲撃が原因だと断じた。
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イスラーム諸国会議機構は声明を出し、「被災した住民を支援するためシリア政府や人道的バートナーとともに活動する準備がある」と発表し、アサド政権に対する批判的姿勢を修正した。
国内の暴力
複数の活動家によると、軍・治安部隊と離反兵の交戦で数十人が死傷した、という。
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イドリブ県では、シリア人権監視団によると、軍・治安部隊による村々への砲撃で、離反兵2人が負傷した。
同監視団によると、カフル・ウワイド市に、タフタナーズ市軍・治安部隊が突入し、逮捕・摘発を行い、家々を焼き討ち、タフタナーズ市では民間人20人、兵士7人、離反兵4人が死亡した、という。
このほか、ハーン・シャイフーンでも市民1人が治安部隊に射殺されたという。
さらに、マアッラト・ヌウマーン市の国立病院近くで、3日未明から4日にかけて、元政治犯のアフマド・ムハンマド・ウスマーン氏とその兄弟で弁護士のアドナーン・ムハンマド・ウスマーン氏が乗った車が治安部隊の発砲を受け、2人とも死亡した。
フェイスブックの「イドリブ・ニュース・ネットワーク」ページは、サラーキブ市に戦車が突入する映像を配信した。
一方、SANA(4月5日付)によると、タフタナーズ市で、武装テロ集団が治安部隊兵士3人を殺害した。
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ダルアー県では、シリア人権監視団によると、対ヨルダン国境のムザイリーブ町とタファス市に軍・治安部隊が突入した。
またヒルバト・ガザーラ町、インヒル市で軍・治安部隊による逮捕・摘発が行われた。
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ダマスカス郊外県では、SANA(4月5日付)によると、バイト・サフム市で武装テロ集団が仕掛けた爆弾が爆発して、ビルが倒壊、7人が死亡した。
インターネット上では、「被災都市救済」と銘打った夜間デモが実施されている映像が配信された。
地元調整諸委員会によると、このデモはダマスカス郊外県のヤブルード市、イドリブ県のカフルウライク市、マアッラトミスリーン市、ハマー県ハマー市、アレッポ県アレッポ市などで行われたという。
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ヒムス県では、地元調整諸委員会によると、ヒムス市バーブ・アムル地区近くで軍・治安部隊と離反兵が交戦した。
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ダイル・ザウル県では、シリア人権監視団によると、ザバーリー村で軍・治安部隊と離反兵が交戦し、離反兵1人が死亡した。
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ハマー県では、ハマー革命指導評議会によると、ラターミナ町に3日未明、軍・治安部隊が突入した。
国内の反体制勢力の動き
『ザマーン・ワスル』(4月4日付)は、ハサカ県のカーミシュリー市、カフターニーヤ市、ダイリーク市などでスィルヤーニー連合党なる組織のメンバーが複数逮捕されたと報じた。
同報道によると逮捕者のなかには女性も含まれているという。
国外の反体制勢力の動き
シリア人権監視団は、軍・治安部隊がイドリブ県の対シリア国境地域やダルアー県で掃討作戦を継続しているとしたうえで、「都市や村に戦車が進入し、作戦を実行しては基地に帰還している。これは撤退ではない」と非難した。
諸外国の動き
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、欧米諸国と湾岸アラブ諸国の姿勢がアナン特使の努力を弱めると非難、「反体制勢力が完全武装したとしても、シリア軍を負かすことなどない」と断じた。
インテルファクス通信(4月4日付)が伝えたところにようと、ラブロフ外務大臣は「シリアの友」は…反体制勢力に対話を拒否させようとしている…。これらの国々の決定は、反体制勢力に資金・武器を供与し、新たな制裁を(アサド政権に)科すというものだ…。依然として外国軍の介入や空爆を通じた解決策を模索している」と述べた。
ロシア外務省はシリアのワリード・ムアッリム外務大臣が来週モスクワを訪問すると発表した。
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コフィ・アナン・シリア危機担当国連・アラブ連盟合同特使はジュネーブで、国連監視団先遣隊のロバート・モード氏(ノルウェー)と会談し、監視団本隊(250人)の展開方法などについて意見を交わした。
先遣隊は5日にダマスカスに入る予定。
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アナン特使付報道官のアフマド・ファウズィー氏は、『ハヤート』(4月5日付)に対して、「シリア政府が特使にダマスカス郊外県の一部の都市から軍を撤退させ、それに先だってザバダーニー市から撤退させた、と通告した」と述べた。
また「我々は政府軍が4月10日までに撤退を終えることを期待している…。4月10日に撤退が終われば、48時間以内にすべての当事者があらゆる暴力行為を停止するだろう…。そしてその後、監視団が展開し、停戦監視を始める」と述べた。
また5日にダマスカス入りする先遣隊に関して、監視団の展開に関する詳細をシリア政府と話し合う予定だと付言した。
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イスラエルのシモン・ペレス大統領はynetnews(4月4日付)で、「アサド(体制)の崩壊はヒズブッラーに必殺の一撃となるだろう」と述べた。
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アムネスティ・インターナショナルは、シリア政府がアナン特使の6項目停戦案を受諾した3月27日以降、232人が死亡したと発表した。
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マルティン・シュルツ欧州議会議長は、世界地雷啓発デー(4月4日付)に合わせて、シリア軍・治安部隊が国境地帯に地雷を敷設し、避難民の避難や反体制勢力の往来を阻止しようとしていることを非難した。
AFP, April 4, 2012、Akhbar al-Sharq, April 5, 2012、AKI, April 4, 2012al-Hayat, April 5, 2012、Kull-na Shuraka’, April 4, 2012、Naharnet.com, April 4,
2012、Reuters, April 4, 2012、SANA, April 4, 2012、Ynetnews.com, April 4,
2012、Zaman al-Wasl, April 4, 2012などをもとに筆者作成。
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