シャーム・イスラーム委員会を含む反体制イスラーム諸団体が「フィトナと悪をシリア社会に持ち込んだ」としてイスラーム国を非難、元駐シリア米大使が「アサド退陣がないシリアの将来が濃厚」との見解を示す(2013年12月21日)

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反体制勢力の動き

アレッポ・ウラマー戦線は声明を出し、すべての住民に対して、子息1人を「差し出し、彼にジハードと戦闘を奨励」するよう呼びかけた。

Kull-na Shuraka', December 21, 2013

Kull-na Shuraka’, December 21, 2013

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シリア革命反体制勢力国民連立のハイサム・マーリフ法務委員会委員長は「みながテロと戦いたいと考えており、それは連立にとって最優先事項の一つだ。しかし、国際社会は、誰がテロリストかを厳密に確定できない。シャームの民のヌスラ戦線をテロリストとみなす前に、バッシャール・アサドを地域の真のテロ指導者とみなさねばならなかった。真のテロリストはアサドとその取り巻き、そしてヒズブッラーの民兵、アブー・ファドル・アッバース旅団だ」と述べた。

『ハヤート』(12月22日付)が伝えた。

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ダルアー軍事評議会は声明を出し、ジュネーブ2会議に関して、「革命家たちの同意を得ない大会でのあらゆる結果を断固拒否する」と表明、アサド政権の代表者の出席に異議を唱えた。

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シャーム・イスラーム委員会など反体制イスラーム組織9団体は共同声明を出し、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の活動に関して、「フィトナと悪をシリア社会に持ち込んだ…。攻撃を続けることでもたらされる…侵害や犯罪の責任がある」と非難した。

共同声明を出したのは、シャーム・イスラーム委員会、シリア・ウラマー連盟、シャーム・ウラマー連盟、シリア・イスラーム会合、アレッポ県シャリーア委員会、シャーム・ハティーブ連盟、シリア・クルド・ウラマー協会、シリア自由ウラマー委員会、シリア・イスラーム教徒ウラマー総合委員会。

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シリア国民評議会事務局メンバーのアブドゥッラフマーン・ハーッジ氏は『シャルク・アウサト』(12月21日付)に、「自由シリア軍参謀委員会が結成時によりどころにした内規によると、サリーム・イドリース参謀長が現在の地位にとどまることは認められない」と述べ、参謀委員会の改編と「現地のすべての武装集団の創意によって参謀委員会の新メンバーの選出」を呼びかけた。

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クッルナー・シュラカー(12月21日付)は、ハサカ県の活動家の話として、民主統一党がカーミシュリー市、アームーダー市、ダルバースィーヤ市で、民間の自動車、オートバイを対象に独自のナンバー・プレートを発行し、車輌登録料の徴収を開始したと報じた。

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ハマー・ファールーク大隊は声明を出し、ビラール・アッタール氏(アブー・アブドゥー・シャーム)とアブドゥッサッタール・アッタール氏(アブー・ムウタスィム)を解任したと発表した。

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シリア民主主義者連合は声明を出し、イラク・シャーム・イスラーム国(ダーイシュ)の存在が、アサド政権に対する西側諸国、国際社会の姿勢を変化させると警鐘を鳴らし、ダーイシュをシリア国内から放逐するための愛国的な抵抗戦線の結成を呼びかけた。

シリア政府の動き

シャームの民のヌスラ戦線のアミールを名乗るイラク人、イブラーヒーム・ムハンマド・アッバース氏ら6名がシリア・アラブ・テレビ(12月21日付)に出演し、ダマスカス県での2013年3月のムハンマド・サイード・ラマダーン・ブーティー師の暗殺に及んだと証言した。

SANA, December 21, 2013

SANA, December 21, 2013

国内の暴力

アレッポ県では、シリア人権監視団によると、反体制武装集団が制圧したキンディー大学病院に対して、軍が砲撃を加えた。

またダーラト・イッザ市に軍が樽爆弾を投下し、男性2人が死亡した。

さらにアレッポ市では、マイサル地区、マルジャ地区に軍が爆撃を行い、子供1人と女性3人を含む7人が死亡した。

このほか、アレッポ市サラーフッディーン地区のズバイル・モスク近く、ハムダーニーヤ地区各所に迫撃砲弾が着弾し、子供1人と女性1人を含む4人が死亡した。

一方、ロイター通信(12月21日付)は、アレッポ市で取材活動を行い、同通信社に写真を提供してきたカメラマンのムルヒム・バラカート氏が死亡したと報じた。

他方、SANA(12月21日付)によると、マアーッラト・アルティーク村、マンスーラ村、ハーディル村、アイス村、マンナグ村、ダーラト・イッザ市、フライターン市、アナダーン市、ウワイジャ地区、バヤーヌーン町、アレッポ中央刑務所周辺、シャイフ・ナッジャール市(工業団地地区)、ハイヤーン町で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

またアレッポ市では、ラーシディーン地区、インザーラート地区、ブスターン・カスル地区、スッカリー地区、ライラムーン地区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダイル・ザウル県では、クッルナー・シュラカー(12月21日付)によると、シャームの民のヌスラ戦線が、ダイル・ザウル市ラシュディーヤ地区にあるSyriatel橋とBimo橋を制圧したと発表した。

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ハサカ県では、クッルナー・シュラカー(12月22日付)によると、カーミシュリー市で軍事情報局がイラク・クルディスタン地域から帰国したクルド人青年多数を逮捕した。

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ダマスカス郊外県では、クッルナー・シュラカー(12月22日付)が反体制活動家筋の話として、シャームの民のヌスラ戦線がアドラー市の製糖工場、TAMICO検問所などにあるシリア軍の拠点複数カ所に対して7トンの爆弾を積んだ自動車と2トンの爆弾を積んだ自動車の2台で奇襲攻撃を行い、兵士70人を殺害したと報じた。

この攻撃は、アブー・シャーミルを名乗る戦闘員らによる自爆攻撃だという。

一方、SANA(12月21日付)によると、アドラー市、ドゥーマー市、ハラスター市、ザバダーニー市、ダーライヤー市、ハーン・シャイフ・キャンプおよび同市周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、首都の盾大隊の戦闘員らを殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダマスカス県では、SANA(12月21日付)によると、ジャウバル区で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ヒムス県では、SANA(12月21日付)によると、ヒムス市ワルシャ地区、ハミーディーヤ地区、カラービース地区、クスール地区、バーブ・フード地区、ダール・カビーラ村、ガースィビーヤ村、ハーリディーヤ村、カフルラーハー市、ガジャル村、ラスタン市、サフライジュ村、ハブラ村、カルアト・ヒスン市郊外、ダイル・シャーマーン村、カウム村、ジュッブ・ジャッラーフ村周辺で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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イドリブ県では、SANA(12月21日付)によると、アリーハー市、カフルナジド村、バドリーヤ村、カフルラーター村、アブー・ズフール町、タッル・サラムー村、マジャース村、バーブッラー村、ナイラブ村で、軍が反体制武装集団の追撃を続け、複数の戦闘員を殺傷、拠点・装備を破壊した。

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ダルアー県では、SANA(12月21日付)によると、ダルアー市ビラール・ハバシー・モスク周辺などで、軍が反体制武装集団の追撃を続け、戦闘員多数を殺害した。

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民主的変革諸勢力国民調整委員会は声明を出し、ムンズィル・ハッダーム氏がタルトゥース県の軍検問所で当局に逮捕されたと発表、釈放を求めた。

これに関して、クッルナー・シュラカー(12月21日付)は、ハッダーム氏が逮捕後4時間で釈放された、と報じた。

諸外国の動き

ライアン・C・クロッカー元駐シリア米大使は『ニューヨーク・タイムズ』(12月22日付)に寄稿(http://www.nytimes.com/roomfordebate/2013/12/21/for-peace-in-syria-will-assad-have-to-stay/assad-is-the-least-worst-option-in-syria)し、「アサド退陣がないシリアの将来について考えるときが来た。なぜならこうした将来になることが濃厚だからだ」と述べた。

この記事のなかで、クロッカー元大使は長期的には、アサド政権が存続し、治安・軍事・諜報機関を維持強化し続けるか、アル=カーイダとつながりがある過激派が台頭し、シリアを掌握するかのどちらかだとしたうえで、「アサドがいる将来と折り合いをつける必要がある。彼がいることは遺憾だが、もっと悪いこともある」と結論づけた。

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ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は「シリアで和平に到達することが容易でないことを我々は理解している。シリアの当事者が、その代表者を交渉のテーブルに着かせることがなければ、この国でテロリストや過激派が背右党を続け、誰も対話を望まなくなってしまう。逆に、シリアで過激派勢力に対抗するため、シリア政府と反体制勢力の努力を結集することに貢献する必要がある」と述べた。

インテルファクス通信(12月21日付)が伝えた。

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イラン外務省によると、モハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣は、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表と電話会談し、ジュネーブ2会議について協議し、シリアの当事者間の対話を通じた「平和的解決」の必要を強調した。

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『ハヤート』(12月22日付)は、シリアの反体制消息筋の話として、ジュネーブ2会議へのイランの参加に関して、イランの高官・専門家10人がシリア政府と反体制勢力の交渉を促すため、議長外から後援するとの「妥協案」が、アフダル・ブラーヒーミー共同特別代表、米露高官の間で20日に議論された、と報じた。

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リハーブ・ニュース(12月21日付)は、イラク・クルディスタン地域からハサカ県カーミシュリー市に空輸された国連の人道支援物資が、貨物トレーラー13台に積み込まれ、ダルバースィーヤ市に送られたと報じた。

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赤十字国際委員会は、シリアで獄中死した英国人医師アッバース・ハーン氏の遺体が、駐英レバノン大使館に引き渡されたと発表した。

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ヒューマン・ライツ・ウォッチは、アレッポ市でシリア軍が無差別に爆撃・砲撃を行っていると批判した(https://www.hrw.org/news/2013/12/21/syria-dozens-government-attacks-aleppo)。

AFP, December 21, 2013、al-Hayat, December 22, 2013、Kull-na Shuraka’, December 21, 2013, December 22, 2013, December 24, 2013、Naharnet, December 21, 2013、The New York Times, December 22, 2013、Reuters, December 21, 2013、Rihab News, December 21, 2013、SANA, December 21, 2013、al-Sharq al-Awsat, December 21, 2013、UPI, December 21, 2013などをもとに作成。

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