アレッポ県でヌスラ戦線およびイスラーム国が軍と交戦しキンディー病院を完全制圧するなか、ブラーヒミー共同特別代表が安保理常任理事国およびシリア周辺諸国の代表らとジュネーブ2会議の準備に関して協議(2013年12月20日)

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反体制勢力の動き

シリア革命反体制勢力国民連立のアフマド・ウワイヤーン・ジャルバー議長は訪問先のイラク・クルディスタン地域エルビル市郊外にあるカワルゴスク避難民キャンプを視察し、AFP(12月20日付)に対して、「クルド人は、ジュネーブ2会議に二つの代表団を参加させるだろう。一つは反体制勢力の代表団、もう一つは体制の代表団だ」と述べた。

Kull-na Shuraka', December 20, 2013

Kull-na Shuraka’, December 20, 2013

複数の消息筋によると、ジャルバー議長は、マスウード・バールザーニー大統領と会談し、シリア北西部におけるサラフィー主義武装集団の台頭への懸念を表明し、自由シリア軍の再編と、移行期政府のもとに国防省を設置する必要があると強調したという。

またイラク・クルディスタン地域のシリア人避難民に関して、支援調整局設置を求め、バールザーニー大統領の同意を得たという。

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シリア革命反体制勢力国民連立は生命を出し、英国人医師アッバース・ハーン氏の獄中死を「政権の新たな犯罪」と非難した。

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自由シリア軍参謀委員会のサリーム・イドリース参謀長はビデオ声明を出し、「参謀長は、戦闘員への兵站・救援の継続的の確保と、内乱の抑止、隊列統一、シリア人民の革命を信じる現地の全戦闘員の統合のために活動していると軍事革命勢力のみなに言明する…。不正と専制に退行するため単一の隊列をなすよう求める」と述べた。

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人権侵害文書センターと地元開発局が共同声明を出し、ダマスカス郊外県ドゥーマー市で拉致されたラッザーン・ザイトゥーナ弁護士の消息確認に協力するよう反体制武装集団に呼びかけた。

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、キンディー大学病院周辺で、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員2人が爆弾を積んだ車で自爆攻撃を行い、ヌスラ戦線とイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)が軍と交戦、軍が砲撃を加えた。

これに関して、シリア革命総合委員会広報局は、「革命家たち」がキンディー大学病院を完全制圧したと発表した。

『ハヤート』(12月22日付)によると、これにより、兵士少なくとも42人が殺害され、20人が捕捉された、という。

またシリア人権監視団によると、マーイル町、バヤーヌーン町、アナダーン市、ターディフ市、ハイヤーン町、クンサリーン市、マンナグ村などに、軍が樽爆弾を投下し、少なくとも5人が死亡、複数が負傷した。

さらにアレッポ市でも、スッカリー地区などに軍が樽爆弾を投下し、少なくとも4人が死亡した。

一方、クッルナー・シュラカー(12月20日付)によると、アターリブ殉教者旅団司令官兼アターリブ自由人大隊司令官のマスアブ・マンスール氏がマアーッラト・アターリブ村に向かう途中、何者かに拉致された。

マンスール氏は、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)と戦う意思を示していたという。

他方、SANA(12月20日付)によると、シャイフ・ナッジャール市(工業団地地区)、カースティールー地区・アリーマ町街道、シャイフ・イーサー村南部、マーリア市、ダーラト・イッザ市、タッル・リフアト市、ワディーヒー村、マーイル町、フライターン市、アナダーン市、バナーン町、ハーン・アサル村、アレッポ中央刑務所周辺、キンディー大学病院周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、バニー・ザイド地区、カーディー・アスカル地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、ザマーン・ワスル(12月20日付)によると、シリア軍がダーナー市にあるイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)(ダーナー州)の検問所、チェックポイントなどを初めて爆撃・砲撃した。

一方、SANA(12月20日付)によると、ダーナー市、タイイバート村、カフルルーマー村、ビンニシュ市、アブー・ズフール町、ハミーマート・ダーイル村北部、マフルナジュド村、マアッル・シャムサ村、ザアフラーニー村、アルバイーン山周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、シャームの民のヌスラ戦線の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、シリア革命総合委員会によると、「革命家たち」がダイル・ザウル市旧空港地域解放の戦いを開始し、攻撃を激化させた。

また「革命家たち」はダイル・ザウル市内各所、アイヤーシュ村、ムハイミーダ村、第137旅団基地周辺などを攻撃、これに対して軍はムーハサン市周辺を爆撃したという。

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ダマスカス郊外県では、シリア人権監視団によると、アドラー市ウンマーリーヤ地区、バービッラー市で、軍、国防隊、ヒズブッラー戦闘員がシャームの民のヌスラ戦線、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)などと交戦し、ヒズブッラー戦闘員1人と反体制武装集団戦闘員3人が死亡した。

一方、SANA(12月20日付)によると、アクラバー村に侵入しようとしたイラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)戦闘員を軍が撃退した。

またドゥーマー市、ヒジャーズィーヤ農場、ヤブルード市一帯、マアルーラー市、ザバダーニー市一帯、ダーライヤー市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、サウジアラビア人、レバノン人戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(12月20日付)によると、カーブーン区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またカッバース地区、バーブ・トゥーマー近くのジャウラ地区にあるガザーラ・ハルーリーヤ学校に反体制武装集団が撃った迫撃砲弾が着弾し、市民2人が負傷した。

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ヒムス県では、SANA(12月20日付)によると、ヒムス市バーブ・フード地区、ハミーディーヤ地区、カラービース地区、ワアル地区、ダール・カビーラ村、ガントゥー市、ハーリディーヤ村、ハブラ村、タッルカラフ市で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(12月20日付)によると、ダルアー市内各所で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

レバノンの動き

ヒズブッラーのハサン・ナスルッラー書記長はテレビ演説を行い、レバノン情勢、ハッサーン・フールー・ラキース氏暗殺、対イスラエル関係、シリア情勢などについて述べた。

そのなかで、ナスルッラー書記長は、シリアの紛争へのヒズブッラーの介入に関して「ヒズブッラーにとっての生存をかけた戦いではなく、レバノン、シリア、パレスチナ問題、地域におけるすべてのレジスタンスの生存をかけた戦いである」と述べた。

諸外国の動き

アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表はジュネーブで、国連安保理常任理事国およびシリア周辺諸国の代表と会合を開き、ジュネーブ2会議の準備に関して協議した。

会談に先立って、ブラーヒーミー共同特別代表は、ロシアのミハイル・ボクダノフ外務副大臣とゲンナージー・ガティロフ外務次官、ウェンディー・シャーマン米政治担当国務次官と会談した。

会談後の記者会見で、ブラーヒーミー共同特別代表は「イランに関して、合意はなされなかった。米国がイランの参加を歓迎していることは秘密ではないが、イランの参加が正しいことだとは納得していない」と述べる一方、サウジアラビアほか30カ国が参加することが明らかにした。

またシリア国内での戦闘に関して「憤慨し、苛立っている」と述べ、シリア軍による樽爆弾の使用停止を呼びかけた。

これに関して、米国高官は、イランの参加をめぐって協議が継続されると述べる一方、「イランはシリアから軍を撤退させ、ヒズブッラーなどへの資金援助を停止しなければならない」と述べた。

またシリアの反体制勢力に代表団を結成するよう改めて求めた。

一方、ガティロフ外務次官は「イランの問題を解決するには閣僚級の協議がさらに必要になるだろう」と述べる一方、反体制勢力が分裂し、代表団を結成できていないと批判、「この問題が解決されなければ、大会開催は困難だ」と主張した。

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フランスのフランソワ・オランド大統領は、ブリュッセルでのEU首脳会談後、シリア情勢に関して、「ジュネーブ2会議(の開催)自体が目標ではない。ジュネーブ2会議が、バッシャール・アサドの権力を強化したり、アサドからアサドへの政治的移行をもたらすだけなら、大会をシリア問題の政治的解決にする機会はわずかなものとなろう」と述べた。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣はノーヴォスチ(12月20日付)に、「西側の指導者の一部は、アサド氏が大統領のままでいる方が、テロリストによってこの国が乗っ取られる危険をより少なくすると考えるようになっている」と述べた。

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ロイター通信(12月20日付)などは、複数の外交筋の話として、米国がシリア軍によるアレッポ市への爆撃に「不満」の意を表明する安保理議長声明の採択をめざそうとしたが、ロシアが拒否権発動の意思を示したため、断念した、と報じた。

AFP, December 20, 2013、al-Hayat, December 21, 2013, December 22, 2013、Kull-na Shuraka’, December 20, 2013、Naharnet, December 20, 2013、Reuters, December 20, 2013、Rihab News, December 20, 2013、SANA, December 20, 2013、UPI, December 20, 2013、Zaman al-Wasl, December 20, 2013などをもとに作成。

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